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使える魔法はセーブとロードとリセットです。  作者: ちさめす
小説世界 白城町編
15/45

旅立ちの前日②

サブヒロインの登場です。


でもメインのヒロインはしばらく出ないんよな・・・作り方間違えたかな(☍﹏⁰)

「大丈夫かな・・・女の子が下敷きになってるのよ・・・」


「そこの若いの!これを運ぶの手伝ってくれ」


「俺も手伝います!・・・よいしょっと、この丸木相当重いな」


「あんたも手伝ってくれ!そっちを持ってほしい!」


「え?あ、はい!」


僕は丸木に手を掛ける。


「よっこいせ・・・っ痛!」


(力を入れると傷口がすごく痛む・・・)


「どうした若いの!持てねえのか!?代われ!わしが持ったる!」


みんながテキパキと丸木を退かす作業を僕は見ることしか出来なかった。


◇◇◇


「皆さん、助けて下さってありがとうございました」


「お前さん、本当に大丈夫なのか?足場に使うあんなクソ重い木の下敷きになってたんたぞ」


「はい!私は平気です。ご心配をお掛けしてごめんなさい」


(足場に使ってるこの丸木、嬢ちゃんの華奢な身体じゃ1本でも致命傷なのに・・・幸運に隙間でも出来たんか?)


「そうか?怪我がねえのならいいけど・・・。それにしてもお嬢ちゃん、走る時はちゃんと前を見るんだぞ。大事故にもなりかねんからな」


「気を付けます・・・。それと大工さん、お仕事の邪魔をしてごめんなさい」


「こっちは大丈夫だよお嬢ちゃん!だからそう何度も頭を下げないでくれ」


「あ、ごめんなさい!・・・あの、私、少し急ぎますのでこれで失礼します。大工さん、本当にお仕事の邪魔をしてごめんなさい!」


黄色い髪の子は、ここから抜け出す為に集まっている人々を見渡した。


◇◇◇


「あ!ハル!ロイ!」


「やっぱりイアだったか」


「ハル、大丈夫なの?意識を失ったって聞いたけど、もう外出しても平気なの?」


「あ、えっと・・・」


「イアにもいろいろと説明しないといけないな。・・・とりあえず、場所を移そう」


◇◇◇


デットエンドにて。


「いらっしゃいませ」


「店長!2階を借りるよ。紅茶2つとミルク芋セーキを1つ頼むよ」


◇◇◇


3人は席に着く。


ロイはイアにこれまでのことを説明した。


◇◇◇


「すごく大変だったんだね。今は身体の具合はどう?痛い所はない?」


「今はもう大丈夫だよ。力を入れると傷口は痛むけど、じきに治ると思う」


「それなら良かった・・・でも無理はもうダメだからね。ハルはすぐに強がるんだから、もしも出来ないことがあればちゃんと言うんだよ?」


「わかったよ」


「ハルは今までず~っと無理をしてきたけどね、その度になんだかんだ最後は上手くいく~って言ってたから、だから私はハルが倒れたって聞かされた時、ハルはちゃんと元気になるって思ってたよ。ハルのこと信じてたから」


イアは僕を見て微笑んだ。


「あっいや!」


(この子、もしかしてハルに好意があるのか!?椅子もくっつくぐらいの距離に座るし・・・)


僕は顔を赤くしてしまった。


それを見たロイはなにかを察したようにイアに話を振る。


「ところで、イアはどうして丸木の下敷きになっていたんだ?」


すると、今度はイアが照れるように赤くなった。


◇◇◇


「そ、それはですね・・・」


「ハルは絶対に良くなるって信じてたんだけどね、意識が無いのならせめて傍には居たいなって思ってね、それでハルに会うために白城に行ったの。それで、ハルは外出してるって聞いて、外に出てるなら体調は良くなったのかなって思ったけどね、やっぱりハルのことを見るまでは心配で、その・・・ハルを探すために町中を走り回ってたら広場で焼き芋を配ってる人がいて、美味しそうだなあってよそ見をしてたらぶつかっちゃいました・・・」


「・・・なるほど。イアらしいな」


「その、心配掛けてごめんなさい!」


「謝る程のことじゃないよ」


イアは赤くした顔を隠すようにうつむきながらチラッと僕に視線を移した。


(本当にハルが無事でよかった・・・)


◇◇◇


「それでだイア。悲しい話だけど、今のハルは記憶を失っている。だから、思い出すまでは多分イアとも初対面な感じになっていると思うんだ」


「そうだったね・・・それじゃあ私たちが思い出すお手伝いをしないとね!」


「そうだな。そうだな、そしたらイア、まずは自己紹介をしてあげなよ」


「うん!わかった!」


イアは立ち上がり、僕に身体を向ける。


「私の名前はイアと言います。来月で14歳になります。好きな食べ物は焼き芋とパイナップルです!パンにパイナップルとペースト状にしたお芋を挟んで焼き上げたホットサンドが大好物です。・・・実は今朝もお母様に作ってもらいました。ほんとはね、ハルにも届けてあげようかなって思ってはいたけど、食べちゃいました・・・えへへ。今度またお母様に作ってもらうね!」


