目覚め
◇◇◇
(・・・眩しい!?・・・太陽か)
「目を覚ましたか?」
振り向くと、胸元が少し開いた白い服に茶色の模様が入った灰色のズボンという身なりの金髪の男が僕を見ていた。
「え?ああうん。・・・あの、ここはどこですか?」
「いつもの草原だよ。それよりもハルは大丈夫なのか?」
「えっと、大丈夫ってなんのことですか?」
「なんのことって、ものすごい勢いでこれが飛んできてハルに当たったんだよ。結構すごい音が鳴っていたけど、頭は大丈夫なのか?」
「え、頭?別に大丈・・・痛ってえええ!」
金髪の男は笑う。
「その調子なら大丈夫そうだな。・・・ところでハル。この玉がハルにぶつかった時、鐘のような音が鳴ったんだ。覚えていないか?」
「・・・ごめん、分からないよ。ところでその、申し訳ないけど、君は誰?」
「お、おいハル。お前・・・記憶がないのか。俺だよ、ロイだよ。俺のこと覚えていないのか!?」
「ごめん。何も覚えてないんだ。その、ロイ、さん」
「・・・一旦町まで戻って医者に診てもらおう。悪化するといけないからな。ハル、立てるか?手を貸すよ」
◇◇◇
「自分の名前は覚えているのか?」
「さっきロイさんが僕のことをハルって呼んでたから、そうなのかなって」
「ロイでいいよ、さん付けはやめてくれ。それにしても僕、か」
「僕?」
「いや、なんでもないよ。ここから町まではそう遠くはない。この辺りに魔物はいないから無事には着きそうだな」
「魔物なんているんですか?」
「世界中にいるよ。魔物は凶悪な生き物だから町を出るときは気を付けないといけない。・・・そうだハル。これを持っておきなよ」
ロイはポケットから黒い玉を取り出して僕に渡した。
(本の世界に連れてってくれる栞は、本の世界では黒い玉の形になる。この栞の玉をなくすと僕は現実に戻れなくなるところだった)
「ロイありがとう。助かるよ」
「助かる?」
「ああえっと、記憶が戻る手掛かりは出来るだけ多く持っておきたいなって」
「そうだな。早く戻るといいな」
◇◇◇
「整理すると、言葉は交わせるけど、自分のことも少し前のこともなにも覚えてはいないということか?」
「そういうことになるね」
「記憶喪失は一時的なものかもしれないし、きっと気付いた頃には戻っているよ。それまでは俺もサポートする。だからハル、心配はするな」
「ロイありがとう」
◇◇◇
(町に着いたらまずは情報を集めてこの世界のクリア条件を探そう。・・・それよりもさっきの頭の痛みはなんだったんだろう?これまでに3回、他の本の世界を冒険したけど、こんなのは初めてだ)