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罪深き者3

 カザルフィスの体には傷は見られず、他の者も魔方陣の破裂による衝撃で掠り傷を負った程度で、当初は軽い事故として処理された。


 フレニアは、カザルフィスが目覚めたと聞き見舞いに訪れた。


「カザルフィス、ああ、よかった!」


 ベッドの上に起き上がっている彼を見て、フレニアはその手をギュッと握った。


「私なんかを庇ったばかりに、ごめんなさい。それにありがとう」


 新しい魔法を試作するのだから、それが必ず一度で成功するわけではない。以前も、魔法の失敗や事故に近いものは何度もあった。その都度カザルフィスと部下である魔法使いが、最小限の被害であるよう防御魔法を張り巡らせていたはずだった。


 だが今回の『破裂』は、想定外の威力であり、それにカザルフィスはそれを抑えようとしなかった。

 咄嗟にフレニアを庇うことを優先してしまったから。


 彼女にも、それが分かっていた。自分がいたことで、カザルフィスが通常なら受けるべきはずのないダメージを負ったのだ。


「カザルフィス、どこか痛いところはない?本当に大丈夫……………カザルフィス?」


 彼に違和感を感じる。いつもなら直ぐに目を逸らしてしまうのに、まばたきすら忘れたかのようにフレニアを見つめている。


「………………フレニア、さま」


 ようやく声を出したかと思ったら、額を片手で押さえて首を振る。


「どうしたの?!痛むの?」

「き、来てはなりません!」


 彼女の手を払い、カザルフィスは動揺した様子で離れようとする。

 だが直後には、フレニアの手首を自分から掴んできた。


『フレニア、こちらへ来い』

「痛い!」


 強い力で引かれ、顎に添えられた手で顔を上げさせられる。


『なぜ今まで遠慮などしたのか。おまえが幸せなら他の誰かのものになってもいいなど、よくも気取っていたものだ』

「カザ、ル?」


 好奇心で輝いていた黒い瞳が、澱んで冷たい。それなのに異様な熱を感じて身が竦む。


『この力で、容易く手にできるというのに』


 ゾクリと総毛立つ。

 カザルフィスではないと、頭の中で警鐘が響く。


「あ、あなたは、何なの?」

「……………僕は……ああ逃げて、早く行くんだ!」


 フレニアを突き放し、ベッドから飛び下りたカザルフィスが壁に立て掛けられていた杖を手にして魔方陣を展開させた。


「カザルフィス?!」

「あなたから離れなければ、僕は何をするかわからない。フレニア様…………」


 魔方陣の白い光の中で、カザルフィスが悲しく笑った。


「あの事故で、僕の魂は欲望に今も喰らわれている。僕はもうすぐ僕じゃなくなるんだ。あの時受けた欠片は、僕の心の中にあった望みを核に、僕を邪悪な魔物へと変えてしまうだろう。その前に……………フレニア様、どうかお許し下さい」

「カザルフィス、何を?!」


 フレニアの前から、彼は転送魔方陣で忽然と姿を消した。

 他国に魔法の技術が流出することは厳禁。直ぐに彼に追っ手が差し向けられたが、最後の覚悟の表情を目の当たりにしたフレニアは、心配こそすれ、彼が見つかることはないだろうと確信めいたものを感じていた。


 それから一ヶ月が過ぎても帰ってこない魔法使いに、人々は、彼が自らの命を絶ったのではないかと噂した。


 二ヶ月が過ぎた冬の午後。


「あ……」


 城の自室で椅子に座り編み物をしていたフレニアが、ふと視線を上げた先に、カザルフィスは立っていた。

 少年のような風貌はそのままに、禍々しい気配を身に纏ったそれが、ゆらりと手を差し伸べる。


『おまえを捕らえに来た』
















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