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最強の所以2

 魔物達は、斬っても斬ってもきりが無いようだった。斬り捨てる度に、新たな魔物が現れる。

 目的の男は、遥かに遠い。


 だが……………


「砂塵昇風波!」


 魔力を溜め込んだフレニムの攻撃により巻き上げられた砂が、一度に数十体の魔物の身体を貫く。砂の一粒一粒が鋭い礫と化し、魔物をたちまちの内に削っていくのだった。


 魔剣士を叩かねば埒が明かない。

 セスは周りの魔物を倒すと、大型の魔物めがけて走った。そいつがセスを捕まえようとする手を切断し、両脚も斬ればバランスを崩して倒れた身体に飛び乗る。小さな魔物達が下敷きになって、セスの周囲に空間ができた。


「そこで、待ってろ! 」


 橋代わりにした魔物の上を駆け、同じ場所から微動だにしない魔剣士の元へと間合いを一気に詰める。跳躍力のあるキメラが行く手を塞ぐのを薙ぎ払うと、脚を止めることなく剣を振りかぶった。


「カザルフィス!」


 こちらを目で追い表情も変えずに男が剣を突き出すのを、刀身に添うようにセスがフレニムを滑らす。ギギッと二つの刃が擦れた音を出したのは僅かな間。着地と共に次撃を繰り出したフレニムをヘゼルスタが上半身を仰け反らせて避けた。


「ちっ!」


 舌打ちしたセスは、追い付いて後ろから攻撃してくる魔物をかわすと、尚もヘゼルスタへと向かっていった。剣を受け止めて、こちらを見る硝子のような黒い瞳。その奥にある感情が一体何なのかは伝わってこない。


 いや、感情があるとするならば魔剣の方か。骸を操る魔剣カザルフィムが本体なら、ヘゼルスタを斬ってもダメだ。魔剣を破壊しなければ。


 まずは使い手と離さなければならない。


 しつこく自分を狙ってくる魔物を目もくれずに斬り伏せると、セスはフレニムへと魔力を渡して叫んだ。


「炎塵風斬華!」


 呼応したフレニムが炎を伴う砂塵を巻き上げ、ヘゼルスタへと放った。

 するとボッと火が上がり彼の全身を赤い火が包み、砂塵が更に肉体を削っていく。


 やったか?


 動きを止めたヘゼルスタの手首へ、セスは刃を振り下ろそうとした。魔剣を握る手を切断すれば……………


 刃が皮膚に食い込む直前だった。

 ふいにヘゼルスタが動いた。手を開き魔剣を左手に持ち替えたヘゼルスタが、セスの腕を斬った。


「くっ、ああ!」


 体制を立て直そうとしたセスの脚に魔物が噛み付き、鋭い痛みが走った。そこに隙が生まれ、痛みの反射で前へと屈みそうになった彼の肩へとヘゼルスタの剣が刺さった。


「が、は」


 大型の魔物の手が、よろめいたセスの身体を掴み上げた。

 痛みで気が遠退き、セスは自分が魔物の手に捕らえられていても動くことができなかった。


「う…………うう」


 霞む視界に、こちらを平然と見上げる黒の魔剣士が映り、セスはあっけない幕切れに呆然としていた。


 ここまで、なのか?


 自分を掴む魔物が大きな口を開ける。その醜悪な赤黒い舌先に、自分の脚や肩から流れる血が滴るのを他人事のように虚ろに眺めていたら、諦めが心を支配していった。


 何のために戦っていたのか?


 懸命に戦っていた自分が滑稽に思えてきて、セスは身体の力を抜いた。

 だが、さっきからずっと何かが騒がしい。


 キイイイと高音が鼓膜を震わせていて、音の出所を辿れば自分の手元だと気付いた。


「あ、あ………、フレニ、ム」


 力の抜けた手から外れたフレニムは、魔物の拳の中にセスと共にあった。指先に触れる彼女にセスは我に帰ると歯を食い縛った。


「く……………」


 必死に手を伸ばすと、鳴いているフレニムの刃に届いた。ギュッとフレニムの刀身を握れば刃は熱く、その鋭さは彼の指を斬り新たな血を流させた。構うことなくセスは彼女をしっかりと掴んでいた。


 そして魔物の手が開かれて、その口へと落とされる瞬間。


 セスは彼女を、残る全ての力で遠くへと放り投げた。




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