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義兄弟

「逝ったか」


大犬の死体を見ながらルキウスは言う。


(あの誇り高き悪魔の犬が、 まるで操られているようであった。

普段であれば誰にも屈しない魔獣だ。

そんな猛犬が誰かに操られるなんてことがあんのか?)


「おい! ルキウス」


親父がこちらに近づいてくる。

額を少し切ったようだが、そこまで大きな怪我は見当たらない。


「大丈夫か?

どこか怪我はねぇのか?」


「ああ、 無理やり体を突き破ったからな。

体のあちこちが骨に当たっていてー」


「そうか、 後で打ち身の薬をくれてやる。

ではさっさと帰るぞ」


「おう!」


俺にしてはよく働いた方だろう。

まぁ、あいつもよくやる魔獣だった。


「よう、生きてたか」


「死んだ方が良かったか。 ゼルデアス」


「いや、生きていてよかったぜ。

俺と競える奴がいなくなったらこっちも困るからな」


「それはこっちのセリフだ」


お互い笑い合い、拳を合わせる。

同じライバルとして、友人としてこれからもあろうと・・・


「よし。

お前ら帰るぞ。 俺は雇い主に報酬をもらいに行く」


予定と違って多く戦っちまったからな。

報酬も多くもらわなきゃいけなくなるだろうな。

そうして俺たち傭兵団は陣へと帰還しようとする。


だが、焼け焦げた森の中から多くのカラスが飛び立ったので振り返った。

鳥が一斉に飛び立つのは、何か危険があるときだからである。


「なにか居るな」


「ああ」


ゼルデアスとルキウスは一緒に振り返り、森から出てくるであろう者に戦闘態勢をとって待ち構える。

他の仲間も気づいたようだ。


「まったく次から次へと」


森の奥から禍々しい魔力を感じる。

今まで感じたことのない魔力量だ。

もしかしたら先程より苦戦するかもしれない。


「おや、

悪魔の犬どころか、泥まで殺しましたか。

それは予想外でしたね」


現れた男は黒いマントを羽織る貴族のような男だった。


「何者だ!てめぇ」


男はゆっくりとこちらを見る。


「この犬を殺したのはあなたですか?

……ふむ……あなたですね。

血だらけだし……」


男は首を傾げ無表情で話す。


「でも私もまさか殺すとは思いませんでしたね。

呪いのことは知っていたんですか?」


「まぁ、知ってたよ。

ここじゃあ、あいつは有名だしな」


「知っていて殺したと?」


「ああ」


「あぁ、 君は辛い道を選んだんですね。

君のした選択は決して楽なものではありませんよ。

普通に死ぬことは叶わない。

惨たらしい死を迎えるかもしれない。

それでも後悔は無いと?」


「俺は仲間を守るために殺しただけだ。

てめぇが放った犬からな!」


男はどこか嬉しそうに俯く。


「そうですか……」


男はしばらく黙っていた。

俺にかなり興味があるように見える。


「君の名前をお教え願いたい」


「ルキウスだ」


「ルキウス……いい名だ」


男はその美しい顔にうっすらと笑みを浮かべてこちらを見る。


「私には君の数奇な運命が見える。

どうやら君は生まれた時から定められた運命なようだね」


男はおかしなことを言う。

確かに俺は特別だと親父にも皆にも言われてきた。

だが、自分自身はそんなこと思ったことは無い。


「これから君の次の世代に、 大きな影響を残すだろう」


そう言って男は去ろうとする。


「ちょっ、 おいおいおい!

俺に名乗らせておいててめぇは名乗らねぇのか!?」


男はニッコリと笑顔を見せながら振り返る。


「これは失礼。

私の名はイルゲルト・オルタナス。

また会おうね。 ルキウス」


そう言ってイルゲルトと名乗るその男は焼け焦げた森の中に消えていった。


「何だったんだ? あいつ」


「別に敵意は無かったな」


俺とゼルデアスは訳が分からず首を傾げる。

すると親父が近づいて俺たちの肩に手をやる。


「よし!

さっさと帰るぞ。 母さんたちも心配してる」


「ん? あっ、 ああ」


「わかったよ。 ボス」


空も暗くなってきたため、俺たちは自軍の陣地へ戻った。


──

兵士たちは宴をして騒いでいた。

今親父は俺たち傭兵への報酬上乗せの交渉をしている最中である。

そんな中、俺は氷の張った湖で釣りをしていた。

空にはオーロラが出ており、そんな美しい風景を眺めながらする釣りは格別だった。


「呪いか……」


俺は夕方に会ったイルゲルトという男の言った言葉が頭から離れなかった。

別に死ぬことに関しては問題ない。

だが俺が引っかかるのは、数奇な運命という部分だ。

俺はこの傭兵団を出るつもりは毛頭ない。

だからこれといってやることは変わらねぇんだ。

何も心配はいらねぇ……


「なに辛気臭い顔してんだよ!」


「ゼルデアスか」


「おおよ!」


酔っているのか少しだけテンションが高い。

つーかさっきまで寝てなかったか?


「やっぱり呪いのことを気にしてんのか? ありゃ迷信だろ」


「そうだな。

まっ! 別に俺は気にしちゃいねぇ!!」


「えっ。

気にしてそうな寂しい背中だったけどな」


「あぁ!!

それ以上言うんだったらお前とて許さねぇ!!」


「ふっ、 そうか」


ゼルデアスは少し悲しそうに笑う。


「なぁ、 ルキウス」


「あっ! なんだ!」


「俺たちはこれから離れ離れになることになるが……

これからも親友でいよう」


「なに言ってやがる。 当たり前だろうが!!」


「そうか……

実はな! ここにかっぱらっていった酒があんだ! 一緒に飲もうぜ!!」


「あー、 じゃあよ! この酒で義兄弟の盃を交わそう!!」


「いいなぁそれ!!」


そう言って二つの盃に酒を注ぐ。


「ではこれから俺たちは義兄弟として生きよう!!」


「おう!!」


一気に酒を飲み干す。

一生涯で、これほどの美酒を飲んだことは無いだろう。

俺は絶対にこの味を忘れない。


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