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その1

タイトルそのまま

「どうでしょうか」

「さすがは巫女様のお薬です」


ついさっき、バンパイアから受けた毒の傷がみるみる癒えていった。さすがは聖なる巫女の薬だ。

私は同胞団という戦士の集まりに所属しているバンという戦士だ。私の使命は、言わずもがな、この聖なる巫女にかけられた呪いを解くための冒険をしているのである。いまここ、シロディールの子らは大変な状況にある。夜を支配する魔王によって世界から光が失われから久しい。この状況を解決するべく、魔王にとらわれていた光の巫女を魔王から奪取し、エンパイアシティに連れ戻すことこそが私の崇高な任務なのだ。


「勇者様が生きておられれば…」

「…いや、その」

「巫女様がこの国の最後の希望」

「うん、そう…ですね」


今、やっとのことで魔王の領域から光の巫女を救出できた。だが、このために編成された戦士たちのほとんどは魔王にやられてしまったのだ…。救国の戦士とまで言われた勇者たちは魔王との戦いでやられてしまった…。残るは同胞団の一戦士である私のみ。まだ我々は闇の領域から脱出はできていない…。ここで私がやられてしまえば、すべてが水泡に帰してしまう。尊い仲間の死が無意味なものになってしまう。わが身を捨ててでも光の巫女を守らねばいけない。


「いや、うん、そうかな」


そうかも、とうなだれて光の巫女様は仲間の死を悼んでいる。これではいけない、私は同胞団に伝わる仲間達とうたった、戦いの歌を歌った。


シロディールの子らよ、知れよ来たるよ、龍の戦士よ

邪なるものは滅び去るとき、知れよ、シロディールの子らよ

勝利の雄たけびを聞けば敵は逃げ去るだろう、竜の戦士よ我々は汝の祝福を祈ろう


私は懸命に歌った。巫女様も私に合わせて歌った。仲間の死を決して無駄にはしない。伝説の戦士がいつか現れるその時までシロディールの子らは決して闇に屈さないのだ。







私が知る限り、目の前でやたらいい声で歌っている超筋骨隆々のイケメンが寝ないまま二週間くらいたっただろうか。うん、一人だもんね、寝ずの番とかひとりでできないもんね、その割に超元気なんだけど。本当は私が寝ずの番をするべきなんだけどね、耐えられんのよ、だって私普通の人だもん。

さっきからこの人は私のことを、『聖なる巫女』とか『聖女』とか呼んでいるが、もちろんそんなことはない。私はこの遠征隊についてきた一般通過薬師の女である。ついでに言うと、このやたらいい声で歌っているクソ強い男は、我が国、シロディールの童話に出てくる『龍の戦士』とか『ドラゴンの魂を持った定命の戦士』とか言われている人である。1000年に一度闇が世界を支配した時にシロディールを救うために表れるらしいんだって。しらんけど。さっきこの人がけがをしたのは、森の中に救うという、恐ろしいバンパイアロードの集団をひとりでを血祭りにあげた時についた傷である。もう少し加えて説明すると、使った薬は聖なる薬とかではなく、アロエ軟膏だ。塗った瞬間にみるみる傷がふさがっていくのを見たときはさすがに引いた。この超強い人が、ある理由によって自分のことを同胞団の一介の戦士だと勘違いしているのだが、ちょっとこうなった理由について説明したい。


