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真夏の夜道

作者: 神名代洸

「まだ7月にもなってないのにこの暑さは異常だ。」などとブツブツ言いながら誰もいない公園の横を歩いていた。

僕はこの時間嫌いじゃない。暑さを除けば…。

そんな夜道を1人歩いていた。時間は午後7時を回ったところだ。

風が吹けば気持ちがいい。

「うーん、今日はちょっと生温いなぁ〜。」

特に変わったことはなかった。そう思っていた。けれども今夜はちょっと違うようだ。

生暖かさが半端ない。気持ちが悪くなるほどに。しかも虫の声ひとつ聞かない。普通なら何かしらの声が聞こえてもいいはずだ。ところが全く聞かないのだ。

「なんだろう?何かあったっけ?」そう考えたが思いつく事が1つもない。

だから考えないようにした。

しばらく歩くと道端で下を向いてただ立っている女性を見た。なぜ女性ってわかるって?髪が長いのと体の線が細いことからそう思っただけだ。

それにしてもなんでこんなところにこんな時間に1人でいるんだろう?不思議だった。そこでやめておけばよかったのに興味がわいた僕は気が付いたら問いかけていた。

「どうかされたんですか?」「…。」

聞いても何も答えない。そりゃそうだ、相手は見ず知らずの人間だ。答える方がどうかしている。

僕は吸い寄せられるように近寄って行った。

相手は俯いたままだ。こちらを無視しているだけなのかも知れないが気になって肩を触ろうとした。するとその手をいきなり掴まれた。突然の事で避けることもできなかった。

そして、顔がこちらを向いた。いや、顔などなかったのだ。のっぺらぼうの様に顔がなかった。口らしき場所が開き歯がない真っ黒な穴がニヤリと笑う。

「ヒー!」

怖くなった僕は掴まれた手を必死になって離そうと試みたが力が強いのか振りほどくことができない。泣きそうになりながらも必死になった。

そして一瞬の隙をついて女性の手から解放された僕はその場から逃げる様に走り去った。

けれども女性は声高らかに奇声をあげながら追っかけてくる。

「なんで追っかけてくるんだよ。ついてくるなよ。」叫びながら逃げる僕。追う彼女。

人が1人も通らないので助けも呼べない。「?、なんで誰もいないんだ?」疑問に思いながら走り続けた。そうこうしているうちに霧が立ち込めてきた。

ヤバい。濃くなると何処をどう走っているのかわからなくなる。それだけは避けたかった。もし行き止まりにでも当たったら逃げ場がなくなる。そうは思っても思う様にいかないのが現状だ。

行き止まりに当たってしまった。

後ろを振り向くとすぐ後ろにのっぺらぼうの顔が。

「ギャ〜!」

僕はそこで意識をなくしてしまったらしく気が付いたら朝だった。

誰も通らないはずだ。

だってここは墓地だから。なんでどうやって入り込んだのかわからない。ただ目の前にあるお墓に片手が乗っていた。そのお墓は荒れ放題で花も添えられていなかった。

これも何かの縁と僕は花を買って来て墓周りを綺麗にして花を添えた。

両手を合わせ祈った。

「もしかしてこうなってるのを知って欲しかったのかな?だとしたらお墓の持ち主を探さないと。僕みたいなことがまたあったら怖いだろうし…。」

墓の入り口には管理人なる人の電話番号が載っていた。僕はすぐに電話し、なんとか納得してもらおうといろいろ説明し、納得してもらって連絡をつけてもらった。僕はホッとしてその場を後にした。


それ以降同じ目に会うことはなくなり、女性の姿も見なくなった。きっと持ち主がちゃんと管理してくれているのだろう。そう思った。

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