「それは美味しそうだな。次は俺の分も頼むよ」


「うん、わかった!ロイの分も合わせて3つ作ってもらうね!」


「食べれる日が待ち遠しいな」


「ふふ、そうだね!」


イアは微笑んだ。


◇◇◇


「自己紹介はこんな感じでいいかな?」


イアは椅子に座る。


「いやいやだめだよ。まだ肝心なことを言ってないだろ?」


「ロイ~だめだよ!それは別に言わなくてもいいよ!」


「ちゃんと説明しておかないとこの先ハルが困ってしまうよ」


「でも!あれはお父様が決めたことだから・・・それにまだ決まったわけじゃないし・・・」


「確かに先の事は分からないけど、現に今はその方向で話が進んでいるだろう?だったらせめて当事者のハルには状況を知っておいてもらった方がいいと思うんだ」


「そうだね・・・話した方がいいね・・・」


イアは深呼吸をして気持ちを落ち着かせようとしたが、表情は先程よりもずっと赤かった。


「ハル、聞いてほしいことがあるの。私はね、その・・・あなたの・・・許嫁なんです」


少しの間、静まり返る。


そして、僕が反応するよりも先にイアが両手で顔を隠した。


「うう、死んじゃうよ・・・」


ロイは笑っていた。


「昔ながらの付き合いだけどさ、イアは本当に素直だよな。分かりやすくて面白いのも良い所だよ、ほんとに」


「うう、ロイのいじわる~!」


「ええっ!?許嫁?許嫁って僕、結婚するの!?」


(僕、そもそも誰とも付き合ったことが無いのに、いきなり結婚するの!?)


「そうだよ、ハル。ハルがイアを嫁さんにするんだ」


楽しそうに話すロイに、イアはもう知らないっ!と首に横に振ったものの、そのせいでもう一度僕と顔を合わせることになってしまい、慌てながら下を向いた。


僕も咄嗟に明後日の方向を見るが、赤くした表情は隠せなかった。


「2人ともいい感じに赤いね」


「ちゃ、茶化すなよロイ!」


「その通りだよ、もう!」


ロイは笑い続けた。


◇◇◇


「ジョークはこれぐらいにしてと、ハルには許嫁になった背景も説明しておかないとな」


「うん、頼むよ」


「早い話が政略結婚だ。イアの父君でもある祭司マリーンは大和十字やまとじゅうじという教団を設立している。そして、大和十字はその信仰においてプロテクトという特殊な力を教団員は授かるんだ。その力をお父上が獲得するために教団員と血縁関係になろうとしているんだ」


「祭司マリーン・・・大広間で父さんの横にいたあの人がイアの父さんか。・・・その、政治とか宗教とかはよく分かんないけど、その為に僕達は結婚するってことか」


「そうだ。内情は俺も深くは知らないが、婚姻の話はハルやイアが生まれる前からあったそうだ」


「なるほど」


(生まれる前から結婚相手が決まってるのか・・・)


ふと、月乃が頭をよぎった。


(・・・だめだめ!こんな考えじゃ竜馬にまた馬鹿にされる!ちゃんと自分で告白するために今ここにいるんだ。・・・ちょっとだけ回りくどいやり方だけど)


「ちなみにプロテクトというのは、そうだな、さっきイアが足場に使う丸木の下敷きになっていただろう?あの時にイアが大怪我をしなかったのは身体を保護してくれるプロテクトの効果なんだ」


「衝撃はあるけど、痛みは和らいでくれるんだよ」


「なるほど。だからあの時、なんともなかったのか」


「簡単に説明するとこんな感じだ」


「だいたいは分かったよ、ありがとう。でもさロイ、許嫁なんて遠回りをせずに、自分で信仰してそのプロテクト?というのを手に入れるのはダメなの?」


「結論からいうとダメみたいだな。政府と領主の間にはいくつかの守るべき規則があるんだ。だから許嫁という形に今はなっている」


「いろいろとルールがあるんだな」


◇◇◇


「私は・・・」


僕はイアを見る。


「ねえ、ハル。私ね、今まで愛情いっぱいに育ててくれたお父様に応えてあげたい気持ちはあるよ。でもね、お父様から許嫁の話を受けた時、私・・・嫌じゃなかったよ」


イアは自身の両手を胸の前で祈る様に握った。


「今のハルは記憶が無くて思い出せないのかもしれないけれど、小さい時からずっと一緒に過ごしたことを私はちゃんと覚えてる。楽しいことも悲しいこともたくさん一緒に経験してね、この思い出が私の宝物なの。私にとって、ハルは特別なの。だから・・・私はハルの気持ちも大切にしたい。きっとハルの記憶は戻ると信じてるから。だからね・・・今は待ってるね」


イアは僕に微笑む。


西窓から入る日の光は彼女を照らしていて、開いた窓からの隙間風でイアの黄色い髪はなびいている。


その姿はまるで女神のようだった。

面白いと思っていただけましたら評価の程よろしくお願いします!

今後ともよろしくお願いします。

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