結論から言うと、今は世界を亡ぼす魔王アルドゥインをぶち殺した帰りだ。全部終わった後なのだ。他の仲間の皆さんは、まぁ、大人の事情及び、政治的な観点から、結構後ろのほうで待機してたわけ、私はトールマンの国、ホワイトランで、実は勇者様と同じ国の出身だからまぁ、義理もあるし、人類を救うためなら私一人の命なら安いし、やむなくついていったのよ。実際生きては帰らないつもりで悲壮な気持ちで言ったんだけど、勇者様がありえないほど強かったので結構言うほど危険でもなかったのよ。ドラゴンとかを殴り殺すところを見たら楽観的にもなるわ。で、私も勇者様の覚えもいいほうで、手癖とかも悪いほうだったから、ルール無用の旅先で結構役にも立てたし、料理係兼、荷物持ちみたいな感じよ。で、いよいよ、闇の魔王と戦って、コテンパンにしたんだけどさ、最後の最後で敵の魔法使い?が終わり際に、『貴様の代でシロディールを絶やしてやる!』とか言いながら最後の力を振り絞って魔法を撃ったのが勇者様にあたったのね? で、勇者様がひっくり返っちゃったわけよ。そりゃもう慌てたわよ。で何とか子のクソ重たい勇者様を担いで外まで出てきた。


「勇者様? 大丈夫ですか?」

「…」

「いや~驚きました、最後の最後でひっくり返っちゃって」

「…巫女様」

「え? あぁ、巫女様もシティで勇者様をお待ちですよ」

「私は…」

「同胞団のみんなも心配してますから、さっさと帰りましょう!」

「巫女様! こうしてられない! 早く脱出しましょう!」

「え? えぇ…、まぁそうっすね」


妙だなとは思ったけど、まさかそんなことにはなってるとは思わないじゃないの。どうも病みの魔法使いが撃った魔法というのは死環白の魔法というやつで、気を失わせて、次に見た異性にすべての情愛をささげてしまう、という、いわば惚れ薬的魔法だったようだ。うーん、なーるほど、『貴様の代でシロディールを絶やしてやる!』ってそういう。まぁ、私そんなに育ちのいい女じゃないんですよ。手癖が悪いまぁ、結構下の身分の出なんですよ。知恵は回ったからそこを買われて勇者様には覚えが良かったんですけども。そういう話になると困るじゃないですか。こう見えて結構信心深いというか、世界を救う伝説の竜の戦士の子孫を残す役割を持ってね、と言われたら、それは他に適切な女性がいるだろという話なんですよね。それは勇者様はこれから国の再興のために由緒ある御家と子供を作ったりとかするわけで、まぁ伝説でもそういう話があるんですけど。1000年後の物語で伝説の勇者の連れ添いは、スラム街のスリの女でしたとはかけないんですよ。 あれでしょうね、勇者様の脳がバグったんでしょうね。スラムのスリの女が強制的に好きになる呪いをかけられたけど、勇者の身分としての自分とかけ離れすぎてるし、魔王を倒した記憶も残ってるから整合性を持たせるためにこういうことになったのかもしれない。


彼の名誉にかけて誓われん、永遠に邪悪を寄せつけぬと

勝利の雄叫びを聴けば、最凶の敵は敗走するだろう


勇者様があまりに必死に歌うので、気の毒になって私も併せて歌った。歌い終わってから私は笑って拍手を送った。ニカッとあまりに素直に笑うので、私はどういうえばわからなくなった。旅の途中でわかったことだが、勇者様はあまりに純朴だ。私のように拗ねてない、全部自分だけで世界が完結している。シティの暗い政治の闘争に彼を送ったときどうなるだろうかと、分不相応ながら思ったことはある。勇者様と旅をして分かったが、世間の権力、政治家というものはあまりに空虚だ。だからこそ、こういう勇者の慈悲をシロディールは望んでいる。そんな人の情愛がコソ泥女一人に注がれてはいけないのだ。



「どうすっかな~」

「どうされました聖女様」

「いえ、あの、そろそろ行きましょうか」


口の堅そうなエルフの魔女あたりに聞けば何かわかるかもしれない。まずはエルフの国で呪いを解く方法について聞かなければ。


シティに戻る前に何とかしてこの奇妙な冒険を終わらせないといけない。


伝説の戦士にかけられた呪いを解く奇妙な旅の始まりだ!



かっとして書いた

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