キライ⇔スキ??
✐ プロローグ
「好きです____!」
16回目の夏、人生に何度目かの告白をした。
彼女は一瞬驚いた顔を
「きらいです」
と言い放った。
16回目の夏、人生に何度目かの告白は呆気なく終わってしまったのだった。
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✐
「あああああ……」
本日何度目かわからない俺の喉から出た叫びが教室に響き渡る。
「悠貴、それ何度目?」
前の席に座って居たクラスメイトの翔也が振り返って俺と向き合う様に座り直した。
「あんな形で振られるとは思ってなかった…あああああ…」
30分ほど前の告白の返事の言葉は舞い上がっていた俺を突き落とすには充分過ぎる言葉だった。
「きらいです」か……。
思い返してみれば、両想いの欠片なんてこれっぽっちも無いのだ。
「それで、宮原さんの事嫌いになったわけ?」
「嫌いになれる訳無いだろ!」
2年間もこの想いと連れ添ってきたんだ、嫌いになれるわけない。
「むしろ好きになった」
「は?悠貴ってマゾ?」
「違ぇ!!ただ、振られてもやっぱり好きだなーって思うだけで…笑顔とか、可愛かったし…」
後半は恥ずかしくなって、ゴニョゴニョと口を動かすだけしか出来なくなったが、翔也には伝わった様だった。
翔也は、「ふーん」と返事をして窓の方へ歩いていった。
翔也から聞いてきてそれかよ…と、机に額を付ける。
クーラーの効いた室内にある机はヒヤリとしていて気持ちが良かった。
「あ、宮原さん」
「何処!!」
翔也の方へ駆けていくと、移動教室なのか美術の教科書を抱えた宮原さんを見つけた。
1限目は選択授業で、美術・音楽・書道の中から好きなものを選ぶ仕組みになっている。
4月の初め、翔也と俺は1番楽な音楽を選んだので彼女とは別になってしまったのだ。
「ほんと、なんで美術選ばなかったんだろ…」
美術を選んでいたら宮原さんの隣に座れていたのに、と呟けば翔也が「俺が隣じゃ不満かよ」と不貞腐れていた。
はぁ、と溜息が口から漏れる。
そのまま外(宮原さん)を見ていると宮原さんは筆箱を落とした女子生徒のシャーペンを拾っていた。
やっぱり、優しい。
宮原さんを見ると先程の笑顔と言葉を思い出してしまう。
はぁ、と溜息をこぼし窓に転落防止の為にある横長の鉄柱にもたれ掛かる様にして制服のポケットから携帯を取り出す。
去年の春に、高校入学祝いとして親に買ってもらったものだ。
繋げたままになっていたイヤフォンを耳にさし、お気に入りの曲を聴く。
好きなバンドの新曲で、最近はずっとこの曲を聴いている。
丁度曲が終わった頃、隣に翔也が居ないことに気付いた。
どうせ彼女の所にでも行っているんだろう。
畜生、リア充め。
連絡用に使っているアプリを開いて、先輩に部活の事を送ろうと文字を打っていると
「やっべ、チャイムなりそう!音楽室って第1だっけ??」
クラスの男子が朝練から帰って来たようで、廊下から賑わいの声が聞こえてきた。
教室の黒板の上にある時計を見ると、長針と時針はもう少しで授業の始まる8:40分前をさしていた。
急いで自分の鞄の中から教科書と筆箱を取り出す。
翔也はというと、一足先に教室の外に出ていて携帯を弄っていた。