表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/56

嫉妬する魔剣2

 〈ふうん、元カノねえ……………〉


 へえ、そうなんだ。

 彼女募集って公言してるから、てっきり女の子とお付き合いしたことないんだと思っていたわ。うん、でも考えたらセスも25歳だものね。女の子の一人や二人付き合っていてもおかしくない歳だよね。結婚していてもおかしくないものね。ふふ………


 二人が向かい合って楽しそうに話をしているのを、私はテーブルの端から眺めていた。


「確かに女性的で美しい剣ね。セスが一目惚れするのも分かるわ」

「だろ?」

「聞いたことがある。何十年も行方不明だった謎の魔剣。武器屋ではなく、まさか骨董屋にあるとはね」


 シェリルが、すううっと私の刀身を指でなぞる。

 優しく触れてくれているのに、なんだかイライラする。


 〈大事な剣だと言うくせに、元カノには触らせちゃうんだ〉


 ************************************************


「ね、この魔剣私に売ってくれない?高値で買うから」

「ダメだ」


 即答したセスは、フレニムを引き寄せてシェリルから遠ざける。


「この剣は、俺の目的の為に必要だ。少なくともそれを達成するまでは渡すことはできない」


 いたって真剣な顔をするセスに、シェリルはクスクスと笑うとフォークで彼の皿からニンジンのソテー(セスの嫌いな野菜)を突き刺し自らの口に運んだ。


「そう言うと思ったわ。でも…………まだ諦めていなかったのね」

「ああ。俺が剣士でいる理由だからな」

「ええ……………私達が別れた理由でもあるわ」


 シェリルの言葉に、セスは目を逸らした。


「セスは後悔してる?あの時…………私を選んで欲しいと言ったけど、セスは選ばなかった。でも、もし」

「よせ、終わったことだろ?それに今、きみは」

「ええ。でもたまに思うことがあるの。あなたと一緒にパーティーを組んで旅をしていた頃は、とても楽しかった」


 シェリルの肩に斜めに装着した革ベルトには短剣が幾つも収納されているポケットがあり、彼女はそれに触れて昔を懐かしんでいるようだった。


「ああ。短剣使いの君は良い腕をしてたから、戦いやすくて楽だった」

「戦いの話じゃないって分かってるくせに」


 セスの鼻を摘まんで拗ねたような口調のシェリルに、彼は短く笑った。

 だが何となくフレニムに目をやり、顔を強張らすと席を立った。


「な、なあ、どこか場所を移さないか?ここは騒がしいから、ゆっくり話もできない」

「ええ、そうね。今までどうしていたか聞きたいわ」

「少し待っていてくれ、部屋に荷物を置いてくるから」


 セスは愛剣を持ち、二階の宿部屋に小走りに上がっていった。

 部屋はどこにでもある単身者向けの小部屋で、ベッドにミニテーブルに一つの椅子と長細いクローゼットがある造りだ。


 フレニムをベッドの足元に丁寧に置き、なぜか彼は目を泳がせた。


「…………フレニム、その、なんとなく聞かれたくないから留守番しててくれ。すまない、イイ子にしてるんだぞ」


 部屋の外にはシェリルが待っていて、戻ってくるセスに声を掛けた。


「置いてっちゃっていいの?」

「あ、ああ、なんだか睨まれているようで居心地悪くて………」

「ねえ、私の部屋に来る?」

「シェリル、何………」


 戯れるような会話をしながら、パタンと扉を閉めて鍵をかけると二人の足音はすぐに遠ざかっていった。


 シン、と静まる部屋には、紅の魔力をじわじわと滲ませるフレニムが残された。


 入浴以外、肌身離さず共にいたセスが、初めて『彼女』を自分から離したのだった。







評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