#4採点
どこかの偉い学者さんが言っていた
「人生とは自転車のようなものだ。倒れないようにするには走らなければならない」
私の人生はまさにこれだ、前しか見ず、必死に走ってきた。
20数年間生きて現状に満足したことなんて一度もなかった。
「もっと、もっと私は幸せになるべきだ」常にそう思ってきた。
ひどく自分勝手に、そして全力で。
学者さんの言葉になぞるなら
私は自転車で立ち漕ぎしてきた人生だった。
そしてその人生は今、目の前の男。
座ってるから正確にはわからないけど、多分身長はヒールを履いた私と同じくらいで170数センチで痩せ型、なんとなく星野源に似ている、この男に
「私の人生は5点」と言い渡された。
不服以外の何物でもない。
「申し遅れました」星野源似の男が沈黙を破る
「私、冥界役所人間課輪廻転生係の来栖〈くるす〉と申します」
「は?」つらつらと名乗る男に私は全くついていけなかった。
「もうわかっていると思いますが、ここは人間からすると死後の世界です。そして私たちは死後のご案内をさせて頂いています、冥界役所の者です」
「めいかい役所…?」なんとなく理解はした、でもわからない事が多すぎて混乱してしまった。
「はい、私は来栖〈くるす〉と申します」混乱する私に再びゆっくりと名乗るの来栖
なんと言えばいいのか、つまりこの男は死んだ私の死後の世界の案内役らしい。
「それでは神谷さん、先ほどの採点に関して説明させて頂きます」
「え、あ、そうよ、なによ⁉5点て‼︎」来栖とこの世界のインパクトですっかり飛んでしまっていたが、そうだこの来栖という男は私の人生を5点と切り捨てたんだ
「はい、あなたの人生は5点です」来栖が屈託のない微笑みで繰り返す、どうやらこいつは私に喧嘩を売ってるらしい。
「この採点は神谷さんの人生の行為を日本的倫理観を基に善悪を採点しました」
「善悪…?」
「簡単に言えば善い事をすれば加点し、悪いことすれば減点します。そこに信仰している宗教などあれば加味して採点します」
「ご理解いただけましたか?」来栖が私に問いかける
私だって馬鹿じゃない、いや馬鹿げた事はしてきたけど
「じゃあ私の5点って低くないですか?」
やはり私は納得してなかった。
「私だって善い事だってしてるわよ、中学の時だって友達を助けたし、モデル仲間だって助け…」
「島根朋子さんと三島美優紀さんの件ですね」私の話を遮る来栖。
「島根さんが当時付き合ってた交際相手に浮気され挙句振られた時」
「そうそう、その時私は朋子を慰めたし」
「その交際相手を海に流しましたね」
「 」…そうだった、その時私は朋子の仇を取るべくその男を縛りイカダに乗せて沖に流したのだ
「幸い二時間後には無事に浜辺に戻ってきましたが一歩間違えれば死んでいたかもしれませんよ」
ぐうの音も出ない。昔の私はぶっ飛んでた
「三島さんは当時交際していたホストが三島さんから借りた500万を返さずに蒸発」
思い出した、私はそのホストを見つけ出し
「ホストを見つけたあなたは、殴り彼は鼻の骨を折った、そのほかにも軽犯罪に引っかかる案件がちらほらと」
私がぶっ飛んでたのは昔に限った話じゃなかったみたい。
その後もつらつらとなぜ私の人生が5点なのか説明する来栖。
私はすでに飽きていた。
懇切丁寧に私に私の過去の悪行を説明したのち来栖は私に思いもよらない事を問いかけた。
「希望なら直ぐに転生できますがどうなされますか?」
「え」できるの⁉
「転生します‼︎」私は即答した。
「かしこまりました。では少々お待ち下さい」
そう言うと部屋を出る来栖
地獄に落とされるかと思ったけど即転生できるならさほど悪くはないのかもしれない。
そう思っているとすぐに戻ってきた来栖はいくつかの書類を持ってきた
「プラス5だとあまりレベルの高い物件はないのですが」そう言うと持ってる書類を渡す来栖
その書類には、家の間取りから家主の家族構成、年収まで書いてあった。
こんな感じで転生するのか、まるで不動産屋で賃貸物件を見てるみたいだ。正直結構楽しい。
「何か気になる物件ありましたか?」
「えっと…どうでしょう」いかにも不動産屋での会話の様な事話す
そんな時私は来栖の言葉にさらに胸を躍らせた
「書類じゃわからなければ内見されますか?」
もはや完全に不動産屋だ。