貴船町Bパート④
リョーマパート
カワモリパートは次にします。
◇◇◇
中央棟付近の民家の屋上にて。
「化け物が動き出したか。よし、準備して配置に着くか」
ホルマに憑依しているリョーマは意識を集中すると、足首のアンクレットがピンク色に輝く。
(ふー・・・憑依中の魔法も普段の感覚で出来そうだ)
ピンクに光る指を地面に当てると魔方陣が現れ、そこからピンク髪の女の子が現れる。
「初めてのはずなのに当たり前のように出来るってなんだか不思議な気分だ」
ホルマはピンク髪の子に飛び乗った。
ムギュっと、背に自分の胸を当ててしまう。
「な、なんだこの感覚は!」
顔が熱くなり、咄嗟にホルマは両手でピンク髪の背を押すと、態勢を崩して地面に落ちた。
「あ痛ててて・・・。しっかし今の感覚は・・・はっ!まさか!」
ホルマは自分の胸を触る。
電撃が走る。
「こ、これは・・・!」
1人赤面で慌てふためくホルマをピンク髪の子は無言で見つめていた。
◇◇◇
(だめだ冷静になれ僕!)
ホルマは両手で自分のホッペを叩く。
(自分の役目に集中するんだ!僕がやるべきこと・・・ホルマの回収の次はカワモリの避難!)
視線を魔物に向ける。
(化け物はもうすぐ中央棟か。うかうかしてられないな)
ホルマはピンク髪の子に飛び乗ると、ピンク髪の子は民家の屋上をジャンプして移動を始めた。
ホルマはジャンプの度に胸が上下に揺れるのを感じる。
(も、もう女に憑依するのはやめよう・・・)
顔を赤くしたホルマの両手は力んでいた。
◇◇◇
・・・少し前の鞍馬山にて。
「リョーマ、内容は把握したか?」
リョーマは手に持っているホルマの写真を見る。
「えーっと、この子を回収して、その後カワモリって人を逃がす。その後に、この先の別荘にこの子を連れて行く」
「出来るか?」
「出来ないと思う」
「何故だ?」
「いや普通そうだろ!?まだこっちに来てから一時間も経ってないのに、魔法とか役目とかあーだこーだ言われて出来るか?って、出来るわけねーだろ!?」
「向こうのお前はいくつだ?」
「15だよ」
「高校生か。ふむ、それなら負担は大きいか」
「それにゲームもあまりしないんだ。魔法とかファンタジーとか言われてもわかんねえよ」
「仕方ない。これを使う」
ディーエムはポケットから銀の小箱を取り出す。
「ん?なにそれ?」
「ボタンだ」
ディーエムは小箱を開け、中のボタンを押した。
「・・・そのボタンを押すとなにが起こるの?」
「ポーズが掛かる。周りを見てみろ」
「・・・なっ!止まってる!?木の葉の揺れも風も止まってる!?」
「時間が惜しい。リョーマ、お前にも仕事は完遂してもらう必要がある。分からないことは今この場で全て答えよう」
◇◇◇
「このボタンは一時停止を掛けることが出来る。ボタンを押すとこの小箱の半径5mの空間外を全てを止める」
「なるほど。とんでもアイテムってことは分かったよ」
◇◇◇
「・・・栞の力で現実世界から転移してきたことは分かった。それに、転移した人になりきってこの世界をロールプレイすることも分かった」
「他に聞きたいことは?」
「僕が転移したこの身体の人は乗り移る魔法が使えるって言うけど、そもそもどうやって魔法を使うんだ?」
「意識を集中しろ」
「意識?」
「そうだ」
「わかったよ。・・・むむむ」
「なんだ、むむむって」
「あー!意識を集中するって言われても、そもそも意識を集中するってどうすりゃいいんだ!?」
「・・・」
◇◇◇
「・・・なるほど。この身体の人の魔法では、乗り移ると乗り移った先の記憶とか経験とかを得ることが出来るのか」
「そうだ。ホルマに乗り移れば、ホルマの記憶からこの世界のこと理解出来るはずだ」
「カワモリって人も誰だか分かるわけか」
「そういうことだ」
◇◇◇
「・・・中央棟に魔物が現れてから行動開始ってことでいいんだよな?あ!でもさ、カワモリって人は逃がすだけでいいの?」
「彼は巻き餌だ。裏に控えてる大物を釣るために一度逃がす必要がある」
「なるほど」
◇◇◇
「大体分かった!それじゃ僕は西門区画?ってとこでホルマって子を待つよ」
「そうか。ではポーズを解くぞ」
ディーエムがボタンを押すと周りの風景は再び動き出す。
「リョーマ」
「なに?」
「ホルマはお前よりも数段強い。油断はするな」
「まあなんとかなるっしょ!・・・ちなみに乗り移るいい方法ってなんかあるかな?」
「それぐらいは自分で考えろ」
「えー・・・」
◇◇◇
・・・中央棟にて。
物陰に隠れるホルマは、対峙しているナナミと魔物を見ていた。
(カワモリって人は中央棟の3階・・・あの辺りか?さて、この後に校長先生が来るって話だから出来ればそれまでに逃がしたいんだけど、どうしようか)
◇◇◇
中央棟の3階にて。
「コカァ・・・カポォ・・・ゴゴッ」
カワモリは目を覚ました。
ネクストパートisカワモリ




