貴船町Bパート⑤
前半はカワモリパート
後半はリョーマパート
「ここは・・・っごほっ!ごほごほっ!喉が詰まって・・・ごほ!ごほごほ!かああっぺっ!ぺっ!」
カワモリは土を吐いた。
「なんだあこの土はあ!?・・・ああ思い出した!あんのガキども!次見つけたら八つ裂きにしてやる!」
◇◇◇
ガチャガチャ。
「くっそが!このドア開かねえじゃねえかよおい!」
カワモリはドアを蹴とばす。
「おら!誰かこのドア開けろよ!おい!」
ドンドン!
「こんなきたねえところに俺を閉じ込めやがって!何様のつもりなんだよ!クソが!」
カワモリはドアに寄り掛かった。
「窓も無しか。ち!イヌもいねえしチアーするやつもいねえ。ドアはバン出来ねえから・・・なんも出来ねえじゃねえか!」
◇◇◇
同時刻。
中央棟の外では、魔物がナナミに火の玉を放とうとしていた。
(あの化け物、火を吐くのか!?・・・それならこれが使える!)
ホルマはショルダーバッグから黒の布袋を取り出した。
「この火の珠で中央棟に穴を開ける!」
魔物が放った火の玉はナナミに迫る。
ホルマは意識を集中する。
火の珠が輝くと、魔物が放った火の玉の軌道が変わり、中央棟の3階にぶつかった。
◇◇◇
倉庫部屋の中が爆炎に包まれる。
「ごほ!ごほ!な、なにが起こったああ!?」
倉庫内のあらゆるものがバチバチと焼ける。
「だ、誰だあ火の不始末は!?ごほっ!息が苦しい・・・!」
ドンドンとカワモリはドアを叩く。
「火事だぞおい!誰か!早くドアを開けてくれ!このままだと死んでしまう!誰か!はよドアを開けてくれ!・・・ごほ!ごほ!くっ・・・い、息が!」
カワモリは膝をつく。
「はあ、はあ・・・もう無理や。ごほ!ごほ!・・・これは身体に堪える・・・どうしたらこの悪い夢は覚めるんだよ・・・」
バタンとカワモリは床に倒れる。
(まさか、これもスナイパーの仕業なんか・・・)
意識が遠のき視界がぼやけると、突如、部屋内の火が消えていった。
壁の穴から黒煙が外に流れ出ると、カワモリは状況を理解する。
「こ、これは・・・神様の慈悲か?」
◇◇◇
中央棟の外にて。
(やっぱりすげえ。さすが、封印されてるだけのことはあるなこの珠は)
ホルマは火の珠をしまい中央棟に目を向ける。
そして、カワモリは壁の穴から器用に瓦礫に飛び降り逃げていくのを確認した。
(よし。上手く逃げたな。・・・さて、戻るまでがミッション。鞍馬山までなら残りのマナでアレを出せるか)
ホルマは意識を集中する。
アンクレットがベージュに輝き、同じベージュに光る指先を地面に当てると魔方陣が現れる。
「出てこい、飛出雷遠!」
中から顔の丸いライオンが現れた。
バチバチっと静電気を放つライオンにまたがると、ライオンは地面を蹴り上げて飛び出した。
ライオンが居なくなった場所を中心に風圧が起き、地面はめくれ上がった。
◇◇◇
鞍馬山の別荘前にて。
ライオンが着地すると衝撃波が起こった。
(ある程度の距離なら一っ飛びですぐに着くけど、一回の召喚でマナの60%も掛かるんだよな。おかげでマナ切れだ)
ライオンからホルマが降りるとライオンは消えていった。
(ま、憑依を解けば関係ないか)
ホルマは意識を集中すると、全身が白く輝く。
「【解除】!」
ホルマはその場に倒れ、その傍でリョーマが現れる。
「ふう。これで役目は完了っと。それにしても、魔法って使うとこんな感じなんだな」
リョーマはホルマを見た。
(・・・でも、さすがにもう女子には入りたくない)
顔を少し赤くしたリョーマはホルマを抱える。
「さて、とりあえず別荘に連れていくか」
◇◇◇
リョーマは玄関先でインターホンを鳴らす。
「はーい、どちら様ですか~?」
「あ、すいません。リョーマって者ですけど」
「リョーマ?って誰ですか~?」
「え?あれ?ここってディーエムの別荘じゃあ・・・」
「ああ!あなたが新人さんね~!玄関開いてるからそのまま入って来てね」
「ありがとうございます」
「あ!ちょっと!リョーマって言ったっけ。ディーエムの仕事は無事に終わったの?」
「一応は完了しました」
「そう!なら良かったわ!ささ、入って来てね~ん」
インターホンが切れると、リョーマはホルマを抱え直して、玄関を後にした。
主人公視点はいつになるんだろう




