二ノ巻 九十九
「お前はどんなのが見えてる?」
青年_雷神と言うらしい彼は、憐の見えてしまった物について詳細を聞く。
「尻尾が九本生えてる狐…?」
すると突然麦茶を飲んでいた白羅と言う少女が麦茶を吹き出す。
それこそブッーッ!と言う効果音が付きそうな勢いで。
「げほっげほっ…貴方、ホントに其が見えてる?」
「は、はい。此ってなんか凄いんですか?」
「凄いなんてもんじゃないわよ!?封印されているケモノの一体、九尾の狐よ!」
九尾の狐がどれだけ凄いか位はオカルトに疎い憐でも知っていた。とんでもない焔を放ち、インドとか中国で暴れまわった怪物…あれ?色々混ざってるな。
「まぁ、兎に角、その狐の九十九が見える奴はケモノ狩りに向いてるんだ。つーか九尾なんて最高位の九十九、正直言って十二天将でも居なかったぞ?」
九十九やら十二天将と言うよくわからない単語に苦戦しつつも、憐は何時もの論理的思考を再生し、質問を投げ掛ける。
「も、もし僕がケモノ狩りになるとして、その技術とかって…」
「ん?俺が教えるさ。本来弟子は取らないんだが、お前は別だ。今ならなんとお得居候付き!あーらお得」
凄く圧力を掛けてくる雷神。そんな圧力かけたら圧力鍋で必要以上に圧力掛けられた料理みたくなる。うん。すると白羅さんか鋭く光る紅いナイフを雷神さんに突き刺す。
「すみません、憐さん。でも、雷神さんは戦力になるケモノ狩りを探してるんです…ある人との約束で」
ある人との約束、その一言が憐の胸に響いた。憐は物心付いた際から厳しく両親に指導_それこそ警察沙汰ギリギリの教育を受けていた。そんな彼にも、友達が居た。しかし、その'約束'が原因でその友達では決別してしまった。以来、憐は約束を守る、守ろうとする人を助けたいと思う様になっていた。そんな彼の胸に響いたその言葉。勿論、約束が絡めばお人好しの憐は即座に、
「分かりました。夢が無かったので、これからはケモノ狩りを夢にして生きていきます!よろしけお願いします、師匠!」
と言ってしまった。白羅はわかっていたかの様な笑みを浮かべてよかったですね、雷神さん。と雷神に言った。雷神は上機嫌なのかハンマーを振り回しながら部屋に戻っていった。
「………さて、貴方が聞きたい事は山より高く海より深くありそうなので、”心”読みますね」
心読みますね。通常の会話ではまず出てこない単語である。最も、この1日で起きた嘘を絵に書いたかの様な出来事からすれば大して驚かないのが憐である。白羅は腕を合掌させ、周囲に白い鬼の化身を出現させる。
「…ビューティフォー」
白い鬼の纏う焔は思わず見とれてしまう程の美麗さを放ち、鬼も豪々しいと言うよりかは凛々しい女の鬼だった。そして、白羅はそれについて説明を始めた。
「これが…九十九。全てに宿る妖怪の様な物です」
九十九。それが雷神を雷神させたる一番の理由であり元凶であると、白羅はいった_