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魔剣盗難4

「人間?」


 鸚鵡返しに問うフレニアに、セスは頷いてみせた。


「ええっと、正確には人間でも剣でも道具でも関係ない…………いや、関係あるか。俺は君がどんな姿でも君という存在が必要………うん、気に入ってる。俺は今後魔剣フレニムしか持たないつもりだし………………ああ何言ってるんだ」

「……………セスは、魔剣である私が必要で」

「違うって!そうじゃないんだ!」


 セスが大きな声を上げれば、ビクリとフレニアは身体を揺らした。

 他の者に何を言われても平気なのに、フレニアにとってセスが何を言うかが怖くて重く響く。


 驚いていた男達が我に返り、セスに向かって剣を抜いた。


「てめえ、さっきから何言ってんだ?!」

「見つかったからには仕方ない、悪いが死んでもらう!」


 二人がほぼ同時に斬りかかるのを、セスは軽やかな身のこなしでかわした。


「セス!」

「平気だ。ええっと…………何を言いたかったんだっけ」


 再び剣を身を屈めて避けて、セスはどう伝えたらいいか思案する。


「丸腰で余裕かましてんじゃねえ!」


 怒鳴りながら斬りかかるのを、かわしたと共にグイッと腕を掴み捻り上げる。


「いたたたた」

「俺が魔剣士だからって、剣しか使えないとでも思ってるのか?」


 耐えかねて剣を落とした男の背中を蹴り飛ばし、もう一人の攻撃を流して腹に膝をくれてやった。ついでに二人に二撃追加して気絶させると、セスはフレニアに近付いた。


 柱に縛られている紐を解きながら、セスは訥々と話した。


「ええっと…………俺には魔剣であるフレニムが必要だし、君も使い手である俺が必要。これは決定事項だな?」

「うん。セスは、私が使い手に選んだこと恨んでる?」

「どうしてそうなる。そんなわけない、君がいてとても助かっているだろ」

「死ぬかもしれない。最初の使い手は、私のせいで死んだ」


 解く手が止まり、セスが息を止めるのが感じられた。


「血塗れの淑女の銘の通り、私は不吉よ。長生きしたいなら、私をこのままここに縛って放っておいたらいい」

「どうしたんだ、いやに弱気だな」


 死んで欲しくないに決まってる。セスといて情が増すほど、そう思わずにはいられない。でも一緒にいたいとも思う。一緒にいれば死を早めるかもしれないのに、矛盾していると分かっているのに。


「セスに、死んで欲しくない」


 ここに自分の為に来てくれた。その驚きと喜びが、普段強がってフレニアが言い出せなかった言葉を引き出した。


「私のせいでセスを」

「……………馬鹿だな」


 紐を外したセスは、彼女の銀の髪をくしゃりと撫でた。


「嫌だったら、とっくの昔に魔剣なんか捨ててたんだよ。俺にも意思はあるんだぞ。さっきから君が必要だって言ってるのに、勝手なことを言うんじゃない。それに俺はしぶといから簡単には死なないし、最強の魔剣が俺を守ってくれているだろ?」


 はにかみながら告げて、セスは目を瞑った。


「セス?」

「…………待ってくれ。上手く言いたいんだ」


 それだけ言って、しばらく口をつぐんでいたセスがやがて目を開けて真っ直ぐにフレニアを見つめた。


「俺は、君が魔剣だから迎えに来たわけじゃない。俺は君が何であろうが、君とだけこれからも一緒にいたい……………ダメか?」


 自信が無さそうに語尾を弱めるセスに、フレニアの瞳からポロポロと涙が溢れた。


「う………他に、言うことはないの………それだけ?」

「うっ」


 彼女の泣き顔に、驚いたセスの手がわたわたと意味無くさ迷った。


「ねえ」

「わ、分かった!クソ……………分かったよ」


 観念したセスは、絞り出すように白状した。


「好きだよ、うあっ」


 飛び付いてきたフレニアを受け止めると、彼女の啜り泣きが大きくなった。


 もう魔剣と使い手だけの関係では済まされない。これからは彼女を振るって戦うことに、必ず迷いが生じるだろう。

 分かっていて応えてしまった。それはセスの意志だ。

 不安と後悔と、どうしようもない甘い期待に、セスの首に手を回して泣くフレニアの身体を強く抱き返した。






















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