栞
開いて下さりありがとうございますლ(╹◡╹ლ)
「母!出かけてくるよ!」
「雨が降ってるから傘持っていきなさいよ」
「分かった!それじゃ行ってきます」
僕は黒に紺のラインが入った傘を手に取り、家を後にした。
◇◇◇
(予報では晴れていたのに。通り雨かな?)
雨は強く降り続ける。
(この様子じゃあ今日は一日雨なのかな。早く本を借りて帰ろう)
◇◇◇
図書館に着いた。
受付に行くと連絡をくれた髪の長い司書さんがいた。
「司書さんこんにちは~」
「お~!九条くん雨の中よく来たね。ちょっとまっててね、あの本持ってくるから」
「よろしくお願いします」
司書が見えなくなると、僕は周りを見渡した。
(ここでいろんな本を借りたな。高校に入ってからだからもう2年以上経つのか。時間が過ぎるのって早いよな~)
操作パネルに目に留まる。
(履歴でも見てみるか。・・・これまでに73冊も借りてるのか。・・・このバスケの本は分かりづらかったな。・・・この心理学の本は全くあてにならなかった)
「お待たせ九条くん。この本であってるかな?」
「それであってます」
「良かった。すぐにまた他の人に借りられないようにこっそり取っておいたわ。内緒にしていてね」
「司書さんありがとうございます」
「どういたしまして。それじゃあ九条くん、この票だけ書いてね」
「分かりました」
「返却がねー数日遅れることはざらにあるんだけど、3週間も返って来ないのは中々だよね。私何度も催促したんだよ」
「そうなんですね。昨日の返却があった連絡といい、ほんとにいろいろとありがとうございます」
「気にしないで。また何か読みたい本があったらいつでも言ってね」
僕は司書から本を受け取り鞄にしまった。
「それじゃあ僕はこれで。司書さんありがとうございました」
「九条くんまたね。足元滑らない様に気を付けてね」
僕は図書館を出る。
(すごいもう晴れてる。さっきまであんなに雨が降ってたのに。今のうちに帰ろう)
◇◇◇
「ただいまー」
(母は買い物中かな)
僕は自分の部屋に入り、机の上に借りてきた本を置いた。
本の表紙は黒を基調としていて、タイトルを囲うように紺のラインが入っている。
机の引き出しから黒い栞を取り出した。
本と同じ柄の黒色に紺のラインが三本入った栞。
(この不思議な栞が全ての始まりなんだよな・・・)
◇◇◇
「・・・き、きききき」
「き?おーいどうした悠介?」
(きみのことが好きですって言え!僕!)
「き、きみにょ、あっ・・・」
「きみにょ?あーえーっと。ごめんね悠介?もうすぐ体育の授業だから私行くね」
「あ・・・」
◇◇◇
「何が勇気を奮い立たせる8つの方法だよ。全部実践したけどまるっきりダメじゃないか!こんな心理学の本なんて借りるんじゃなかった。・・・もう返しに行こう」
◇◇◇
「この本の返却ですね」
「はい・・・」
「ではこちらで処理しておきます」
「はい・・・」
「ありがとうございました」
「はい・・・」
「・・・あの、他にもなにか?」
「はい・・・あっいえ、ごめんなさい」
「なにか悲しいことでもあったの?」
「いえ、その・・・はい、ありました」
「相当落ち込んでるのね。そしたら・・・せっかくだからこれを借りていかない?」
三つ編みをした司書は机に黒い本を一冊置いた。
「はい・・・」
「この本はね、作者が死んじゃって未完結で終わってしまった小説なんだけどね、とっても面白いのよ。つらい時は一度こういった小説の世界に浸るのも悪くないわよ」
「はい・・・」
◇◇◇
(・・・そう言って貸してくれたあの本にこの栞が挟まってたんだ。この栞のことでいろいろ話したかったけど、あの三つ編みの司書さん辞めちゃったんだよな)
僕は深呼吸する。
(ふう。それじゃそろそろ行きますか)
僕は、第4巻と書かれたその本の表紙をめくって栞を差し込んだ。
すると僕の意識は、何かに吸い寄せられるような感覚とともに目の前の景色が真っ暗になった。
一生懸命かきますのでアドバイスや評価を頂けたるとうれしいです!
どうぞ宜しくお願い致します。ლ(╹◡╹ლ)