◆018 大自然での配信
※2021/06/14 プロローグの終わりに【番外編】頂き物とお礼【随時更新】を挿入しました。ブックマークのずれにご注意ください。
「うー、ようやくだ! ようやく水着だぞ!」
「昨日も散々みたじゃないですか……」
「おれが見るのと、視聴者さんに見せびらかすのは別枠なのっ!」
「あまねさんの水着もお披露目ですね」
「()」
「何ですかその顔。……もしかして、自分も見せること忘れてました?」
「()」
「どーも、あまねちゃんねる! 司会のあまねです!」
「進行のる、るルルですっ!」
「議事のクリスだ」
「MCの環です」
「えっと、全部取られよって無職やけど、柚希やよ?」
みんなでカメラに手を振る。
役職もチャンネル名も毎回テキトーな感じのオープニング。
「今日は重大発表があるんですけど、もう雰囲気がちがうの、わかりますか?」
「なんて言うたっちゃ外やけんね!」
そう、おれ達は外、それも見渡す限りの大自然にいた。栃木県某所にある、土御門さんから頂いた別荘である。
七月に入って気温はぐんぐんあがり、後は梅雨明けを待つばかりといった感じのところで、視聴者さんとの約束を守るためにもお約束のあの回をやろうと思ったのだ。ちなみに買い出しは環ちゃん任せ。クリスと柚希ちゃんは一緒に買い物に行って試着までしたらしいけど、おれとルルちゃんはサイズだけ伝えてお留守番だ。
うん、不安感マックス。
でもしょうがないね。環ちゃんと買い物いくと酷い目に遭う気がするもん。
実は三日前からスタンバってたんだけど、曇りや霧という微妙な天気が続いたので延期していたのだ。
そして本日! ようやく晴れたのでついに決行することになったのである!
いや、本当は昨日梅雨明け宣言出たし、何なら葵くんの終業式も終わったんですけど。まぁ逆転の聖杯を手に入れた後、ラナさんに使った後でいじくりまわせば、ワンチャンおれもおとこに戻れるかもしれないもんね!
そうなったら配信もできなくなるだろう。
なので、今日のうちにしっかり視聴者さんとした約束を守り、ついでに異世界の録画配信の告知と、異世界にいっている間に流してもらう用の録画配信を撮影する予定だ。
まぁ、逆転の聖杯を使うのはラナさんだし、その後、色々いじってみて、という感じなのでうまくいくかどうかはわからないけど、可能性は十分にあると思うのだ。
さて、気を取り直して今日の配信だ。
さすがに水着スタートは厳しいので服装は全員お揃いのジャージ。
この日のために買った、水色に白のラインが入ったシンプルなデザインのもので、部活っぽさを出すためにサイズ違いで全員分を揃えた。
ちなみに柚希ちゃんはバスト的な問題でLLサイズ。もちろんだぶだぶなので袖を捲って、ゼッケン付きの白Tシャツは裾を絞って結んでいる。裾を結んだがためにおへそがちらっと見えるのが最高にえっちだ。
正直、誰にも見せたくなかったんだけれどこの後水着になるし今更か、と諦めている。
クリスと環ちゃんはMサイズで、一番高校生っぽい。
ルルちゃんはサイズが無かったのでSサイズにして袖捲り。
おれもSで袖捲りしようと思ったんだけど、
「ダメですっ! それを捲るなんてとんでもない!」
「エッ」
環ちゃんにすごい剣幕で止められた。
おれの袖はレアアイテムか何かですか。
「見てくださいこの萌え袖! 指先だけがジャージからちょこんですよ!? これを映さずして何を映すんですか!? ここだけスクショして待ち受けにするまでありますよ!?」
「えええ」
テンション高いな。
あれか、環ちゃんって遠足でテンション高くなるタイプなのか。
「絶対にリスナーさんも喜びます! 間違いないです!」
「可愛かよ?」
「良い」
「かわいい、です!」
皆も肯定的なのでそのままにしておくか。
あっついけど。あっついけどしょうがないのだ。
下に着ているものの生地が微妙に貼り付いてぺたぺたする気がするけど、まぁしょうがない。
挨拶を終えたおれ達は、配信用に買ったカメラを構える大悟に向かって説明を始める。モニターも持ってきているけれど、接続が面倒なのでなしでも良いか、と結論づけた。ちなみにアーカイブで皆のコメントは読むようにしているが、環ちゃんはリサーチも兼ねて掲示板やら何やらもチェックしているとのこと。
「さて、おれ達は今、偶然もらった別荘に来ています!」
「ええ、もらっちゃいました! あまねさんが可愛すぎるから、石油王から貢ぎ物があったんです!」
「あまねは、可愛い」
