表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/56

その正体2

「ほ、本当にそうなのか?」


 セスが再度尋ねると、フレニムは肯定するかのように一度紅く光った。


「……………まじか」


 人間が剣に姿を変えるなんて、そんなことができるのだろうか。


 あり得ないと思うものの、フレニア姫が、失われた魔法国家の王女だという話が真実なら、セスの常識を越えたことが起きたに違いない。


 取り敢えず疲れて頭がこんがらがっているので、フレニムを掴んだままベッドに倒れこむ。


「あー、ちょい待ち。何がどうなって…………フレニムがフレニアで……………え!だったら今俺が握ってる部分って、女の身体ってこと?ど、どこにあたる部分だ!い、いや、何も想像してないからな!」


 一瞬吹き出た殺気を敏感に察知したセスは、起き上がると慌てて弁解した。

 そして様子を窺いながらフレニムを鞘に収めると頭を下げた。


「置いていって、ごめんな。いや、ごめんなさい。け、敬語の方がいいかな?そのだな………やましいことは何もないんだが、昔の彼女と話すのを聞かれたくないっていうか、君の気配が気になるというか、ほら、過去のことだがプライベートなことだし…………とにかくごめんなさい」


 上目遣いで愛剣の反応を確認しながら、セスは話を続ける。


「それにシェリルは、もう結婚してるんだ。お、俺と別れてから直ぐに運命的な出逢いをしたんだそうだ。相手は家庭的で優しくてハンサムな奴で、さっきも延々とのろけ話を聞かされてさ…………なあフレニム、いや姫さん」


 ちょっぴり頬を染めて、セスはもじもじとシーツをいじる。


「もしかして、そんなに怒ってたのは……………シェリルに嫉妬した、とか?」


 愛剣の魔力の輝きが消え、静寂が降りた。


 怒っている?違う、考えているのか?それか呆れてる?

 自惚れているなら、かなり恥ずかしい。フレニムの反応が無いことに、セスは次第に居たたまれなくなってきた。


「ハ、ハハ、冗談、冗談だから………うわ!?」


 突如、フレニムから太陽の如く眩しすぎる光が爆発的に溢れた。目を瞑って遣り過ごした彼が、ゆっくりと目を開ければ、そこには女がいた。


「あ………………」


 キョトンとした様子で、自らの手を握ったり開いたりしているフレニア姫を前に、セスは口を開けたまま固まってしまった。


「……………嘘」


 愕然としているのはお互い様で、フレニアは人間の姿を取り戻したのだと理解した途端、いきなりセスの襟首に掴みかかった。


「あなたねえ!し、嫉妬ですって?なんで私が!それによくも今までやりたい放題してくれたわね!」

「う、うわああああ!」


 セスが情けない悲鳴を上げて座ったまま逃げようとしたのは、彼女が怖いからではない。目のやり場に困ったからだ。


「うわっ、わわ!来るな!ダメだって!うわ…………凄い」

「何ですって!」

「いや、そのだな、はははだか!裸だから!」

「え?」


 フレニアは自分自身に視線を落とし、両手で身体を隠そうとした。


「いやあ!見たわね!」


 言われてハッとして、セスは慌てて目を瞑ってシーツを渡した。


「すまん、不可抗力だから!」


 ついチラッと見てしまうのは、男の(さが)というものだ。

 銀の髪を乱してシーツを纏い頬を染めるフレニア、しかもベッドの上。


「………………こ、これは」


 良からぬ想像をしてしまい、セスは片手で口元を覆うと顔を逸らした。


「何か想像したわね?」

「いや、別に…………うぐっ」


 手を伸ばして、近くの椅子に掛けられていたセスのシャツを勝手に着るフレニアに更に動揺するセス。


「こ、これが彼シャツってやつか!」

「煩いわね!仕方ないでしょう。服は実体化できなかったんだから」


 細い眉をしかめたフレニアは、アワアワしているセスを無視して唇を噛んだ。


「認めない、認めないんだから」





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