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造り変えられた魔物3

 シャリ、と馬の蹄が踏みしめた音にフレニアは顔を曇らした。茶色の土だった道は、いつしか白い砂の道へと変わり馬が進む度に乾いた音を立てた。


「フレニア」

「ん?!」


 前を見ようとしない彼女の顎を、背後からセスの指が強引に上向かせる。恐る恐る目にした光景に、フレニアは声を出すことも忘れたようだった。


 白い砂地の広がるそこに、高い石壁に囲まれた街があった。大きな門は開放されていて、門兵はセスを一瞥し、フレニアを見て顔を赤くしつつも通してくれた。


「この高い壁は、防犯の意味合いではなく砂嵐を避ける為の壁らしい。街への出入りはそんなに厳しくないんだ」


 街へと入れば整備された石畳が続き、建物が密集している。昼間だからか、店が並んで人通りも多い。

 街には至るところに緑の木々が生え、噴水のある公園では子供達が遊具で遊んでいた。


 民家の二階の方から陽気な音楽が聴こえて、フレニアは耳をそばだてるように目線を上げた。


「この都市は、ベガラティエという。ベガラナの国の名残…………他国へ流れていたベガラナの子孫達が集まって自治都市を築いた。まあさすがに魔法は復興できなかったし、他の国と変わらないみたいだがな」


 馬から降りて前を歩くフレニアを見ながら、セスは説明した。目に焼き付けるように辺りを見渡しながら歩く彼女は、やはり知らなかったのだろう。いや、知るのが怖かったのだろう。


「フレニア?」


 長いこと歩いていたフレニアだったが、街角の小さな泉の岸でペタリと蹲ってしまった。膝に顔をくっ付けている彼女の隣で、セスは泉で水遊びをする子供達をしばらく黙って眺めていた。


「……………こんなになっていたなんて」


 ポツリと漏らした言葉に、セスは芝生になっている地面に脚を投げ出すようにして腰を下ろした。


「30年ほど前にできた新しい都市だからな。でもここは商業も盛んだし、旅の中継地としてちょうどいい立地だから人が集まっている。これからどんどん人口も増えるだろう」

「ベガラナの子孫……………本当に?」

「よく分からんが、ネリル国やシャルム国から流れてきたらしい。ベガラティエの人口の一部だけだが、最初にここを造った者達はベガラナの子孫だったって……………」


 フレニアは膝から顔を上げたが両手で隠したままだった。その手に伝う滴に気付き、セスは肩を抱いてやった。


「嫁いでいった姉上達の子孫…………ちゃんと血が受け継がれているのね」

「そうか」

「良かった」

「ベガラナは無くなっても、全部が無くなったわけじゃない。たくさんのものが今も残って大事にされている」

「……………うん」


 遊ぶ子供達が水を掛け合っている。その水飛沫が日光にキラキラと反射して、セスは目を細めた。


「無駄になったものなんか一つもない。君が俺を使い手に選んでくれたことだって」


 突然、地響きと共に微かな揺れを感じた。


 地震かと思って咄嗟にフレニアを懐に庇ったが、直後に遠くの一定の場所から悲鳴が聴こえて、二人は立ち上がった。

 視線を巡らすと、やや坂になっている道の下からあわてふためく人々が駆け上がって来るのが見えた。


「魔物だ!魔物が現れた!」

「っ!!」


 恐怖に表情を引きつらせた人の言葉に、弾かれたようにフレニアが走り出した。


「フレニア!」


 後を追ったセスが見たのは、二階建ての家屋よりも大きな魔物だった。鎧のように硬く鋭い黒い皮膚をして、細い瞳孔に赤い眼球をギョロギョロと動かし二足歩行をしていた。


『オアアアアア』


 耳をつんざくような魔物の叫びに、耳を押さえて鼓膜を守る。


「セ、セスっ、セス!!」


 もう一体家を破壊しながら魔物がこちらへと向かって来るのが見えて、フレニアがキッと眉を上げて叫んだ。


「お願いセス!ここを守って、私と一緒に戦って!」


「言われなくても……………来い、フレニム!」


 セスは彼女に手を差し出すと、いつものように愛剣を呼んだ。














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