貴船町①
面白いと感じで下されば是非とも評価をお願いします!!!
そして、やっと町の名前が決まりましたლ(╹◡╹ლ)
「ロイ、僕たちも行こう」
そうだなという返事の後に僕とロイは足早に歩き出す。
街道を進む程に港町全体が見えてくる。
遠目からでも火の手は町全体から上がっているのが分かる。
白城町で起こった狼の襲撃の比では無いと容易に想像が付いた。
しばらく歩き続けると、港町から多くの人々が街道を辿ってこちら側に走って来るのが見えた。
彼らは老若男女と様々で身なり等から避難しているのだろうと僕は思った。
先頭を走っていたおじさんは、隣の仲間らしき人に合図を送った後に僕たちの前で止まった。
他の多くの人々は僕たちを通り越して走り去って行く中、おじさんは足を止めた僕たちに話しかける。
「おーい、君たち!止まりなさい!この先は危ないぞ」
「どうかしましたか?」
僕は息を整えるおじさんに尋ねた。
「魔物だよ。魔物が襲って来たんだ。ここからでも見えるだろう?貴船町は危険だ。行くのはやめた方がいいぞ」
「やはり魔物か!ハル!俺たちも急ごう!」
「お前さんたち待ちなさい!今襲って来ているのは並の魔物じゃないんだ。親玉のような大きな魔物で、戦える者は総力を挙げてはいるが状況はあまり良くない。君たちも一度白城町に引き返した方がいい」
「おじさん、それでも僕たちは行きます」
おじさんは僕とロイの表情を確認するように順番に見た。
「そこまで言うのなら止めはしないよ。ところで、わしらはみんな白城町に避難するが、その担いでいる人は気を失ってるように見えるが、こちらで保護しようかの?」
「お気遣いありがとうございます。ですが大丈夫です。目を離すとちょっとややこしくなりそうなので僕たちがこのまま連れて行きます」
気を失っているとはいえカワモリは盗賊だ。
目を覚ますとかえって迷惑を掛け兼ねない。
「そうか。それなら気を付けるんだぞ。あんなに大きな魔物は今までみたこと無いわい」
「では僕たちは行きます!おじさんも道中お気をつけて!」
僕はロイと顔を見合わせ無言で頷き合った後、腕の傷を気にしながら小走りで港町へ向かった。
「最近の若いもんはみんな怖いもの知らずなのか」
今も貴船町から多くの人が白城町に向けて避難している。
その流れに逆らう僕たちをおじさんは見送った。
「おおっとこうしちゃおれん。わしも早く避難しないと」
おじさんは振り返る。
すると、先程の若者たちの様にこちらへ向かってくる人に気が付いた。
「おやおやまた1人、勇敢な若者が多いことで」
◇◇◇
貴船町の建物は、町全体が海の砂浜をモチーフにした造りをしていて、砂色の建物にところどころ波を連想させる水色のラインが塗装されている。
白城町の景観とはまた違う美が意識された町だ。
貴船町に着いた僕は町の中を見渡す。
火の手が上がり、建物は崩れ、人々が逃げ惑うこの光景を到底美しいとは思えなかった。
「ひどい有様だな」
「ロイ、あのおじさんが言ってた魔物はこの辺にはいなさそうだ」
「それは良かった。戦えない俺たちが今魔物と出会えば終わりだからな」
「ロイ、どうする?町に来たものの僕たち足手まといにならないかな?」
「その心配は大丈夫だ。ピンチな時ほど猫の手も借りたいってね。それよりもまずはカワモリさんを安全な場所に連れていこう」
ロイは背負っているカワモリを見る。
「俺に心当たりがある。そこまで付いてきてくれないか?」
「わかった」
僕は小走りで駆け出すロイの後を追った。
途中、通り道の沿いにある民家を取り囲んでいる数名の人たちに目が行った。
全員が子どもで、そのうちの1人が扉を叩いている様子だった。
「ハル!この先で戦いが起きている!こっちから回り込もう!」
ロイが声を張り上げたことで僕は視線を前に戻した。
その途端、唖然とする。
狂気の沙汰としか思えない光景がそこにはあったからだ。
僕らが通っている大きく開けたメインストリートの先では、そこら中に建つ民家とそう変わらない程の巨大な狼のような魔物が暴れていた。
魔物の周囲はそれに立ち向かう人々が散見される。
近くの建物の上、空を飛び回る者、道の上では多くの人がその手に武器を携えている。
今も続く戦闘の激しさは、倒壊した建物や大量の流れた血の跡で遠くにいる僕にもはっきりと分かる。
目を凝らさなくとも見えてくるのは、血を流しながら魔物から隠れる者、その場に倒れ込んでいる者、巻き込まれて動かなくなった母親に泣きながら寄り添う子どもの姿。
人がその子どもを避難させるための余裕を与えないほどに狼が放つ咆哮は簡単に離れた僕の耳を貫く。
「なんなんだ、これは・・・」
争いのど真ん中に放り込まれたような恐怖に僕は立ちすくんだ。
慈悲を乞えば助かるかもしれないというその甘えた考えを微塵にも感じさせない威圧的な光景。
まさに現実離れした緊迫の状況だった。
「ハル!何をしている!急げ!」
血の混ざる煙の臭いが僕の脳を麻痺させてロイの言葉に反応出来ない。
目の前の有様を呆然と見つめる僕にロイは何度も声を掛けるが、僕は動くことが出来ない。
そして、僕の全身は赤く褐色を帯びて熱を持ち始める。
その理由を知る為に、熱を発する方向にロイは顔を向けると目を見開いた。
巨大な魔物は大きく口を開いて、その口内で火の玉を作り出していたのだ。
小さな太陽を連想するその火の玉は、力が込められているのか少しずつ大きくなっていく。
僕はただ釘付けされたかの様にその火の玉を見ていたが、ロイが僕の腕を引っ張ることでようやくロイに気付くことが出来た。
「ハル!大丈夫か!?」
「あ、ああ、ごめん。もう大丈夫、大丈夫だよ」
「衝撃すぎる状況だけど、こういう時こそしっかりしないとだめだ。ハル、動けるか?」
「うん、動けるよ」
僕が小さく返事をするとロイの強張る表情が緩む。
そして僕たちは再び小走りで駆け出した。
さあここからバトル展開していきます。
(バトル系がこのあとも続くのにそもそも主人公が戦えないってどういうことなの・・・)
ということでタイトル回収を軸に頑張って書きます!
大幅なストーリー修正をしたのでしばらくは遅れていましたが次から気持ち早く投稿出来ると思います。
推理要素を得るために一本道のストーリーじゃなくて分岐式のストーリーにする予定です。
いろんな選択肢がある形にして、もしもあなたが主人公ならどんなストーリー展開にしますかあああ!!!みたいなノリで書けたらと思いますლ(╹◡╹ლ)




