学校②
「悠介くんもう帰るの?」
「柚子か。僕はもう帰るよ」
「お願い!ちょっとだけ私のお願いを聞いて~!」
◇◇◇
「放送部はここか。・・・陸、いるかい?」
「悠介か。どうしたの?」
「これ、柚子が間違えて持って帰ったノート」
「わざわざありがとう。柚子はいないの?」
「ああ、県大会が近いからな。代わりに返すように頼まれたんだ」
「そうなんだ。悠介。私からもお願いがあるの」
◇◇◇
「失礼します」
「あら、九条君じゃない!どう?3年生の勉強にはちゃんと付いて行けてる?」
「家風先生こんにちは。今のところはなんとか。でも数学はチンプンカンプンです」
「数学かー!私も数学は苦手だわ。何度も解いて問題に慣れるしかないわね」
「そうですね。たくさん解いて赤点は取らないようにします」
「うん!偉いね九条君は!ところで職員室にはどんな用事で来たの?」
「えっと、これを返しに来ました」
「それは黒い、本かな?ラプラスの悪魔?難しそうなのを借りたんだね」
「陸が借りてたみたいですね。英語ばかりで僕には読めないです」
「英語かー!私も英語は苦手だわ。何度も読んで文章に慣れるしかないわね。・・・それじゃ私が代わりにデスクに置いておくけど、どの先生に借りたの?」
「フェルマー先生です」
◇◇◇
「さて、用事も済んだし家に帰ろう」
「おーい!悠介!」
「竜馬?帰ってなかったの?」
「少しだけ帰ったよ!」
「少し?」
「ああ!それよりも今日の掃除当番、悠介だったからまだ学校にいるって信じてたよ!聞いてくれ悠介!名案があるんだ!」
「名案?」
「時間だよ!時間はどうだ?」
「時間?」
「そうだよ!時間に関する新しい能力を手に入れるんだよ!例えばそうだな・・・時間を巻き戻すような能力があれば、もう意識の世界で防衛本能に追い詰められる心配は無くなる。ピンチになれば時間を巻き戻してを繰り返せば安全に目的が達成出来る!あ~なんて僕は頭がいいんだろうな~」
「時間を巻き戻す能力が無くても、意識の世界に潜れば、リセットされたみたいにいつも同じ感じの意識世界が創られるよ?」
「違う違う!僕が言いたいのは、潜ってる間の細かい選択の修正が可能になるってことだよ。やり直しはいつも最初からだろ?少しずつ正解を安全に積み上げられる方法があれば、もう意識の世界を制覇したも同じだ」
「なるほどね。でも、そんな能力ってあるのかな?」
「そりゃ意識の世界に入る能力もあるんだ、あるに決まってる!」
「でも」
「なんだよ悠介?良いアイデアだとは思わないのか?」
「仮にだよ?時間の巻き戻しが使えるようになったとして、介入と巻き戻しで栞の力はすぐに尽きると思うんだ。そう何度も使えないよ」
「・・・悠介。栞の力は増やせないのか?」
「どうやって増やすの?」
「・・・撤収!帰るぞ悠介!」
「ちょっと待ってよ竜馬!僕はいい案だと思うよ?一部だけど」
「なんだって?回数制限の問題を言われちゃあこっちは手詰まりなんだよ」
「そう怒らないでよ。新しい能力を手に入れるっていうのはいい案だと思うんだ」
◇◇◇
「本か」
「本だよ」
「そういや言ってたな。僕の一段階目の世界で失敗して罪を白状した時に」
「その言い方はやめようよ。謝るから」
「冗談だよ。もう許してるから安心しろよ。・・・でも本の世界に入って、そこで登場人物になりきって物語をクリアするなんて、ゲームの設定みたいだな」
「そのゲームにクリアすれば、ゲームで得た能力をこの現実でロード出来るんだ。僕はもう3つの本をクリアしたよ」
「3つってことは、使える能力は【投影世界】と【共有】と・・・後なんだっけ?」
「【原初枝折】だよ。でもこの能力だけは一回発動してからはもう反応しないんだ。本の中でも一回きりの能力だったから、多分その設定を引き継いでるのかも」
「その一回で出てきたのがこの栞ね」
竜馬は懐から黒い栞を出した。
「そうだよ。多分だけど、その栞も僕の栞みたいに本の世界に入れば現実で使える能力がロード出来るようになるよ」
「理屈は分かったよ。いや、やっぱり全然分からないけどノリでは理解した」
「試しに何か読んでみたらどう?」
「本か~。ん~気乗りはしないけどせっかく悠介から貰ったんだし、この機会になにか読んでみようかな」
「いいね!本嫌いの竜馬がやる気になってくれて嬉しいよ。これで僕たちはゲーム仲間だね」
「本を読むのが嫌いなんだ。書くのは好きなんだよ」
◇◇◇
「そういえば司書さんから連絡が来て、あの本の返却があったから明日図書館に取りに行くんだけど、読む本を探しに竜馬も来る?」
「悪い!明日は一日バイト入れてるんだ。それに実はもう読む本はあるんだ」
「どんな本なの?」
「知的な本は寝てしまうからな。思考ゲーム系の本だよ。悠介はシュレディンガーの猫って知ってるか?」
「シュレディンガーの猫?飼い猫が冒険する話とか?」
「正直僕もよく分からない。父さんにお手頃な本がないかを聞いたら貸してくれたんだ。ゲーム系なら僕でも読めると思うし、それにこのシュレディンガーの猫って父さんの仕事にも関係してることらしくて、ちょっと興味があるんだ」
「竜馬の父さんは宇宙を研究する人だったよね。頭のいい人が勧める本には僕も興味あるな。読み終わったら借りてもいい?」
「もちろんいいぜ。読み終わるのにどれくらい時間が掛かるかわからないけどな」
「確かにね」
◇◇◇
「それじゃ僕はここで。またな悠介!」
「うん!また明日!」
前ストーリーはここまでですლ(╹◡╹ლ)
次の部からはもともとの本編になりますが、修正前の文章なので見づらいかもしれません。
個人的には読んでほしいのですが、この文があるうちはまだすべてのパートの修正が終わってません(☍﹏⁰)
どこかのタイミングで見づらくなっても良いよ!って方はこのままよろしくお願いします(☍﹏⁰)