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100年振りの人2

「美味しい。人間で良かったあ」

「そうか、良かったな」


 セスは、げっそりとして気のない返事をした。


 藤色のブラウスに、蜂蜜色のスカートを着たフレニアは、チョコパフェを食べながらニッコリしていた。

 ここに至るまで、店で服を選ぶのに二時間掛かった為セスは疲れていた。


 なんせ女物の服なんて分からないので、適当に籠に入れたら魔剣が咎めるように紅く光るのだ。

 その度に「これは?それともこれか?」と何度も繰り返しお伺いを立てつつ周りの人の白い目を受け、挙げ句に下着まで買わされてしまった。

 初めて買った女性下着。あの恥ずかしさと言ったら、店員の女性の視線から逃れるように俯いて支払いを済ませた自分は、何か罪を犯したような気分だった。


 その後、試着室に服と魔剣を置く挙動不審なセスに、女性客ばかりの店内は冷たい空気が流れていたような気がするが、あれは自分の気のせいにしたい。


 かなり精神的ダメージをくらっていたのに、人間になって着替えを済ませたフレニアが、セスを連れ回して彼の服まで新調してしまった。まあ確かに服は一着切り刻まれ、ブーツは穴開きだったので着替えが足りないと思っていたので異論はなかったが、自分の物を買うのに自分の選んだ服は全て却下されてしまった。


「悪いけれど、あなたのセンス無いわ」


 ビシッと、はっきり言われて結構ショックだった。


 フレニアは、100年振りのスイーツをご満悦中。昔は無かったものもあってスイーツの種類の豊富さが嬉しいらしい。


「元気無いわね?ほら、アーン」


 スプーンで掬ったチョコアイスを口に押し込まれて、セスは目を見開いた。

 そしてフレニアがそのスプーンを置いて、別のスプーンを使うのを見て溜息をついた。


「美味しいでしょ?」

「ああ、甘いな」


 セスは、本当は甘いのものはあまり好きではない。だが、フレニアの機嫌が良いので合わせることにする。


「まあ可哀想だったとは思ってるわよ、女の子の服なんて買うの恥ずかしかったでしょうしね」

「……………死にそうに恥ずかしかった」


 特に下着を買うのが!繊細なレースで淡い桜色や若葉色の下着が!


「仕方ないでしょう?私にノーパンでいろと?」

「…………上品なお姫様から出る言葉とは思えないな」

「100年間剣でいたら、こんな女になるのよ。さあ、元気出しなさい。私の選んだ服、すっごく良く似合ってカッコいいんだから、しょんぼりしてたら台無しよ」


「え?!」


 聞き捨てならない言葉に、セスがフレニアをじっと見ると、彼女は失言したとばかりに俯いてパフェを懸命に食べる。


「姫さん」

「フレニアと呼ぶことを許すわ、我が使い手よ」


 偉ぶるのは誤魔化そうとしているからか。

 口を開こうとしたら、女の高い声が自分を呼んだ。


「セス、見つけた!」


 がばり、と背後からセスの肩に腕が巻き付き、フレニアがスプーンを落とした。


「シェリルか、もう行くのか?」

「ええ、仕事は終わったから帰るわ。ところで、その綺麗な子はだあれ?」

「彼女は………」


 何て言えば良いのか考えあぐねる彼に、シェリルは意味深な笑みを口元に浮かべる。


「もしかして、私の推測通りだったとか?」

「私は、フレニア。セスの主のようなものよ」


 相棒じゃなかったのか、とセスは心の中で叫ぶ。


「なるほど、主ね。ではこれからもこの人をよろしくね」


 頷くフレニアに「それにしても綺麗な人」と、シェリルは彼女を見つめていたが、失礼だと思い直してセスの方を向いた。


「シェリル、彼女のことは………」

「黙っておくわ。公言したところで誰も信じないでしょうから。またいつか会ったら色々聞かせてよね」

「ああ、元気でな」

「良かったね、セス」

「何がだ何が」


 答えず、手を振るシェリルを見送り、セスはそっとフレニアに視線を向けた。

 案の定、面白くなさそうに頬を膨らませて、パフェをつついている。


 口元を手で覆い、声を出さずにセスは笑った。









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