#3特別
「カフェもない!カラオケもない!おまけに職もない!あたしはこんな島嫌だあー!!!」もはやお馴染みの浜辺で少女が叫ぶ。
この日は忘れるわけがない。島を出る前日の夜、言うなれば決意の夜だ。
「島を捨てた事に何も罪悪感などはありませんか?」
また誰かが私に問う。
見渡しても誰もいない、いるのは私と私だけ。
「捨てた?そんなつもりはないわよ」
どこの誰かもわからないけれど、言われっぱなしはムカつくから答えてやった。
何なのだろうこの声は天の声なのだろか、走馬灯にはそういう問いかけサービスがあるらしい。
私が答えると場面が変わった。
ここは東京の上野から少し外れた所にある住宅街。雨が降り、日も登り始めてる。
キーン!バサッ!!1人の新聞配達員が新聞をブチまけながら豪快に転ける。
馬鹿なやつだ、雨に日にマンホールの上でブレーキかけるとそうなるくらい気付け
ああ、その通りこのドジっ子は私、東京に来て、住む所もお金をなかったか私はアルバイトを探したが酷いものだ、住居がが無ければ働かせないくせに働いてなきゃ住居を貸してくれない。そこで私は住み込みの職場を探し、新聞配達にたどり着いた。
「何故そこまでして東京に居たかったんですか?」天の声が私に問う。
「…私は特別な人間になりたかった」ためらいながら私は答えた
馬鹿みたいな答えだ、でもこれがきっと私を突き動かしたんだと思う。この後私はお金を貯め、安い賃貸のアパートを借り、スカウトされてモデルになった。
場面が変わる
どこかカフェで私が誰かと話している。
話してるのはのちに私にこっぴどく振られる私のビジネスパートナー。
不思議なものだけど、子供の頃のと比べればこの時など相当最近で、憶えていてもいいようなものだけど、全く記憶にない。
わかるのはきっとこの男と話してるのは私がファッションブランドの立ち上げる事についての話だろう。
モデルになった私は自分に特別感を抱けなくなった。
もともと自分の容姿には自信があったがキレイな花も花屋の片隅に置かれれば華やかさも薄れてしまう、まだ新聞屋でちやほやされてた時の方が特別感があった。
これじゃダメだ、もっと特別に、そう私が私を突き動かしファッションブランドの立ち上げに至った。
モデルのファッションブランドなんてさほど珍しくもないけど、私はこれで荒稼ぎし特別な人間になってやると本気で思っていた。
相変わらず短絡的かつ楽天的だ。
そう天の声に話してやると走馬灯は場面を変えた。
「悪気はなかったんだ!許してくれ!」
私の前で哀れに男が地面に頭を押し付けている、男はさっきまでカフェで当時の私と自信満々に私とブランド立ち上げについて話してた男であり、この時すでに不幸にも恋人だったクソ野郎、いや詐欺野郎。
こいつは自分の事業を早々に潰すとブランド立ち上げを考えてた私にやった事もないくせに何度もブランドを立ち上げ成功した事があると持ち掛けた。
実質素人の私達の事業は早々に傾き始めた。
荒稼ぎを目論み事業経営の勉強をしていた私はこの男の違和感に気付き、クビと絶縁を言い渡した。
そのあと私はもう勉強し、事業立て直しを図り、結果が出て来始めてた時に事故にあった。
死んで思う事もある、島に戻っていれば、この時男を許して共にやって行けば、もっと違う事も出来たのかもしれない。
でも後悔も反省もしてない。
私にはできる事しかできない、これはモデルになった当初から気付いてた。
でも特別にはなりたかった、だから勉強し、挑戦した。できる事しかできないでも、できるかもしれない。
そう自分に言い聞かせて。
「あなたは自分の人生をどう思いますか?」天の声が私に問う。
「特別にはなれなかったけど、退屈しない人生で良かったわ」私は心からそう思う。
そして走馬灯が終わった。
気がつけば私は会議室のような部屋にいた。
そこには私と1人のしらない男。
「神谷明代さん」男が私の名前を呼ぶ
「はい」とっさに反応する私
動揺した、その声は天の声だった。じゃあこの男は…天?いや神様か
神様は重い口を開き人間にこう述べる。
「神谷明代さん、あなたの人生は、5点です」
おーまいがー