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停滞する生からの脱却

 いかにも慣れていない唇が、加減も分からずにセスの唇に押し付けられる。必死という感じでキスという甘さのある雰囲気ではなかったが、セスはそれでも久し振りな感覚にしばし動けなかった。


「ふ、フレ、んうっ」


 彼女の肩を掴むが、引き剥がしたいのか引き寄せたいのか自分でも分からなくなってきた。恥ずかしいのだろう、フレニアはセスに喋る機会を与えないように懸命に唇を寄せ続ける。息継ぎが難しいのか次第に乱れる呼吸が、セスの耳にどうしても届いて動悸が激しくなってきた。

 そうしていたら彼女の体を隠していた布団がスルリと落ちていき、白い肌や露な丸みに、目を見開いたセスの理性も落ちていく。


 こんな美女が初々しくも一生懸命に誘ってきて何もしないなんて、男じゃないだろ?


 両手で彼女の頬に触れると、ようやく唇を離したフレニアと目が合った。


「あ……………」


 ふるふると羞恥で体を震わせながらも、彼女はセスから目を逸らさなかった。

 今度はこちらから引き寄せて、ゆっくりと唇を合わせる。ごく軽く触れ合わせて、目を閉じているフレニアの頬に額にキスを落とす。


 そして彼女の肩を押して身を起こし、布団を被せた。


「……………え?」


 ベッドの上に座った状態で、フレニアは目を瞬いた。


「なぜ今、なんだ?どうしてこんなことをしようと思ったんだ?」


 ベッドの縁に座り、彼女に背を見せる形でセスは問うた。


「わ、私に興味無いの?」

「そうじゃない。俺だって今でなければ…………」


 フレニアが可愛い。その体を堪能して、艶かな声を聴きたい。こんなに美しい女に欲を感じないはずがない。

 セスは人の姿の彼女を一目見た瞬間から、自分の胸の奥に燻る熱を自覚していた。


「なあフレニア、俺は本当は君に気持ちを伝えるつもりはなかったんだ」

「……………どうして?」


 こちらを見ようとしない彼女の細い首筋を肩越しに見る。泣くのを堪えているのかもしれない。


「もし俺が死んだ時に、君が少しでも苦しまなくて済むようにしたかったから」


 銀髪を揺らして、フレニアがゆるゆると首を振る。


「セス!」

「君は強いよ。俺はもしもを考えて二の足を踏んでしまうのに、君は俺を好きになってそれを隠しもしなかった。俺はそんな君に応えたくて()()()()来てしまった」


 思わず振り返った彼女は涙を湛えていて、セスの指が溢れる前に雫を掬いとった。


「でもこれ以上はダメだ。抱いてしまったら……………目的を忘れてしまいそうになりそうだし、何かあった時に君は今よりも苦しむだろう?」

「やめて、やめて……………もしもなんて無いの。私はセスにただ」

「君も、君の立場でもしもを考えたからだろ?君は自分がいなくなる場合を考えたから、だからこんなことをしようと…………」


 セスは精一杯、後ろからフレニアを抱き締めた。


「俺達は必ず奴を倒す。けれどもしもは、考える。君が好きだから」

「セス……………」


 溜め息をついてセスは、彼女の肩に頭を乗せた。


「君は、いつも俺が隠してる気持ちを引き出してしまうな」

「セス…………私も、好きよ」


 抱き締める腕にフレニアの手が重なり、彼女の囁きをセスは目を閉じて聴いていた。








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