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はいろうよっ!

処女作です。改善点あればよろしくお願いします。

これまでの人生、振り返ると流されてばかりだった。なんとなく生きて、なるがままに事を進めて、自分の意思を出せずに生きてきた。液晶越しの同い年がカメラのフラッシュ以上に輝いていることに、少しばかりの嫉妬心を抱き、そしてそれ以上の無力感を感じるばかりだった。

俺はそんなことを学校の屋上で考えていた。そんな日常がもうすぐ終わることを知らずに……

「おにぃーちゃぁぁぁん!」

「ぐわっ!いてててててっ……いきなり飛び込んでくるな千尋!」

「ごめんなさい……」

死ぬかと思ったよ、先生に勝手に屋上にいることバレるよりましだけど。

俺は腹に重りをつけながら立ち上がった。やたらと重い暖かい奴を。

「むむむむむっ、お兄ちゃん重いって思ったでしょ!」

お兄ちゃん子なのはいいのだがなぁ……まあ元気だからいいのか。

「何しに来たんだよ。こんなに興奮して。」

千尋はあのねあのねと言わんばかりに切り出した。

「写真部はいろっ!」

―写真部―この学校である唯一の部員のいない部活である。何故部員がいないのに存在するのか。その疑問を持つ生徒は少なくない。度々生徒会への質問みたいなコーナーでも出る話題だがわからないと答えられる。生徒数の多い時代ではかなり大きいコンテストに入賞したこともあり、それゆえに学校としての実績に花を付けている。というのが一般的な解釈であろう。だが、それにしても疑問点が生じる。何故部員が10年ぐらいいないはずなのにどうして未だに存続するのかを説明できない。それゆえに学校七不思議の一つとも言われている。

「何故入るんだよ……だいたい学校七不思議の一つとも言われているぐらいには恐ろしいらしいのだぞぉ」

噓は言ってない、軽く揺さぶってみた。

「えっ、そうなの?」

きょとんとしていた。これはこれでかわいい。

「べっ、別にいいでしょ。ところでお兄ちゃんって部活入ってないよね……」

「入るタイミング逃したからな。」

情けないばかりだ。

「なら入ろう!お兄ちゃん、進路活動で箔がつくぜぇ……どうだ、幽霊部員でもいいよ。」

妹に言い負かされた。これを続けても言い訳しかできない。運動部なんて入れない。こんな身体能力を恨もう。うん恨もう。

「分かった。入る。ところでなんで千尋は写真部なんて入ろうと思ったんだ?」

せめてものあがきだ、何か聞き出すとしよう。

「恥ずかしくていえないよ……」

かかった!責めてやろう!

「ふーん……どうしてそこまで必死なのかなぁ?」

「あっ……あのね……」

「うん。どうした?」

「実は……夢があってね、世界中の海岸を回る写真家になりたいなぁって、おもってて……」

「ぷっ、なんじゃそれ!胸に秘めた夢は大きくても、現実の胸は小さいってか?傑作もんだー」

腹に拳が入る。痛い。ガチで殴ってきたぞこいつ。やりすぎた……

「ぐっ!うぅぅぅぅ……」声にならない声ってあるのだね。

「これ以上言ったらどうなるのかなぁ、お兄ちゃん?」

兄にもそのプレッシャー分けてくれよ頼む。

「すいません千尋様!わたくしめのご無礼が過ぎました!もう致しません!」

「取り敢えず行くよ!」

手を引かれるままに、俺は部室へと向かった。



「なんだよここ、埃被ってるじゃねぇか。」

10年もの時を感じさせるような部屋だ。正直言って居心地は良くない。湿気で曲がったL判の写真がそれの事実を補強している。

「ああ、まずは掃除するしかないなぁ。」

「いいや、部員集める。集めて掃除した方が絶対早い。」

「あのなぁ……絶対こんなんじゃこないだろ。」当たり前だ、妹のアホさ加減にあきれるぞお兄ちゃん。

「それもそうですなぁ。勝手にやってくれる道具とかないかな?」

「ここは現代だ。未来世代のすばらしい道具はない。ましてや勝手に掃除するロボットもない。」

「それって青いや……うにゅっ!?」

俺は猫並みに言うことを聞かない妹を持ち上げる。もはやこいつ自体が猫なんじゃないかな?それはないか。

右腕の中でじたばた暴れる妹はこちらをにらみつけた!しかし俺には効果がないようだ。残念!

「ああ、もうわかったよお兄ちゃん。ちゃんと掃除しますからぁぁぁ!」

「わかればよろしい。」

そう言って、俺たちは渋々部室を掃除した。


掃除自体は想定より楽だった。先任者がまめな人だったか分からないがそもそもの物が少ないからだ。棚に10年くらい前の一眼レフ、デジカメが3,4つほど置いてあったのと、アルバムと部誌がちらほらと置かれていた。後で読もうか。

コピー用紙などは整理されており、まとめるのに時間を使わなくてよかった。

後は……引き出しか。

「こういうのって変なもの絶対あるよな……」

妹はもう帰った。ここは学校の3階の奥の方の部屋。近くに階段はあるがあまりそのルートは使われない。奥の教室の人が下に降りる時ぐらいか。

窓からは夕日が射している。速く帰らないとな。

恐る恐る重い引き出しを開ける。古い本のようなかび臭い匂いが鼻腔をくすぐる。

あったのは昔の機械式のカメラ3つ、アルバムと色褪せた写真だった。どちらも相当古いものだろう。

現にこの学校が創立したのがおよそ100年前だ。校舎の移転はあったものの、この校舎だって40年前からのおんぼろだ。そう考えるとこのようなこともあり得る。ごく自然なことだ。

写真に目を向ける。ここに写っているのは3人の少女だ。俺と同い年ぐらいのまあまあの美少女のだ。裏を見ると、1975/7/24と日付が書いてあった。

「今が2015年だから……ちょうど40年前か。」

変な写真であったわけでもない。時間がないからか、俺は先にぱらぱらとアルバムに目を通した。

海の写真がやたらと多かった。白羽市、この町は田舎だ。恐らく最も町に近い市であるだろう。そのような街では観光スポットはあんまりない。恐らくこがね浜でとられたであろう。未だにここは海水浴場のままだ。変わったのは活気かぐらいか。

アルバムをめくっていると、ふと1枚の写真が目に付いた。不自然な写真だ。異常なほどのハイコントラスト。編集としか言いようがないくらいだ。紙が劣化しているという事実さえ否定されそうなぐらいの。サメの死骸に見えた。コラージュかとも疑ったが加工された跡はない。あまりの不気味さに引き込まれた。同時にこの上ない恐怖感が俺を襲った。時刻は6時を回った。電気を消したら真っ暗だろう。それらの相乗効果が相まって手が震えてくる。生理的根源からの恐怖。生々しい光景が脳裏に浮かびあがり、離れない。

「ああっ、あっ、あああっ。」言葉が出ない。俺はすかさず引き出しを閉めて、荷物をもって部屋を飛び出した。


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