「石油王さんなメロメロやったけん仕方なか」
「あまね様、すごいっ、です!」
予定されていた茶番が終わったところで大悟に目配せをする。
梓ちゃんとなんちゃって遠距離になっているからか、大悟の目つきが若干荒んでいる気もするけど、打ち合わせ通りに大悟はカメラを斜め下、おれ達を見上げるように構える。
「そんなわけで、皆さんにも幸せをお裾分けしてあげましょう。ええ、もう予想はつきますね?」
環ちゃんはにっこり笑う。
「こないだの『ゲーム全クリ出来なかった配信』のあとにアンケートで決まった、あまねさんへの罰ゲームです! これは血流改善しますよぉ? それでは、3、2、1、ハイっ」
環ちゃんの煽るような前フリに合わせ、おれは表情を作る。
三日間の待機で散々練習させられた、嘲るような、小馬鹿にしたような笑み。
さぞ生意気そうなおれが映っていることだろう。
そんな顔でカメラを見下すと、大悟の構えるカメラの横、用意しておいた小岩をガッと踏みつける。カメラ視点だと、踏まれているように見えるだろう。
「おじさん、雑魚ーいっ。ざぁこ、ざぁこっ♪」
そのまま足をぐりぐり動かす。
一〇秒ほどそのままの動きを続け、そして辞める。
「……もういいでしょ」
「どうですか? 血流はぎゅんぎゅんですか? それともどびゅどびゅですか?」
環ちゃんがMCをやってくれている間にルルちゃんが飲み物を差し出し、クリスがおでこの辺りに掻いた汗をやさしく拭いてくれる。
皆で日焼け止めを塗りあったこともあり、落ちてしまわないように押さえるような拭き方である。
うむ、くるしゅうない、くるしゅうない。
ちなみにおれがこんなことをやっている理由は一つ。
結局、六月にホラーゲーム配信の後半をやったときに隠し要素を見つけることができず、完全クリアできずにギブアップしたからだ。
罰ゲームの罰ゲームという意味不明なものなんだけども、断ってもどうせ環ちゃんの理論武装には勝てないので諦めた。環ちゃんの狙いに乗るのは癪だけど、おれ自身が恥ずかしいタイプの罰ゲームじゃなかったしね。
いや、これに投票した視聴者さんたちが何を考えているのかわかるだけに、やりたくはなかったけど……!
でもあざとい系の演技で一配信過ごすとかよりずっと良いと思ったんだよ!
選択肢が! 選択肢が全部酷いんだよっ!
「さて、それでは今のあまねさんを観てもまだ血流ドロッドロの不健康マンたちのために朗報です。ルルちゃん!」
「ッ! はいです!」
ルルちゃんはぴょいんと跳ねると、おれ達のグループから外れてカメラの視界から外れるように動く。当然、大悟はそれを追うようにカメラをぐりっと動かす。
その先に映されるのは、
「見てくださいっ! 川遊び、ですっ!!!」
陽光に煌めく沢と、夏の日差しを受けて深緑に影を作る樹木。
まさにアウトドアって感じの光景である。
少し離れたところでルルちゃんが頭に手の平を構えて大きなジャンプをする。
「ぴょんっ! ですっ!!!」
おれたちもルルちゃんの後を追うようにしてゾロゾロと移動。カメラに映り始める。
「ごらんください。うさ獣人のルルちゃんは自然に包まれテンション爆上げです。そして、川遊びと言・え・ば」
しなを作って悪戯っぽい視線をカメラに向ける。
たっぷり溜めを作ったあとに、せーのっ、と掛け声。
「「「「「水着回っ、です!」」」」」
皆でばっとジャージを脱いで、ゼッケンTシャツ姿になる。
「る、ルルからなのです!」
ルルちゃんはピンと手を伸ばしたあとで、Tシャツをがばっと脱ぐ。元々服のサイズが大きかったこともあってすぽんと脱げる。
いそいそとそれをたたむ姿がまたいじらしい。
ルルちゃんが身にまとっているのはホルターネックワンピース。パステルグリーンの生地に白のドットが可愛い水着だ。ちなみに腰の辺りから飾りスカートが伸びていて、パンチラしまくりなワンピースに見えないこともない。
ううっ……余計な事考えたせいでお腹減ってきた。
こうならないようにこの三日間は朝・昼・夜と水着を着てもらってもりもり魔力を充填してたんだけどなぁ。
そのままくるんと一回転すると、にっこり笑うルルちゃんにほっこりする。
うん、邪なことを考えるのは良くない。
ルルちゃんは無垢。無垢ですからね。
続いて環ちゃん。
企画の時点ではまだ加入していなかったこともあって色もデザインも勝手に決めた、とのことで黒のタンキニだ。黒といっても白の縁取りがされていて、生地の方にも少しだけ白の直線で幾何学模様が描かれているので地味な感じはしない。
