窮地
◇◇◇
「こっちだ!こっちに避難しっ、ぎゃああっ!」
「お父さん!?お父さああん!!!」
◇◇◇
「何してる!?早く避難しないと危ないぞ!」
「私の娘がまだ家の中に・・・!リズ!リズ!」
「火が見えないのか!?焼け死ぬぞ!」
「いやあ!・・・いやあ!!!」
◇◇◇
ドン!ドン!
「このままじゃ家が壊される!シールドレインはいつ来るんだ!?」
◇◇◇
この町の中央には、中心に大きな丸形の噴水が設置された広場がある。
僕達は、その広場を南側より見渡せる病院から出てきた。
「なに、これ・・・」
「思っていたより状況は最悪だな。ハル、領主館は町の北側にある。この状況でここを突っ切るのは難しいな・・・よし、こっちだ!」
「さっきまで町は平和そのものだったのに、一体どうしてこんなことに・・・もしかしてあれは」
「魔物だよ」
「あの禍々(まがまが)しい狼が魔物なのか・・・ほんとにあんな生き物がいたんだね」
広場を西側から出た僕たちは、デットエンドという居酒屋を曲がり北へ続く裏路地へと入った。
「でも、この状況はなにかおかしい」
「おかしい?」
「ああ。この町の城壁には包囲陣が敷いてある。だからそう簡単に魔物が侵入出来るはずがないんだ」
「包囲陣?」
「包囲式の魔方陣のことだよ。この町を囲っているあの城壁には魔除けの術式が作用してあるんだ。それをゲートと言って、ゲートのおかげでこれまで一度の侵入も許したことは無かった。なのにどうして・・・一体この町でなにが起きているんだ」
「その包囲陣はどうなると破られてしまうの?」
「城壁が攻撃を受けて壊されるか、領主館で展開している起点となる魔方陣が崩されるとゲートは解けてしまう・・・まさか、領主館でなにかあったのか!?」
「とにかく今は領主館に急いだ方が良さそうだね」
「ああ、急ごう」
◇◇◇
バーン!ゴロゴロゴロ!
「なんだ!?」
突然、この先の通り道が瓦礫で塞がった。
横の建物は崩れており、2階の部分がむき出しとなっている。
「あれは、広場で見た狼!?しかも2匹もいるよ!・・・ロイ、これってまずい状況じゃない!?」
「ああ、まずい状況だ。ひとまず引き返すぞ!」
「だめだ!後ろからも1匹来てるよ!ロイ、これって非常にまずい状況だよね!?」
「ああ、非常にまずい状況だ!」
2階から僕達を見下ろす2匹の狼は、瓦礫の山に飛び移りゆっくりと間合いを詰めてくる。
(どうしよう・・・なにか打開できる方法はないか!?)
「万事休すか・・・」
(この状況ならもうゲームオーバーかな・・・全くもう展開が早くてセーブが出来なかった。最初からにはなるけどここはリセットしておこう)
僕はポケットに手を伸ばす。
その動きを察知した狼は、吠えると同時に一斉に飛び掛かる。
「来たぞハルー!」
機敏な狼は鋭い歯をむき出しに簡単に僕らの間合いに入る。
玉を握りしめた手を勢いよくポケットから振り出すが、その動作中、二の腕あたりを後ろから狼に噛みつかれた。
激痛が走る。
「ぐあああああああっ!!!」
反射的に噛まれていない方の手で狼の口を開けようとするがびくともしない。
骨ごと噛み砕かれてしまう恐怖で頭がいっぱいになる。
「ぐあああっ!ぐ、離れろこのやろおおお!」
身体をひねり狼を引き剝がそうとするが、バランスを崩して倒れこんでしまう。
その拍子に玉を手放してしまった。
倒れこむ僕に狼は馬乗りになると、更に嚙む力を強めた。
「あああああああっ!!!」
耐えがたい激痛に僕は無我夢中で狼の頭を殴る。
が、びくともしない。
それでも2発、3発と繰り返し殴る。
4発目を殴る時、握りしめた拳は狼の目に当たった。
「キャンッ!」
(あああっ!はあ、はあ・・・ぐっ、う、腕が・・・)
「ハル!大丈夫か!?立てるか!?」
「う、うぐ・・・」
のたうち回る狼をしり目に、態勢を整える為、立ち上がろうとするが足に力が入らない。
おびただしい量の血が出ている腕をおさえながらロイを見る。
ロイは瓦礫の山から拾ったのか、鉄の棒を振り回しながら2匹の狼を牽制していた。
だが、壁に背を預けているロイに逃げ道は無い。
「ロイも時間の問題か・・・くそっ!玉を・・・探さないと」
揺らぐ意識の中、腕の激痛に耐えながら、首だけを動かして周りを見ても栞の玉は見つからない。
(玉は一体どこに・・・あれ、めまい?血を出しすぎたかな・・・)
片目の狼は吠える。
目を向けると、僕を襲った片目の狼は口元にしわを寄せながらこちらを見ている。
(玉がないとリセットが出来ない・・・でも、あの狼との目線を切ると飛び掛かって来るのは必至・・・くそっ・・・一体どうすればいいんだ・・・)
ぼやける視界で狼を見据えたまま、ゆっくりと片膝で後退りする。
(どうすれば・・・いいんだ・・・)
アドバイスとかあるとうれしいです!!!
引き続きよろしくお願いいたします!!
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