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名も無き魔剣の最期5

「君は、あの魔剣をどう思った?」


 船の個室で二人になってから、セスはフレニアに聞いた。


「どうって?」

「自分を破壊しろだなんて、どんな気持ちでそんなこと伝えたんだろうってな」


 風呂上がりのフレニアが、船窓の近くの椅子に座り髪をタオルで拭いている。


「セスには分からないわ。ずっと剣のまま終わりのない時を生きるのが、どれほど孤独で息苦しいものかは魔剣にならない限り知ることはない」

「ああ、そうだな。俺には分からない」

「彼女は終わらせたいのよ」


 白い寝衣をフワリと身に纏った彼女を、セスは直視しないように手に持っているお茶の入った器へ視線を送る。


「……………ん、彼女?」

「ええ、魔剣の造りや雰囲気の感じから女性だと思う」


 フレニムと名無しの魔剣は、確かに女性的なレイピアの型をしていた。あの魔剣カザルフィムが太刀に近く大振りだったことを思えば、そうなのだろう。


「おそらく彼女は、カザルフィスの元で働いていた魔法使いだと思う。国が滅ぶ時に、身を守ろうと咄嗟に魔剣になった」

「矛盾してないか?自分を破壊するってことは、死ぬってことだろう?」


 スッと立ち上がったフレニアは、小さな丸テーブルを挟んでセスの向かい側に座った。


「ただ自由になりたいのだと思う」

「君に、できるのか?」


 別の部屋にいるルツには、返事を保留にしている。次に船が寄港するヒュッヘンという町で二人は下りる予定だ。だからそれまでに決めなければならない。


「セスは?」


 宝石のような瞳が、じっとセスを見つめる。

 魔物を倒した御礼の為に、船の中だと言うのに風呂付きの広い客室を与えられているのだが、フレニアからは備え付けの石鹸の匂いがした。


「お、俺はできる、さ」


 身を乗り出すようにしているフレニアの細い首筋を見て、目を逸らそうとしたら、うっかり寝衣の隙間からちょっぴり覗く胸の谷間に釘付けになってしまった。


「ふ、フレニア」

「無理しなくていいのよ、どうしたって気持ちの良いことではないもの。気が進まないなら断ればいいのよ」

「いや…………大丈夫だ」


 柔らかそうな生き物だな、とセスは思った。

 何を……………話していただろうか。


「セス?」

「………………君は、なぜ俺と同じ部屋でいいんだ?都合が悪ければ、君の分の部屋を取る」

「え、部屋代勿体無いでしょう?どうせ寝る時は魔剣になるからベッドは狭くないしね」


 そうじゃない。

 朝はなぜか人間になって眠っているフレニアに、俺がどんなに精神を磨り減らしているか知らないくせに。

 毎朝目覚めの心臓に悪いんだ。全裸のけしからん姿で、スヤスヤ眠っているのは誰だ!おかげで毎度ついにヤっちまったかと記憶を手繰り、問題無しと判断がつくと再び寝た振りを繰り返している。


 だってセスが先に起きていると、フレニアは裸を見られたと恥ずかしがって怒るからだ。


「平気よ」


 ベッドにコロンと転がり、横になったままフレニアがセスに向いた。


「セスは、何もしないでしょ?」

「…………………………」

「しない、よね?」

「っ…………」


 つい壁を見た。

 魔剣フレニアに貼り付けにされた、あの忌まわしい記憶がセスの脳裏にまざまざと甦る。


「できない、よね?」

「モチロンデス」


 セスのわざとらしい口調にクスクスと笑い、フレニアは長い睫毛に彩られた目蓋を下ろした。


「先に寝るわ。セス、おやすみ」


 そう言うやフレニムに変わった彼女を横目に、セスは重く息を吐いた。


「おやすみ、マイ・レディ―」






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