貴船町Bパート③
毎回新しい人が登場してる気がする。
◇◇◇
同刻。
白城町の近くにて。
(・・・お!やっと見えてきた。防壁が見えてきたってことは、メールが言ってたのはあの町か。・・・はあ~もう森の中は嫌だ。・・・バンが解除されてからもこの扱い、カワモリの野郎~絶対に許さないからな)
「あ痛っ!枝踏んだ!痛ってえなあもう、くっそおお!」
(ていうか、なんで身ぐるみ剥されてんだよ~!メール!早く迎えに来てくれ~!)
◇◇◇
「・・・ありがとうございました。また起こし下さいませ!」
(こんな状況でも営業してるなんて、すごいねここは。品揃えも悪くなかったし、これならうちもくんも満足してくれるんじゃないかな)
「さてと」
店から出たメールは、両手に紙袋を持ったまま目をつむって意識を集中する。
メールの全身が白く光る。
「【スイフトネス】!」
履いている靴が淡く輝いた。
メールは地面を滑るように高速で西に向かう。
(思考の共有に割くマナが多くて白城町まではスイフトネスが使えない。んー、馬車屋さんで馬を借りるかあ)
◇◇◇
1時間程過ぎた頃。
「・・・お!来たかメール!早速で悪いけどさ、買ってきた服こっちに投げてくれよ」
「ほんとに裸なんだねー!こんな人気の無い森の中でポツンといるの、なんか受けるね」
「うるせえ早く投げろ!」
「分かった分かった!・・・それっ!」
「ふー助かる。すぐに着替えっからちょっと待っててくれ」
◇◇◇
「・・・おい」
「なに?」
「なんだこれは?」
「なんだって、服だよ?・・・おー!よく似合ってるじゃん~!さすが私だね。センスが違う」
「どんなセンスしてんだよ!?これ、ただの黒いレインコートじゃん」
「そう?うちもくんの性格が出てる感じがしてすごく良いのに!ちなみに、その赤のジッパーを下までおろせば全部開けてかっこいいよ!」
「んー、ださいな」
「そうかなあ。店員さんは、この服を今買うと今年で最初に買った人になれるって言ってたよ」
「絶対、遊んでるよな?」
「ん~なんのことかなあ?メールにはわかんないや~」
「あのなあ。・・・まあ隠せるだけましか。ところで下着はどうした?」
「え?・・・あ!忘れた!ごめんね。しばらくはジッパー下ろせないけど我慢してね」
「というかさ、もうちょっと小さいサイズ無かったの?これXXLだぞ?動きづらくてしょうがないわ」
「ああ、その服フィーダーカンパニーのだから、サイズはSかXXLしかないのよ」
「フィーダーカンパニーって、おいおい待てよ。なんでそんなジャンクなとこで買い物してんだよ!もうちょいまともな店あっただろうが!」
「魔物騒動でどこもお店はやってなかったの!せっかく買ってきたんだからありがたく着てればいいじゃない!」
「ぱっと盗ってくりゃいいだろ!」
「私は泥棒なんかしません~!」
「お前の職業盗賊だろうがよ!」
「盗まない盗賊だから!」
「盗まない盗賊って、ただの賊じゃねえかよ!」
「賊って言うな!・・・もう!せっかく買い物までして迎えに来たんだからね、ありがたく思いなさいよね」
「ああもうわかったよ!ったく、なんでこの気持ちを分かってくれないんだ」
「久しぶりの再会なんだから、からかいたいじゃん!もう、うちもくんの馬鹿!」
ふくれっ面のメールは、乗ってきた馬車を引く馬に乗り掛かった。
「早く乗らないと置いてくよ!」
「あの、メールさん。靴は・・・」
「あ!ごめん、忘れた!」
うちもは声に出さず、表情でキレた。
◇◇◇
メールは貴船町に向けて勢いよく馬車を引いていた。
馬車に乗るうちもは、隅にあった細いロープを見つけると帯のように結んだ。
「ねえうちもくん!そういやフィーダーカンパニーの社長ってあのウメハラの弟って知ってた!?」
「ウメハラと言えばあのLOWの不敗の王だろ?そんなすごいやつの兄弟が経営してる店とは思えないよな!」
「それは言えてるかも!」
「メール!お前やっぱり分かっててここで買い物しただろ!」
「さ~て、なんのことかなあ!」
「フィーダーカンパニーって服のロストを減らすためとか言ってSとXXLしか置いてないんだぜ!?そのくせに堂々と主流はだぼだぼ感ですとか言ってんだぞ!?普通に考えてやばいだろ!なんで一部の界隈に人気なのか理解出来ないわ!」
「着たことないからわかんなかった~!ごめんね!」
「もういいよ!いやよくない!せめてパンツくらい買ってきてほしかったわ!」
「反応を見てみたいって気持ちがどうしても先行して、そこまで気が回らなかったの!」
「・・・もうなんも言えねえわ!とにかく、町に付いたら俺は服屋に行くからな!」
「はいはい、分かりましたよーだ!」
「ところでメール!この馬車も借りてきたのか!」
「馬車屋さん、やってなかったから勝手に借りてきたよ!」
「だったら・・・服も勝手に借りてこんかいやああ!」
◇◇◇
メールが引く馬車が急に止まった。
「お、おい!急に止めるなよ!」
「うちもくん、あの魔物に見覚えって無い・・・?」
「ああん?魔物だと?魔物なんていちいち・・・首輪か」
「うん」
メールは馬から降りて魔物に近づく。
「おい!危ないぞ」
「大丈夫だよ!気絶してるみたい!・・・この首輪、なにか書いてる」
「とっとと始末して町に行こうぜ。俺、服買わなきゃいけないんだよ。・・・なあおい、聞いてんのかメール!」
「イヌ」
「なに?」
「イヌって書いてあるの。確かカワモリが飼ってた魔物の名前もイヌじゃなかった?」
「そうか。あいつのペットか。なら話は早いな」
「ちょっと!うちもくんなにするの!?」
「なにって始末するんだよ。どうせ魔物だろ」
うちもは気絶した魔物に向かって手のひらを向ける。
意識を集中すると、手のひらが白く光る。
「【契約者の名のもとに具現せよ。形は剣、属性は火、召喚。炎の太刀】!」
炎を纏う太刀が現れ、うちもはその太刀で魔物を両断した。
「斬り口は焼けるから血は流れない。よって服も汚れない。さ、片付いたし、先を急ぐぞ」
うちもは太刀を消して馬車に戻った。
「あー。せっかくカワモリから身代金を要求出来ると思ったのに、もったいないなあ」
◇◇◇
馬車は離れていき、その場所には両断された魔物だけが残っていた。
しばらくすると、首輪についた鈴が黒色に輝いた。
そして、魔物は目を覚ました。
Bパートの整理
メールとうちも→町へ
タキシード→レイリン討伐
ウィスパーとリョーマ→シシドへの道中にダイゴロウと対面
ーーー
ミラーとヒナチ→イエカゼ討伐
ナナミは瀕死
ホルマは囚われの身
カワモリのペットは半分になる




