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使える魔法はセーブとロードとリセットです。  作者: ちさめす
小説世界 貴船町編
38/45

貴船町⑪

前半はホルマパート

後半はナナミパート

◇◇◇


・・・ハル達が貴船町に入る前。


「そしたら~、私は先行するからみんなは出来るだけ早く来てね~」


ホルマが意識を集中すると、足首に着けたアンクレットがピンク色に輝く。


「ふうちゃんこの指と~まれ~」


ホルマがピンクに光る指を地面に当てると魔方陣が展開され、中からピンク色の髪をしたツインテールの女の子が現れた。


ピンク髪の子はホルマを背負うと、ものすごい速さで駆けていった。


◇◇◇


ホルマは貴船町に入った。


(さてと~、まずはなにが起こってるのかを把握しないとね~)


「行くよふうちゃん~」


ピンク髪の子は近くの家を登り屋根に上がった。


(・・・西棟と、船着場と、東棟の北側から煙・・・な!?なにあの大きな魔物!?・・・なるほど状況は分かったわ~。となると自警団が対応してるはずよね~。統率してる校長先生を探しつつここから近い西棟に行ってみようかしらね~)


「あの!すいません!屋根上にいる人!えーっと名前が・・・ホルマ!ホルマさん!あの!助けてくれませんか!」


「ん~?」


下を向くと1人の男が手を振っていた。


ピンク髪の子はホルマを背負いながら飛び、男の前で着地する。


「・・・うげ!人を抱えてのそのジャンプはやばすぎでしょ!?足は大丈夫なのか!?」


「驚かせてごめんね~。この子はパペット人形で人じゃないの~。だから心配はいらないよ~。それで、どうしたの~?」


「え?ああえっと・・・その、足を痛めてしまって避難出来そうにないんだ。だから避難所まで連れてって欲しいな、なんて」


男は足を引きずる素振りを見せた。


(服装に汚れも乱れも無いし、怪我をしてる感じには見えないけど~)


「・・・そう。分かったわ~」


「ほんとに!?ありがとう!」


ホルマはピンク髪の子から降りる。


「それじゃ、ふうちゃんに中央棟まで負ぶってもらって~。私はこのままで行くから~」


「・・・え?ああっ!いや!それだとホルマさんの時間を取っちゃう!ぼ、僕はついででいいんで!その、避難所の近くまで負ぶってもらえませんか!?」


「ん~。確かに時間は惜しいわね~。うん、いいわよ~」


ホルマはピンク髪の子に乗っかかる。


「さあ、私の上に乗って~」


「ありがとう!」


男はホルマの上に飛び乗った。


「それじゃ行くよ~」


ピンク髪の子は2人分の重さをものともせずに中央棟に急いだ。


◇◇◇


「重たくないか?」


「私は大丈夫よ~」


「そうか」


(・・・スマートじゃないやり方は嫌いだけど、この子、こんなか弱そうな見た目で僕より格上って話だから、これぐらいしか方法が思いつかなかったんだ。ごめんよ)


背負われた男の全身が白く輝く。


「【仮宿暮らし(ディペンデンス)】!」


「っ!?」


ホルマは背負った男の魔法に身構えようとするが、行動を起こす前にピンク髪の子が突如消え、ホルマは地面を転がった。


態勢を整えたホルマは立ち上がると、大きく深呼吸をした。


そして。


「憑依完了っと」


◇◇◇


・・・少し後の中央棟にて。


シシドを見送ったナナミは魔物と対峙していた。


「・・・で、出たあああ!どうしよどうしよ!私だけじゃなにも・・・でも、みんなを守らないと・・・」


ナナミは入口のすぐ横にある操作パネルで扉を閉めた。


「もう、こうなりゃ自棄やけよ!さあ!どこからでもかかってらっしゃい!」


魔物は大きく口を開いて火の玉を作り出す。


「熱っ!・・・なに、あの太陽みたいな玉!?」


辺りは瞬く間に熱気に包まれ、魔物は咆哮とともに火の玉を放った。


「えええ!それは無理それは無理~!」


火の玉は中央棟に当たり、その衝撃でナナミは吹き飛んだ。


「痛ってって・・・なっ!棟に穴があいて・・・燃えてる!?」


(棟には保護法式が敷いてあって、どんな魔法でも燃えないはずじゃ!?)


