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使える魔法はセーブとロードとリセットです。  作者: ちさめす
小説世界 貴船町編
43/45

貴船町Cパート③

前半はマスナガパート

中盤は4人パート(ゴロウ、クモン、トイチ、ルーリー)

後半はレイリンパート


前パート最後のニマとの会話シーンは貴船町③で書いてるので省きます。

東棟北側区画にて。


2階建ての民家を優に超える狼の形をした魔物は、目の前に立ち塞がる人々を蹴散らそうと大きな前足を振り回す。


「間合いをしっかりとるんだ!近づきすぎると吹っ飛ばされるぞ!」


自警団が魔物の攻撃を避けると前足は民家にめり込んだ。


◇◇◇


「魔物は向こうの部隊に気を取られてる!今のうちにこちらから仕掛けるぞ!・・・【球体爆弾スフィアボム】!!!!」


詠唱者えいしょうしゃの周囲に数個の球体が出現し魔物へと飛んでいく。


「了解!・・・【闇の飛刃(ナイトエッジ)】!」


詠唱者の前に黒い弧が出現し、魔物に向って直線上に飛んでいく。


「加勢するわ!・・・「比翼の抱擁(フリットフェザー)】!」


魔物の背中から白い翼が生え始め、みるみると翼は肥大化していく。


「くっ!魔物が大きすぎて全てを覆いつくせない!・・・それでも、ありったけのマナを込めて包み込んであげるわ!」


より肥大化した白い翼は魔物自身を覆うように包み込んだ。


「今よ!拘束してるうちに攻撃して!」


吠えもがく魔物に後方から爆弾と黒い刃が当たると、爆発音とともに周囲は爆煙に包まれた。


「やったか!?」


魔物の遠吠えがとどろく。


魔物がブルブルと身体を震わすと、拘束していた白い翼は破壊された。


「全く効いてないわ!?今のが全力なのに!・・・もうマナ切れよ・・・」


自警団はがくっとひざを折った。


魔物は振り向き様にこちらへと向かって来る。


「終わりだわ・・・」


大きく口を開き食べられそうになるその間際。


「ナイスな時間稼ぎじゃ。後はわしに任せときなって」


目の前にマスナガが現れた。


マスナガは意識を集中すると全身が緑色に輝く。


「【立場交換オルタネーション】!!」


発動と同時に魔物も緑色の光に包まれると、フッと力が抜けたように前のめりに倒れた。


マスナガは振り向く。


「ほっほっほ。お主、今の魔法でマナを使い果たしたんじゃな。あっぱれじゃ。それでどうじゃ?今の気分は?」


緑色に輝いている自警団は驚きの表情で立ち上がりながら自身の身体を観察していた。


「マスナガ校長先生・・・これは一体なにが起きてるのでしょうか?身体の内側からマナが溢れてくる感じがします・・・」


「ほっほっほ。それは魔物あやつのマナと交換したのじゃよ。・・・さてと。わしは魔物あやつを連れて鞍馬山へ飛ぶ。お主は引き続き自警団のためるのじゃ」


マスナガは、うなりながら倒れている魔物に触れて意識を集中すると、マスナガと魔物の全身は緑色に輝いた。


「【愛の逃避行(ペアテレポート)】!!」


彼らは一瞬にして姿を消した。


◇◇◇


一方、ニマと別れた4人は西門区画に到着していた。


「この辺りで一戦あったんだろうな。町の被害が特にひどい」


「燃えとる!あの家が燃えとる~!この前一緒に遊んだ俺の友達の家が燃えとるんじゃ~!」


ルーリーが独り飛び出そうとするもクモンは手を引いて止める。


「待って!友達はきっと避難してるわ。それよりも勝手な行動は控えて。いいね?」


