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序章 最強の四番打者
この小説はフィクションです。
「打った!」
「くっ!」
俺が投げた球が、三遊間を抜けていく。その間に、一塁ランナーは二塁に到達した。これでランナー一、二塁。
「くそっ……」
炎天下のマウンド上、俺は歯噛みした。
最終七回、ツーアウトと追い込んだのに、2連打。リードは2点しかない。
ホームランを打たれれば逆転。そんな状況で、次のバッターは四番。中学通算本塁打42本の……アイツだ。
「あと一人! 押さえてけよ義孝!」
「楽いけ楽!」
「……!」
そうだ、あと一人だ。アイツだって、絶対に打つ訳じゃない。だってアイツは……
「う、おぉっ、らぁっ!」
渾身のストレート。完璧だ。この一年間で最高の感触だった。
この球、打てるもんなら打ってみやがれっ!
キィンッ!
「なっ……!」
響く快音。歓声に押されるように打球はぐんぐん伸び……バックスクリーンへと吸い込まれていった。
「逆転! 逆転だぁっ!」
……何故だ。
お前はただの平凡なプレイヤーだったろう!
こんな化け物じゃなかった!
……この2年間、お前に何があったんだ……
翔大っ!