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最強の所以

 もしかしたら相手も怖がっているのか?


 魔剣カザルフィムを手に、こちらをじっと見据える男にセスはそんなことを考えた。


 男が現れないのではとセスは少しだけ疑っていたから、待っていたということに内心驚きもあったのだ。

 姿をなかなか現さなかった男が、フレニアに応えた形でいることに、魔物に取り込まれたはずの魔法使いの意思が残っているような気がした。


 もしそうなら、彼女に執着しながらも避けるようにしていた行動の意味も解る。戦って彼女を傷付けることを恐れているのではないか。その反面、彼女に自分を止めて欲しくて現れることを繰り返していたとしたら。


 ギュッと強く手を握られ、セスはフレニアを見下ろした。


「セス!」


 碧緑の瞳には強い意思が浮かんでいて、セスは頷くと彼女の手を握り返した。


 仮にカザルフィスがそうだとしたら尚更だ。魔法使いの命と100年の因縁、フレニアの止まったままの時、その全てを断ち切る為に自分達にできることは戦うことだけだ。


 ヘゼルスタが、刃を地に突き刺す。


 すると、地が膨張して突き破るかの如く一斉に魔物が出現して立ちはだかった。大小様々な魔物達が、数え切れないほどに溢れ、それらがセスだけを目指して跳びかかってきた。


「フレニム!」


 セスに呼応して、繋いでいた手の中にはフレニムの柄が収まり、美しい紅の輝きが彼の周りを彩った。


 魔物達の後ろに黒の魔剣士が佇んだままなのを見て、セスは手に馴染ませるようにフレニムをヒュンと一振りすると、自ら魔物に向かって歩いた。


 高揚感で笑むことはない。体内の血と魔力が全身を激しく駆け巡るのを感じながら、唇を引き結んだセスは、魔物達の遥か後ろの男を見ていた。


 長い戦いになるだろう。

 振り上げた魔剣で、二体を斬り捨てる。


 不思議と恐怖は無かった。剣戟の速さとは裏腹に、心は波打たず静かだった。今なら死を目前にしても怖くはないだろう。

 自分は一人じゃない、一緒に戦ってくれる人がいる。


 自分の魔力が手から魔剣へと伝わり輝く様子を、セスはどこか恍惚として感じていた。常に彼女の気配がそこにあることに、セスは満ち足りた気分だった。


『ねえ、どうして魔剣フレニムが最強だと言われているか教えようか?』


 いつだったか、宵闇の中で微睡みながらフレニアが話してくれたことを思い出す。


『魔剣フレニムは、岩をも鋼鉄をも斬り刃ころび一つしない強度を誇る剣なの。それに持ち主が例え幾人変わろうが、剣自身は絶対に滅びない不変不滅の剣。だから最強』


 いつから言われ始めたのか忘れたけれど、フレニムを所有していた骨董商のセールストークだったと、彼女は打ち明けたのだった。


 あながち嘘ではない。魔剣にとって使い手との相性が強さを決めるのだから。だから今自分を選び、彼女が『最強』を誇るならば、今カザルフィスを倒さねばならない。次の使い手を選ぶことを彼女は当分しないと思うから。


 ただもし叶わなくても、彼女が不滅の剣ならば………………自分のいない時代を越えていける。


 だから、怖くはなかった。






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