表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50/56

停滞する生からの脱却2

 また陽が昇り、魔物からの破壊を免れた家々が薄闇から浮かび上がり始めた頃、セスとフレニアはベガラナティエの門にいた。

 人目を避けて早くに出立しようと思ったのだ。


 フレニアは立ち止まり、しばらく街を眺めていた。セスは急かすことはせずに待っていた。


 ネリ親子には出立することを伝えたが、名残惜しげに見送ってくれた。できることはないかとも聞かれたが、二人は断ると「また来ます」とだけ告げたのだ。


 乾いた風を孕んで踊る銀髪を押さえ、街から背を向けた彼女は門へと歩く。その隣をセスは歩いた。


「また来たらいい」

「うん。セス………………連れてきてくれて、ありがとう」


 そっと微笑むフレニアを目にして、セスも口元に笑みを作った。

 北を目指して歩くが、目的地は分からない。だが確かにカザルフィスは北を指した。


「本当に待っていると思うか?」


 馬に乗る気にはなれなかったのは、歩きたかったからだ。どんな結果にせよ、この仇を探す旅は終わりだと二人は信じている。そう思えば、歩を進め他愛なく会話をする時間さえ大切に感じる。


「ええ、あの人も本当は終わりたいのだと思うから」

「追い掛けても逃げ回っていたように思えたけどな」

「………………それも彼の意思かもしれない。終わりたいけど終わりたくない。でも今回は私達………いえ私が終わろうって告げたから、多分待っていると思う」


 カザルフィスに対する想いは、セスよりもフレニアの方が複雑なのだろう。言葉の節々に憎しみだけじゃない感情が見え隠れしていて、そこに100年分の時間の遠さが境界のようにあるようだった。


「魔物に心なんか乗っ取られているはずだろう?自分の意思があるとは思えない」


 どこまでも砂の道なき道が続く。辺りには、まだ若い椰子の木が点在していて、低い草花が少しだけ砂を隠す。きっと根の強い種類なのだろう。


「私、人間だったあの人が最後に泣いているのを見たわ。もしかしたら魔剣になったのだって……………」


 言い掛けてフレニアは思い返したように首を振った。


「そんなこと今更ね。彼は国を滅ぼし、民や父や兄達やエレノア、たくさんの人を殺した仇。私が終わらせる相手……………」

「フレニア?」


 脚を止めたフレニアは辺りを見回して「ああ、そうなのね」と呟いた。


「あの人が、どこにいるか分かった。草木が生えて気が付かなかったけれど、この先に私が魔剣になった場所があるわ」

「分かるのか?」

「兄上や私自身が魔法を使った痕跡が僅かに残っている。私が魔力を糧にする魔剣だから分かるわ」

「……………………」


 セスは彼女の手を握ると、手を繋いだまま再び歩き出した。木々が他よりも密集している所があり、片手で下がって視界を塞ぐ大きな葉を上げながら進んだ。


「フレニア。これは独り言だと思って欲しいんだが、俺を使い手に選んでくれて感謝しているよ」

「………………セス、私と一緒に戦ってくれてありがとう」


 フレニアがセスの腕に額を擦り付けながら応え、直ぐに離れた。


 密集した草木を抜けた所は、緑に隠されていたように何もない平坦な砂地があった。

 そこには確かに黒の剣士が、じっと佇んで二人を待っていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