表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/56

追う者

 悲鳴が長く尾を引き、聞くに耐えない思いで心臓にフレニムを突き刺した。

 途端静かになり、セスは胃の辺りが鉛を呑み込んだように重苦しくて、すぐには動くことができなかった。


 どんな理由であれ、人の命を奪った事実に変わりない。


 呼吸を整えて額の汗が冷たく感じるようになって、セスはようやく身体を起こした。浄化の炎で魔物を燃やすと、たちまち灰となっていく。


「…………………………」


 パチリとフレニムを鞘に戻し両手で抱えようとして、袖口に青黒い返り血が付着しているのに気付き、セスは手で拭おうした。するとそれは更に広がり、焦っていたら魔剣が紅色の光の中で女の姿を取った。


「フレニア待て、着るものを………」


 セスは人目を憚って彼女を腕の中に匿おうとしたが、フレニアはバシッ、と彼の手を払うと柳眉を上げて睨み付けてきた。


「なぜあなたが謝るの?」

「何?」

「なぜあなたが悪いと思うわけ?」


 裸身を隠そうともせずに詰め寄るフレニアに、顔を赤くしていたセスだったが、彼女の真剣な表情に言葉を詰まらせた。


「私に謝らないで。同情や憐れみはいらないと言ったはずよ」

「………………だが人を」

「人を殺した?そんなの初めてじゃないわ。使い手だったエレノアを殺したのは私のようなものだし、魔物に殺された人々だって、私がこんな身の上になったからかもしれないじゃない。罪悪感なんて一つ二つ増えたからって、今さら……………」

「フレニア」

「セスだって…………」


 両手で顔を覆い、フレニアは力が抜けたように弱々しい声を出した。


「謝らなければならないのは私よ。私がセスを死なせてしまうかもしれないのに。そう思うのに、私はあなたを使い手に選んだのだから」


 白くまろやかな肩に上着を掛けてやり頭を引いてやると、フレニアはセスの胸に額を押し付けるようになった。


「俺だって選択はできたんだぞ?嫌なら君を捨てることだってできたんだ。でもそうしなかったのは、俺が望んだからだよ」

「……………………」

「だから……………ああもう!謝るのはお互いにやめだ。利害は一致しているんだ」

「きゃ」


 セスにしては珍しくイラッとして、有無を言わさずフレニアを抱き上げた。


「とにかく服を着ろ。裸のままだと何かと都合が悪い」

「あ…………」


 言われて初めて、人々が遠慮がちに遠巻きながら視線を向けているのをフレニアは気づいたようで、今頃になって恥じらい両腕で身体を隠そうとした。セスもなるべく見えないように彼女を自分に押し付けるようにして、着替えの為に早足で観衆の目から離れようとした。


「あれは誰だ?何であんな所にいるんだ?」


 ふいに誰かの訝しむ声がして、ドクンと胸がざわついた。


 二人同時に指差している方へと顔を向けると、ベガラナティエを囲う壁の一画に黒いものが見えた。


 フレニアの呼吸が速くなり緊張して強張る彼女の体を、セスは触れている腕から感じた。


「兄……………いえ、カザルフィス!」


 壁の上に立ち、こちらを眺める黒の魔剣士を二人は見返した。


 美しい顔を怒りに染めたフレニアは、100年振りとなって再び得た声を相手へと放った。


「追いかけごっこは終わりにしましょう!お前は滅ばないといけない!」






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