ちなみに今日はウィッグはなし。
髪色がプリンになってきたこともあってしっかり黒染めをしたので、ベリーショートでタンキニという如何にも『スポーツやってます』みたいな雰囲気になっている。
にっこり笑うと、
「私のイメージカラーはきっと純白だと思うんですけど、敢えて黒にしてみました」
本気なのかツッコミ待ちなのか分からない発言をしてくるっと回った。天真爛漫というか、ある意味素直だし純白も似合いそうではある。まぁきっとイメージカラーは黒になるだろうけど。
そしてその次はおれだ。
ざぱっと服を脱いで仁王立ち。
変に意識すると恥ずかしくなるということが待機中の三日間で分かったので、とにかく堂々と胸を張る。
水着は視聴者さんの投票で圧倒的多数だった薄桃色のスクール水着。
胸元には大きく『あまね』と書かれたゼッケンが取り付けられているけれど、おれの胸のせいでぐにゃっと歪んでいる。
何を隠そうこの水着、サイズが微妙に小さいのである。
「ごめんなさい! ぴったりなサイズが見当たらなくて!」
すっごく良い笑顔でこれを差し出してきた環ちゃんは夜にしっかり反省させたけれど、環ちゃんのズルいところはきちんと着られるのに胸だけがちょっと苦しい、という絶妙なチョイスをしてくるところである。
結局、「リスナーさんのスパチャで買ってるんですよ!?」という環ちゃんの説得に負けて買い直しはしないことになってしまった。
下着じゃないから恥ずかしくないもん、って奴だ。言わないけど。
絶対に言わないけど!
「ほら! 希望通りにぴんくのスク水だぞ! これで満足か!」
堂々と言い切ると皆と同じく、くるっと一回転して戻る。
若干ヤケクソなので口調は荒いけれど、気にしない。
さて、一仕事終えて次に前へと歩を進めるのはクリスだ。クリスはいつも通り、見つめられるとゾクッとするような瞳でまっすぐにカメラを見据えるとポーズを取る。
「《換装》」
キーワードに腕輪が反応して魔力が弾けたかと思うと、ジャージ姿からロングパレオのついたビキニ姿へとスタイルチェンジした。この日のために、腕輪に登録しておいた装備を水着へと変えたらしい。
ワインレッドの上下はシンプルなデザイン。パレオは脇で結ぶタイプのもので、これだけが赤とオレンジのグラデーションになっている。
びしっとかっこいいポーズのクリスはくるりと回って戻ってくる。
おれがこくりと頷けば、クリスはおれにだけ分かるくらいの薄い微笑みを返してくれた。
最後になったのは柚希ちゃんだ。
いや、だってしょうがないじゃん。柚希ちゃんのあとだとせっかくのかわいい水着が霞んでしまうもの。
「やっとウチの番やね!」
タタッとカメラ前に躍り出た柚希ちゃんはそのままTシャツ、ジャージを脱いでいく。
Tシャツを脱ぐ時に質量兵器がばるんっと揺れる。
震度5弱! 体感だけど5弱だと思います! おれの理性は震度7の被害受けてるけどね!
「あー、暑かったばい。早う水遊びしたかー」
ふぅ、と息を吐くとしっかり背筋を伸ばして一回転。夏の日差しを受けた立派なメロンが二つ、回転に合わせてもにゅっと動いた気がする。
物理学……勉強しようかな……!
柚希ちゃんが着ているのは黄色のビキニ。胸の方は首の後ろで結んでホルターネックになるタイプで、下に至っては両サイドが紐っぽくなっている。こないだ、夜に着てもらったときに確かめたら解けない感じのファッション結び目だったけれど、夢と希望が詰まったデザインなのは間違いない。
全員が並んだところでカメラがおれ達を改めて映す。代表して喋るのはおれだ。
「四月の企画では水着を選んでくれてありがとう! 頑張って選んだから喜んでもらえると嬉しいです!」
おれのとルルちゃんのは選んだの環ちゃんだけど、熱意で言えばおれよりずっと上なので嘘は吐いていない。
「そ・し・て! 今日はサプライズゲストが来ております!」
カメラが今まで敢えて映さないようにしていた人の方を向く。
そして、おれはサプライズゲストの名前をコールした。
「ゲスト、ね」
「さーて、誰でしょうねー?」
「いやもう一人しかいなくない? 大悟が不機嫌ってことは梓ちゃんじゃないし、あ――」
「ネタバレするんな良くなかて思う」
「どせいろんぱんち、です!」
***
「2021、0615、ついき、です?」
「ルルちゃん、変な電波受信しちゃ駄目だよ」
「はいです!」
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