「うう~!無事じゃとええんじゃが・・・」


ルーリーは涙を浮かべる。


「おい!みんな見てみ!レイリンの家は無事や!レイリンはもう避難しとるかもしれんが行先の手掛かりくらいはあるやろ!はよ行ってみよや!」


◇◇◇


「あかん、やっぱ閉まっとるわ。呼び鈴鳴らしても出てこやん!」


「ふん!町民を守るアカデミー生のくせに避難してるってんなら中央棟にいるんじゃねえのか?」


「そうかもしれないね。今回も家に居ると思ったのに・・・」


「今は緊急事態なんや!手掛かりがあるかもせえへん。このドアぶち破るで!」


「待って!家を勝手に入るのは・・・」


「俺が許す!」


「え~!?」


「緊急事態なのに勝手に居なくなるやつが悪いだろ!?だから俺が許す!トイチ!ドアのカギを壊せ!」


「よっしゃまかしとき!」


トイチはドアに体当たりする。


何度目かの衝撃でドアは勢いよく開いた。


「な、なんやこれは・・・!」


「なになに?なにがあるんじゃトイチ~!?・・・うお!こりゃすげえな~!」


「これは魔方陣ね。でもこの模様は見たことのない・・・どんな効果があるのか見当もつかないわ」


「御大層に家の中でこれほどの魔方陣って、やつは一体なにを企んでいるんだ?」


「なんやようわからんけどもや、レイリンの行先がわかるもん探してみよか。ルーリー!わいはこっちを見てみるさかい、そっちは頼んだで~」


「おおう!任せるんじゃい!」


トイチとルーリーは部屋の奥へと入っていく。


「ねえゴロウ、この魔方陣に置かれた6つの蝋燭ろうそくってもしかして・・・」


「ああ。保存用の簡易魔方陣だ。展開したメインとなる魔方陣を維持しておくために重ねて敷いてあるな。しかもこの蝋燭、長期用のものを使ってる。恐らく前々からなにかをしていたんだろうな」


「大抵の魔法なら魔方陣の模様である程度の効果は予測出来るけど、こんなに奇怪な模様だと危険かどうかの判断もつかないわ」


「まさか!町ん中に現れた魔物に関係してる魔法とかじゃないだろうな!?」


「はは・・・それはさすがに違うと思うよ。アカデミーではごく普通の生徒だもの」


「はん!表向きはそうでも実際のところはどうだろうな!」


ゴロウは手に取っていたレイリンの私物を机に放り上げた。


「でもまあいずれにせよ、今はいち早くやつを見つけださにゃならんのだ。奥はトイチとルーリーに任せて俺達はこの部屋を探すぞ」


◇◇◇


4人がレイリンの部屋を探る中、外では今も建物は燃えており、時々遠くにいる魔物の遠吠えが聞こえてくる。


「それにしてもこの辺りの被害はすごいのに、この家だけは全く被害が出てないね。もしかして回避系の効果がある魔方陣なのかしら?」


「あり得るな。だがそんな単純なものじゃないと思うぞ」


「分かるの?」


「勘だ」


「勘、ねえ。・・・あっ!魔物が火を出したわ!あの大きさといいとんでもない魔物がこの町に紛れ込んできたわね」


窓から外を見ていたクモンは赤く照らされた表情でゴロウに伝えた。


◇◇◇


「ところでよ、魔物ってどうしていきなり町ん中に現れた?侵入経路はどこからなんだ?」


「そこが分からないのよね。イエカゼ先生もそれについてはなにも言ってなかったわ。おそらくまだ特定が出来ていないのかもしれないね」


「あれ程の魔物が付近に生息していたのなら町に入られる前に対応出来たと思うんだがな。・・・おっと、そういや昨日も白城町で魔物の襲撃があったそうじゃねえか。まさか今回の件と関係があるのんじゃねえのか?」


