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デストロイエンジェル  作者: 零時桜
第七章『月下の死闘』
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第七章『月下の死闘』 ‐ Ⅶ

「こうなるのを、待っていたの。あなたが私を斬って弄ぶのを。あなたの、動きが止まるのを」


「……? 何ですかぁ? ヴァリアヴル・ウェポンを握る力もないくせに、どうしてそんな強気なことが――」




 気づいていないのは、ヒトヨだけだ。


 一撃を加えられ、頭に血が昇ってミオリを甚振(いたぶ)ることしか考えていないヒトヨ。


 彼女は、今まさに牙を剥かんとしている存在を認識できていない。


 大きく息を吸い込んだミオリは、最後の力を振り絞るように叫んだ――。




「今だよ、クーちゃん!!」




 文字通りの白い閃光。ようやく力の入った左足を踏み込み、ほぼ同時に生成された一筋の光が突き出され、その先のヒトヨの左胸を、無慈悲に、そして正確に穿つ。


「え――ッ」


 ヒトヨの胸を穿った槍には、彼女の血液が飛散し、絶え間なく真っ赤なそれを注ぎ続ける。槍を操っていた白い光、クレイン。息も絶え絶えといった様子で、目を大きく見開いたヒトヨを、睨むように見据えた。


「詰めが甘いわね、ディカリアの連中も。はぁ……ッ、頭に血が昇っていたのは、あなたの方じゃないかしら、鎌女」


 ずるり、と鮮血に染まるアマトを引き抜く。驚くほど大胆に、ヒトヨの血液が飛び出し、水溜まりを形成している。しかし、ヒトヨが膝を突くことはなかった。人間ならば即死しても可笑しくはない状況で、未だに直立を保っている。


「か、ふッ……! っあ、この、私がぁ……ま、負け……あ、りえませんねぇ、こんな、こんなことぉ……!!」


 心臓を貫かれた影響で、口の端からも血液を流すヒトヨ。大鎌が手から離れ、そのままよろよろと後ろへ後退する。大鎌の柄を掴んでいたミオリの手からも零れ落ち、カランと音を立てながらアスファルトへと転がる。


「はぁッ、さあ、鎌女。白状しなさい。アミナはどこにいるの?」


 瀕死のヒトヨに対し、クレインは警戒を解いていない。アマトを彼女の首元へと突きつけながら、宿敵の情報を聞き出そうとしている。


「……あ、アミナの居場所? うふふッ……教えるはず、ないじゃないですかぁ。教えたところで妹ちゃんが勝てるとも思えませんけどぉ……う、ぐッ……私も、もう助かりそうにもありませんからねぇ……」


 よく見ると、倒されたヒドゥンが消えていくように、ヒトヨの身体が淡い光の粒に包まれている。彼女の武器、コプリンも一緒だ。いつ倒れてもおかしくない状況で、時折血を吐き出しつつも、その不敵な笑みは消えない。


「そのまま死ぬなんて許さない! いいから吐きなさい、アミナは――」


「う、ふふ。復讐に燃える妹ちゃんも素敵ですがぁ、アミナは本当に強いですよぉ? 殺されたくなかったらぁ、大人しく手を引くのが賢い選択だと思いますが、ねぇ……」


 ヒトヨの身体を包む光が、強く、そして眩しくなる。手足の指先が、徐々にさらさらと消えていく。ヒドゥンと全く同じ、彼女はこのまま死んでしまうのだろうか。


「待ちなさい! 何か吐かないと本当に恨むわよ、鎌女!」


「あはッ、必死ですねぇ。でももう終わりです。人間クンの首を奪えなかったのは残念ですがぁ、これも私の運命ということなのでしょうねぇ。大人しく、ここでお別れするとしましょうかぁ。あぁ、そういえば――」


 膝を突き、消えかかっている手も地面にしな垂れ、もはや消えるのを待つだけとなったヒトヨが、今際の際に一言だけ、誰に向けてのものでもない「疑問」を口にする。




「どうして、ササコは妹ちゃんを殺さなかったんですかねぇ? わざわざ足の腱を斬るなんて妙な真似をしなくても、単純に首を斬り落とせばよかったのに。まだ、ルーシャのことを引き摺っているんですかねぇ、ッ、がッ、はぁ……あッ!?」




 ルーシャさんの名を出しクレインがぴくんと反応するのと同時に、ヒトヨはどす黒い血を口から吐き出した。アスファルトが染まる中、血に塗れた彼女は最後に言う。




「はぁッ、残念ながらここまでですかねぇ……ッ、それでは、ごきげんよう。妹ちゃん、次回はぜひ、地獄でお会いしましょうねぇ……!!」




 最期の瞬間。ヒトヨの瞳がゆっくりと閉じられたそのとき、彼女の身体は光の粒となり、消滅した。後には血の一滴すら残っていない。ヒドゥンとまるで同じ最期。




「終わったようね……ディカリアの一員を倒せたはいいけど、結局、アミナの情報は――」


 息も絶え絶えにアマトを元の腕輪へと戻したクレインだったが、そこであることに気づく。


 ――地面に膝を突いたまま、ピクリとも動かないミオリのことだ。


「ミオリっ!」


 僕は思わず駆け寄って、彼女の様子を見ようとした。でも、ヒトヨによって斬り裂かれた傷は深く、素人判断でも簡単には助からないだろう、ということだけは分かった。

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