潜在②
ピー!!!!
アラームが校内に響き渡る。
「校内に侵入者発見!排除せよ。侵入者発見!排除せよ。侵入者は2年3組の教室より逃走。侵入者を排除せよ」
「悠介、この声って放送部の陸か?」
「そうだよ。でも月乃が意識している陸だから本物の陸じゃないよ」
「ここって月乃の意識世界のさらに奥にある無意識の世界なんだよな?こんなに深いところにも他人が出てくるのはどうなんだ?」
「どうなんだと聞かれても分からないけど、それだけ月乃に影響を与えてるってことじゃないのか?」
「影響を与えてる、ねえ。だとしたら・・・」
僕たちは階段を下りる。
「はいはい止まって~。侵入者はあなた達だったのね~。悠介くん、竜馬くん。ここでお縄についた方が身の為よ~」
「柚子!咲!百々!・・・やっぱり登場したか」
「ここに月乃もいればいつもの仲良し4人組ってことだね」
「さあどうしますか?おふたりさん。降参でしたらその場で伏しなさい」
「あ!先生~!侵入者はこっちだよ~!」
「竜馬、ここは突っ切れないと思う。2階からあれを使おう」
「わかった!行こう!」
僕たちは降りてきた階段を引き返す。
バン!バン!と音がして、近くの壁や手すりがえぐれる。
振り向くと彼女たちは銃を持っていた。
「銃!?なんで!?」
「構うな悠介!急げ!」
「初めて撃ったけど反動がすごいね~!でもなんだかすごく良いねコレ~!」
「結構ずっしりとしていますね」
「ほら、百々!咲!悠介くん達を追いかけるよ~!」
◇◇◇
ドン!ドン!バコーン!
「さすが竜馬だね」
「く~いいね~!教室の扉を思いっきり蹴っ飛ばすの、一度やってみたかったんだよ。こういうのってあまり機会が無いからな。・・・というか地震の揺れ強くなってきてないか?」
「教室もめちゃくちゃになってる・・・」
「侵入者発見!排除せよ。侵入者発見!排除せよ。1年3組の扉の破壊を確認。侵入者を排除せよ」
「あらら、もう気付かれちゃった。悠介、早く窓から」
突然、教室の天井が大きく崩れ落ちた。
「悠介!?お前がやったのか?」
「違うよ!【投影世界】で介入出来る力はもうほとんど残って無いよ!」
「ということは・・・つまり、そういうことだな」
空いた天井の穴から月乃が飛び降りて来た。
「なんでこうも毎度毎度邪魔をするの?あんたの存在が一番不快なんだよね。ねえ竜馬、あんたから消してあげるわ!」
月乃はナイフ投げた。
紙一重で竜馬は躱す。
「いやいや待て待て!僕は止めただけだろ!やりすぎなのはお前の方だって!」
「うるさいうるさい!黙ってくたばれよこのくそ竜馬!」
月乃はナイフを投げては、また次のナイフを投げる。
「あんたの妨害は今に始まったことじゃないわ!あんたはいつも!いつも!私の邪魔をする!いつも悠介の横で私の邪魔を!してるじゃない!」
ナイフが飛ぶ度に竜馬は机の間を転がりながら避け続けた。
「いやだから!僕は別にお前に何もしてないって言ってるだろ!一体何をしたって言うんだよ!」
「竜馬!耳を貸すな!もう月乃は防衛本能によって僕たちを敵と見なしてる!・・・くそ、どうすればいいんだ」
地震は更に強くなる。
校舎中のガラスは割れ落ち、外では体育館が崩れて大きな轟音が響く。
「このままじゃこっちがやられるぞ!もうどうなっても知らんからな!」
竜馬は近くの机をナイフ除けとして横に構えながら、そのまま月乃に向かって投げた。
「きゃっ!」
「月乃!」
倒れ込む月乃を見て、思わず声が出た。
「おい悠介!どっちの心配をしてるんだよ!」
「ご、ごめん」
「もう許さないよ!いや、もうそれは既に通り越してるわね。・・・これで刺し殺す!」
「なんとまあ、どこからそんな槍を出したんだよ!?」
「問答無用!即刺殺!」
等身程の長さがある槍の一突きを竜馬は机を盾に回避しようとするが、机はいとも簡単に真っ二つになる。
竜馬は咄嗟に割れた机を横に放り投げると、槍も巻き込まれる形で飛んでいき月乃の手から離れた。
「このっ!生意気な!あんたは絶対に殺す!」
「やめろ!くっ!なんて力の強さだ・・・お前ほんとに女か!?悠介!早くこいつをぶっ飛ばせ!」
「ダメなんだ竜馬!いくら無意識の世界でも月乃自身に危害を加えると現実に支障が出てしまうんだ!」
「こんの馬鹿!だからって僕を見捨てる気かおい!?そんなこと言ってるとこっちがやられるだろ!」
取っ組み合う竜馬は力に緩急をつけて上手く月乃のバランスを崩す。
そして、態勢を崩した月乃を廊下に吹っ飛ばした。
「おい悠介!この借りはデカいからな!早く行くぞ!」
「ごめん竜馬」
竜馬は開かなくなった窓枠を押し壊して外を見た。
「おいおい、なんだよこれは・・・」
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