「考えても分かんない!でも、燃えてくれるなら私でも戦えるかも!」


ナナミは被っている赤い鍋を左手で抱え込んだ。


「さあ!調理開始よ!」


ナナミが集中すると、団子結びにしたヘアバンドの玉が赤く輝く。


そして、鍋の縁も赤く光ると、中央棟で勢いよく燃えていた火が鍋に吸い寄せられていく。


「まずは同じ火の玉でやり返す!」


ナナミは右手で鍋から火をすくい出すと上に放り投げた。


そして、人差し指をくるくる回すと、鍋から出る火は糸を引いて綿あめのように放り投げた火にまとわりついていく。


(あちち!・・・これ以上大きくするとこっちが焼けちゃうね)


「よし!いっけえ!火の玉ストレート!」


右手を前に伸ばすと、出来上がった火の玉は勢いよく魔物に飛んでいく。


魔物は迎え撃つために口を開く。


そして、ぱくりとナナミが放った火の玉を食べた。


「なっ!えええ!食べるってそんなのありですか!?」


魔物の口からは灰色の噴煙が立ち込めるが、ダメージを負った素振りはない。


魔物はもう一度口を開く。


(またあの火の玉を出してくる気!?鍋にはまだ十分に火は残ってるけど・・・さすがに少しの素材では原料の塊に勝てないのかも)


一歩後退りするナナミをよそに、魔物の口の中では再び火の玉が作られていく。


「四の五の言ってはられないか・・・素材の味は調理次第で変わる!もう一度!今度はより高く!」


ナナミは鍋からすくい上げた火を上空に向かって勢いよく投げると、人差し指で火を繰ってより大きな玉を作り始める。


魔物はこちらの動きを察知したのか、先程よりも大きな火の玉を作り出す。


強烈な熱気がナナミを襲う。


「熱い!熱い!ぐっ!こっちも・・・負けないんだから!素材全部を使って火の玉をつくる!」


ヘアバンドの玉が更に輝きを増すと、鍋から引いた火の糸は太くなり、ナナミの作る火の玉は更に大きくなった。


魔物は咆哮とともに作り上げた火の玉を放つ。


「えっ!ちょっと待って早いよ!あと1分はちょうだいよ!」


(どうしよ、大きさが全然違う!これじゃ真正面からぶつけても負けちゃう!)


「それなら・・・!」


ナナミは右手をグーにして一度火の糸を切った後、今度はチョキを作って、鍋から2つの火の玉を作り出した。


そのうちの1つを自分の足元に勢いよくぶつけると爆発が起きる。


そして、包まれた粉塵からは勢いよくナナミが飛び出した。


「ごほっ!ごほっ!やばい、けっこう煙を吸っちゃった・・・喉がっ・・・って、熱!」


勢いよく吹き飛ぶナナミの目の前には魔物が放った火の玉がある。


「熱!熱熱!もう無理もう無理もう無理いいい!」


ナナミは叫びながら人差し指を魔物が放った火の玉に向ける。


すると、ナナミが作りだしていた大きな火の玉がそこに向って勢いよく飛んでいく。


そして、お互いの火の玉がぶつかると爆発が起きた。


ナナミの作った火の玉は爆発で消失し、魔物が放った火の玉は、爆発によって軌道がかわり、空の彼方へと飛んでいった。


ナナミは勢いよく地面を転がり続け、近くの民家に激突して動きを止めた。


「もう無理・・・」


魔物はナナミに近づくと、前足で止めを刺すように一撃を加える。


民家が崩れ、粉塵が舞い上がると同時に赤い縁の鍋は大きく吹き飛んだ。


◇◇◇


中央棟の近くにて。


「なんだ!?今の火の玉は!?」


「シシドさん!見てください!中央棟から煙が上がってます!」


「さっきの爆発か!?くそ!魔物が来たんだ!」


「ひいい怖いよ!」


「おい!お前!みんなに伝えろ!中央棟はこれから戦場になる!東にはもう魔物はいないはずだ!みんなを連れて今すぐ東棟を目指すんだ!」


「わかりました!」


「おい!ニマ!起きろ!・・・っくそ!魔法はもう解けてるんだぞ!他の人はもう目が覚めてるのになんでニマだけ目覚めないんだ!?」


「シシドさん!避難の準備が出来ました!」


「そうか!・・・悪いがこいつも頼む。目が覚めたら中央棟に来いと言ってくれ!」


「わ、わかりました!」


シシドは避難民にニマを託し、介抱されているリゼを一目みた後、中央棟に向けて駆け出した。


「待ってろよ、ナナミ・・・!」


ネクストパートisリョーマandカワモリ

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