#7地獄へ
死後の世界はどんな所なのだろう、雲の上にありふわふわとしていて、空飛ぶ乗り物を乗り、物語のようなお城に神様が住んでるのだろうか。
そんな事を考えていた時が私にもあったかもしれない。
私は今、一見ヴィッツのような普通の乗用車に乗り、日本橋の様なビル街の普通の道路を走っていた。残念な事だがこれが死後の世界である。
もはや落胆することもない、むしろやっぱりかと思ってしまうくらいあの世は現実的だ。
街には普通の人間のような者達が歩き、どこか仕事に追われている様に見える。
この光景を眺めていれば今私が置かれている状況もそんなに大したことにはならないじゃないかと思えてくる。
この普通のビジネス街の様な街から
私は今「地獄」に向かっている。
「ああもう!わかったわよ‼︎こうなったら地獄でも何でも行ってやるわよ!」
肉体選択でも自分のポイントでの選択肢に幻滅した私はキレ気味に、いや完全にキレながらそう啖呵を切ってしまい、その結果、私は生前の自分のやってきた悪行を償い減点を減らし自分のポイントを上げるということになった。
初めに自分が産まれる家や肉体を選べると聞いた時はなんて自由で良いシステムなんだと思ったけどどうやら私にはその自由はなかったみたいだ。
確か私の好きだった小説に書いてあった、何で人にお金が必要なのか、お金は使うためだけにあるんじゃない、お金を持つだけで人生に選択肢が増える。
使っても使わなくても持っているという事が人に自由を与える、だからお金が必要なんだって
結局、自由に見えて本当に自由なのは極一部の人達で大抵の人はそもそもそんなに選択肢が無くて、その自由は運とか神様がくれる物ではないって事なんだろう
「神谷さん」
後部座席に座る私に来栖が運転席から電話を片手に話しかけてくる。
運転席から後ろ向きに話して、どうやらあの世は完全自動運転らしい。
死後の世界なのか未来の世界なのかわからくなってきたわ
「肉体はあれですが物件の方でかなりいい所がありました、DVとかネグレクトとかそういう家庭内不和が全くありません」
わかってる、わかってはいるけど神様の気まぐれを期待してしまう。
「ただ田舎でド貧乏みたいですが」
「じゃかぁしいわ‼︎さっさと地獄に行きなさいよ‼︎」
ビジネス街から車で1時間半で私は川沿いに連れてこられた。
来栖が言っていたこの川は三途の川、そしてここは「賽の河原」
学のない私でも知ってる、ここは親よりも早死にした子供がここで石を積み、積み上げところで鬼が現れ積み上げた石を崩す。有名な話だ。
舌を抜かれたりしないことに対して少し安堵するもこの無駄な作業に私は耐えれるだろうか
「そういえば神谷さん、エクセルとか使えます?」
「は?」