クモンは窓の外を覗く。


SPRIスプリによればあの魔物は昨日に白城町を襲った魔物と大きさは違うけど同じ魔物よ」


「ならまじで関係おおありじゃねえのか!?」


「町の中に突如として現れたことも全く同じなの。なのでそう考えて間違いなさそうね」


◇◇◇


奥からトイチが戻ってきた。


「あかんわ。手掛かりになりそうなもんは無かったわ。そっちはどうや?」


「こっちもよ」


「そうか。・・・まさか怖気おじけづいて白城町に逃げたとかちゃうやろな?ほんまに一体どこにおんのや」


今度はルーリーが戻ってきた。


「ダメじゃ~もぐもぐ。こっちにはなんも無かったんじゃ~もぐもぐ」


「おいおいルーリー!なに人んで勝手に食ってんねん!」


「ほら~良く言うじゃろ~?空腹ではなんも出来んて~もぐもぐ。トイチも食うか?うめえぞ~もぐもぐ」


「いらんわそんなもん!」


「そうか?うめえのにな~もぐもぐ。それでそっちは手掛かりあったのか~?もぐもぐ」


「こっちも手掛かり無しや」


「そうか~もぐもぐ。それじゃこれからどうするんじゃ~もぐもぐ」


「西棟は危険なので中央棟に向いましょ。レイリンがいないことをイエカゼ先生に連絡しておきたいわ」


「せやな!もしかしたら中央棟にいてるかもしれんしな。ほな行ってみよか」


「だな」


◇◇◇


4人はレイリンの家を出ようとする。


「おっとっと!なにかを蹴とばしてしもうたんじゃ」


「あっ!蝋燭が!」


蝋燭は魔方陣の上を転がると模様の一部を焼いた。


パリーン!と。


割れくずれる音とともに、床に書かれた魔方陣は消滅した。


「あ・・・」


「はっはっは!やっちまったな!ルーリー!」


「これはレイリンブチギレとちゃうんか!?」


「そんな~!わざとじゃないんじゃ!ほんとなんじゃトイチ~!」


「勝手に人のもん食うからバチが当たったんや!レイリンに怒られて反省せい」


「嫌じゃよトイチ~!助けてくれよ~!」


「甘えんなよルーリー!自分のミスは自分でつぐなうんや」


「そんな~!俺は怒られとうないんじゃ~!頼むよトイチ~!トイチがやったことにしてくれよ~!」


「なんでやねん!っておい!服から手を離さんかい!っておい!こら!服汚れてるやないか!ルーリー!なに人の服で手を拭いてくれてんねん!おいこら!」


「そんな~!冷たいんじゃよトイチ~!」


「なにが冷たいんやボケェ!んなもん知るか!」


「あーあ。もう私は知ーらない」


「俺も知ーらない」


魔方陣があった場所でルーリーがトイチに泣きつく中、クモンとゴロウは静かにレイリンの家を出ていった。


◇◇◇


・・・4人がレイリンの家に着いた頃。


レイリンは西棟の先端に立ち、自警団と魔物との戦闘を見下ろしていた。


(出だしは上々ね。さーて、次は中央棟よ)


レイリンは背負っている大きな本を手に取り、別物シーツと書かれたページを開いた。


そして意識を集中すると全身が白く輝いた。


「【リアライズ】!」


開かれたページの上に紺色の折り畳まれた布が出現する。


レイリンはその布を勢いよく広げて頭から被った。


すると、布を被ったレイリンのシルエットはだんたんと小さくなっていき、縮小が収まるとシーツの中から紺色のカラスが現れた。


◇◇◇


中央棟に向けて飛んでいるカラスは戦闘中の港内を見た。


(ごめんねみんな。今は辛いけど頑張って耐えてね)


◇◇◇


カラスは中央棟の先端に降りた。


そして目をつむって意識を集中すると、カラスの全身が白く輝き、レイリンは元の姿に戻った。


レイリンは足元の非常口を開けて中へと入る。


「うわあすごい!やっぱり中央棟の鐘はおっきいね!・・・って見惚みとれてる場合じゃなかった!早いとこ封印を解かないと」


レイリンは鐘に手を当てて意識を集中する。


全身が白く輝くと、鐘もレイリンに反応して白く輝く。


(中央棟の封印も解けたら後は東棟だけ。さくっと終わらせちゃおう)


レイリンが表情をゆるませたちょうどその時。


(なっ!)


レイリンは家で敷いている魔方陣が解かれたことを察知した。


◇◇◇


(跳躍時計の魔方陣が解かれた!?一体どうして!?)


集中を切らしたレイリンは家の方角を見る。


(誰かに魔方陣を破られた!?どうしよう、一旦戻る?それともこのまま続ける?下見もして流れを知ってる今なら失敗のリスクは低い。けど、それじゃあこの変化はなに?)


レイリンは少しの間考え込む。


「よし決めた。まずは原因究明から!」


レイリンは背負った大きな本を開く。


反転時計と書かれたページで意識を集中する。


「【リアライズ】!」


開いた本に現れた懐中時計を手に取ると、レイリンは再びをページをめくる。


屈折マントと書かれたページを開き再度唱える。


「【リアライズ】!」


本の上に現れた空色のマントを手に取った後もぺージをめくる。


そして微妙に飛ぶ箒と書かれたページを開いた。


「【リアライズ】!」


大きな本からはみ出るように箒が現れると、レイリンは箒を掴み取り本を閉じた。


レイリンは屈折マントを羽織って箒にまたがると、()()()の矢印が刻印された懐中時計を見た。


レイリンが意識を集中すると、レイリンとともにそれらのアイテムが白く輝いた。


(跳躍前にはこんなこと起きなかったのに。失敗は許されない・・・私のすべきことの為にもこの変化の原因は必ず突き止めなくっちゃ!)


レイリンは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()の矢印が刻印された懐中時計をしまい込むと、そのまま中央棟から飛び降りた。


「あーいやてくやてく!」


飛び降りたレイリンは地面に向かって一直線に降下する。


(私の家に侵入するなんてぜーったいに許さないんだから!どこの誰だかわかんないけど捕まえてとっちめてやる!)


レイリンは巧みに箒を操り地面に激突する寸前で方向を変える。


そして、()()()()()避難する人々の合間を縫いながらメインストリートを西へと進んでいった。


◇◇◇

SF要素入りました。

タイムパラドックスって、あえて起こしてみるのもありかな?

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