プロローグ 02
※本作品には、グロテスク・暴力的な表現(行為、言動)表現が含まれています。(1つのシーンとしては存在しませんが、性的な表現も含まれています)これらが苦手な方は、ご遠慮ください。
※作中での描写のように殺傷行為を行うことは犯罪となります。どのような事態となっても当方は一切の責任を負いかねますのでご了承ください。
※この物語はフィクションです。登場する人物・団体等は全て架空のものです。
(一部登場する実在するまたは実在した人物・地域等もございますが、あくまで設定上のものです)
※本作品には悪魔などが登場します。このテーマは宗教・思想によって解釈が異なりますので、これによって不快感を感じられる方はご遠慮ください。
長々と書きましたが上記をふまえた上で楽しんでいただければ幸いです。
ホテルを出た私は、先ほど電話の彼女に聞いた場所へ向かう。
コツコツとブーツの音がロンドンの夜の街に響く、左手に持ったこげ茶色のカバンは街灯の光を浴び、深みのある光沢を放つ。
街は沈黙を守る……
いくら深夜といっても週末なのだから、遊び歩く若者や酔っ払いなどがいてもおかしくないのだが……
まるで、街そのものが死んでしまったかのような静けさ。
この静けさには理由がある。ここ数週間、ロンドンの街を脅かしている女性ばかりを狙った猟奇殺人事件のせいだ。
今判っているだけで、死者16人、行方不明者4人。被害者は、腹を裂かれ臓物をごっそりと持っていかれた状態で発見されている。
なんとも残酷な殺し方、影すら掴めない犯人。そのため、スコットランド・ヤードや一部のマスコミでは、切り裂きジャックの再来だとか言われているそうだ。
今から5日前、私の元へ届いた一通の手紙にも事件のことが詳細に綴られていた。そして、最後の一行には『今回の猟奇殺人事件の処理を「神代 彩花」に命ずる』と記されていた。
「さっさと仕事を片付けて日本に帰ろっと」
――仕事。
そう私の仕事は、俗に言う悪魔祓い師。世間一般的にはエクソシストと呼ばれるもの。基本的には建物、物、動物、果ては人間に取り付いた悪霊を祓うのがエクソシストの仕事だ。
聖書、聖水などを用いて悪霊を祓うもの、ここまでが最も知名度の高い一般的なエクソシストである。しかし世間には公表されないエクソシストが存在する。
一般的なエクソシストを下級、武器を用いて凶悪な悪霊を消滅させる中級、中級以下の仕事に加え、デビルハンターといったこともこなせる上級の3つのランク分けされる。また、上級エクソシストは、イグゼキューターとも呼ばれ、現在、全世界で現役のイグゼキューターは12人しかいないそうだ。
そして、これらを統括するのが、逆十字教会とよばれる組織だ。
逆十字教会とは、迷える者を導く教会とは反対に、迷える者を葬る教会、というところから逆十字教会と呼ばれる。簡単に言ってしまうと教会の“裏組織”みたいなものだ。
ここでは仕事を受け、悪霊を祓う。または消滅させ、報酬を受け取るといった至極簡単なシステムであるが、いわば完全歩合制な仕事である。
この逆十字教会は、カトリックの総本山と同じローマのヴァチカン市国に本部を構え、そこから世界各地へと支部とそれに関連した施設等を持つ。
さっきのビジネスホテルにしたってそうだ。逆十字教会の息がかかっている。
ちなみに私はエクソシストとしては現在中級で、かつて最強のイグゼキューターと謳われた父を尊敬し、また、目標としている。
エクソシストである私が、この猟奇殺人事件に首をつっこむということは、今回の事件は人ならざる者が関与しているということだ。
本来、その国で起こった事件ならば当事国のエクソシストが派遣されるはずなのだか、今回に限って、全員出払っていて人手が足りないらしく、わざわざ私にお鉢が回ってきたのだ。
初めは、断ろうと思ったのだが、成功報酬が、ことのほかよかった。中級エクソシストに回ってくる仕事でも1、2を争う額だ。そして、イギリス支部の司教であるエドガー・チューダー・アーヴィングが 私を名指しで指名してきたからだ。
彼の配属は支部とは言え、逆十字教会内部では、いわゆる“大司教”と呼ばれるクラスに席を置く人物である。
そんな人に私は、自分の名前を売っておいて損はないと考えたのだ。
ご感想・ご指摘いただけたら幸いです。
今後とも宜しく御願い申し上げます。
秋山時雨