表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/56

追う者2

 『滅ぶ?僕が、俺が、滅ぶと?』


 ぎこちなく作った笑みを男が浮かべた。気味の悪い笑みは、この男が魔剣に操られているに過ぎないことを思い起こさせた。

 明るいところで男を見たのは、セスには幼い時以来だ。

 表情の無い顔をして年齢もよく分からない。若いのかどうか不思議と判別できない奇妙さがあった。


『我が滅ぶ時は、そなたが滅ぶ時』


 一定の距離のまま対峙する。

 男の声は言葉に出しているというよりは、頭に直接響くように聴こえた。実際唇を動かして話しているようには見えない。


「違うわ!お前だけが滅ぶの」


 怒りに震えるフレニアを下ろして背に庇うと、セスの腕にすがるように掴まってきた。


「貴様の目的は何だ?なぜ魔物を増やすようなことをするんだ」

『……………目的』


 首を捻る仕草は忘れてしまったと言わんばかりで、二人を余計苛立たせた。


「まさか目的もなく魔物を増やしているのか?」

『魔剣フレニム…………俺を追う剣。魔物は道標。魔物と戦うほどにそなたは怒りや憎しみを大きくさせていく。この100年、俺を忘れたことはなかっただろう?それこそ恋のように、ひたすら俺を、私を、想ってくれたろう?』


「なっ」


 フレニアが瞠目して言葉を失う。


「変態め」


 セスは毒づいたものの、疑問は拭えなかった。

 なぜカザルフィスは、魔剣になったのか。セスには魔法など分からないが、もしヘゼルスタによって掛けられた魔法だというのなら、最も優秀な魔法使いだった彼が防げなかったはずはない。


 フレニアの気を引く為に、わざと魔剣になったとでもいうのだろうか。それなら100年もの間、なんて不毛なことをしているのだ。


『ち、ガウ。ワレノノゾミハ』

「………………なんだ?」


 ふいに嗄れた老人のような声へと変わったと思ったら、ヘゼルスタの持つ魔剣から、黒い霧のようなものが立ち上る。


『ワレラノミノ、セカイヲ……………』

「何を言ってるの?」


 フレニアの問いに、男は応えない。


『フレニ、ア』


 無表情のまま脈絡なく名を口にするが、セスには酷く悲しく聴こえてしまった。


 狂ってるのと同じか。魔物を取り込んだカザルフィスは、人格が崩壊しているのだろう。全ての言葉は嘘ではないように思えた。

 そう、彼女の名を呼んだ気持ちも…………


「決着をつけたい」


 腕にしがみつく震える指を感じながら、セスは男を見据えた。


「俺は貴様のように気長に遊んでいる時間はない。いい加減終わりにしたい」

「逃げないで。私は、おまえを解き放ちたいだけ」


 フレニアの言葉に、男が北の方角を剣で指し示した。そして、すぐに姿が見えなくなった。


「目眩ましか?」

「いいの」


 追いかけようとするセスをフレニアが止める。


「すぐに会えるから」


 息をついて緊張を解いて崩れ落ちそうな彼女を、踏みとどまったセスが慌てて支えた。


「わかった。とにかく君には休息が必要だ」


 身体は完全に人間ではなくても、精神的な疲れは表れる。

 フレニアの肩を抱いていたら、辺りを武装した兵士達に包囲されているのに、ようやく気付いた。


「あなた達を調べさせてもらう。すまないが来てもらおうか」











 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