貴船町⑨
ハル(ロイ)パートの続きです。
(くそ・・・あの女が・・・あの女がロイを殺した・・・)
忍びの女が投げたチャクラムは真っ直ぐこちらに飛んでくる。
(どうしたらいいんだよ!もう、分かんねーよ!)
「くっそおおお!」
◇◇◇
ハルにチャクラムが飛んでいく様子をフードの女は見ていた。
(あらあら。見ていられませんわね。・・・ロード【便利な模造品店】!)
ハルの目の前でチャクラムは留まり、チャクラムはその場でくるくると回り続けた。
(さてさて、どうしましょうか。目の前でご友人を亡くされますと、普通の方なら正気ではいられませんわよね。・・・あまりこういうことは好きではありませんが、仕方ありませんわね)
音々の目が、透き通った水の色からピンク色に変化した。
◇◇◇
(チャクラムが、止まった?・・・助かったのか?)
「大丈夫ですか?」
「あ、あなたは?」
女はフードをめくり素顔を見せる。
「音々と申しますわ。以後お見知りおきを」
銀色の髪にピンク色の目をしたその女の容姿に、僕は心を奪われた。
数秒、僕は音々を見ていた。
(き、綺麗な人だなあ・・・ってみとれてる場合じゃない!)
「あ、あの、助けてくれて、その、えっと・・・あ、あ、ありがとうございます」
「いえいえ、どういたしましてですわ」
「音々。なにしに来たの」
「それぐらいにしておきませんか?輪さん」
「答えになってない。それに。次の招集まであまり時間はない。なすべきことは終わってるのか」
「もちろんですわ。私は任務を終えて余暇を過ごしていますの。輪さんは・・・」
音々は両腕を前に伸ばし、親指と人差し指を広げて写真の形を作る。
「まだ回収していないようですわね。こちらで油を売っていてよろしいのですか?」
「【ウインドウ】か。勝手に私を調べないで。勘にさわるわ」
「あらあら、ごめんなさいね。これは私の癖ですの」
輪は音々の言葉を聞き流して東棟に目を向けた。
「時間は稼いだ。音々。私はもう行くから。【バインド】を解除して」
「もちろんですわ」
僕の目の前で回り続けていたチャクラムは、そのまま地面に落下して回転を止めた。
「廻さんは西棟付近で魔物と応戦中ですわよ」
「これで二度目。私は見透かれるのは好きじゃないの。次は容赦しないよ」
輪はチャクラムを拾い、西へ駆けて行った。
「はーい。気を付けますわ。・・・助かって良かったわね」
「え、あっ!えっと、はい・・・あの、助けてくれて、あ、ありがとうございます」
「その手、とっても痛そうですわ。少しお待ちになって」
音々は僕の頬にそっと両手をあてる。
「えっ!ちょっ、な、なんですか急に!?」
顔が赤くなる。
心臓の鼓動が早くなり体温が上昇する。
「すぐに済みますの。少しだけ、落ち着いてくださいね」
「えっ!あっ!は、はい!」
音々は吐息が感じられるほどに顔を近づける。
(ちょ、ちょっと!距離が近くて、お、落ち、落ち・・・!ひぃぃ!まだ血は止まってないのに、興奮でまた流血して貧血になる~!ああ痛みが・・痛みが無くなっていく・・・無くなって・・・いく?)
「終わりましたわ」
「・・・え?」
「いかがですか?もう痛まないとは思うのですが・・・」
「痛く・・・ない、です」
(あれ?なんで!?昨日噛まれた傷の痛みも斬られた手の痛みも感じない!?」
「ふふ。【ペインキラー】という法典の基礎魔法ですのよ。一時的な痛み止めですので、後ほど病院で手当てを受けてくださいね」
「あ、ありがとうございます・・・」
「いえいえ、どういたしましてですわ」
音々の微笑みに僕は顔を赤くした。
(どうしよう・・・す、すごく可愛い。世の中にこんな素敵な人がいるなんて・・・あ!でも、本の世界の人だよね・・・現実にいないと分かってても、なんでだろう・・・すごいドキドキする・・・あああ~!)
音々のにやりとした表情も、僕には満面の笑みに映った。
「・・・ところで、やはりあなたでしたのね」
「は、はい?なんのことですか?」
「栞のことですわ。あなたは、どんなロードが使えるのですか?」
次から別視点を進めます。
アカデミー生と先生だけで15人くらいいるのはやりすぎかなあ
登場人物多すぎてごめんなさい(☍﹏⁰)
面白いと感じて下されば評価をお願いします!




