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すべての始まり

               すべての始まり


倭人は、帯方郡から東南にあたる大海にあって山に囲まれ島を連ねて、国を造っています。倭国はかつて百余国に分かれていましたが、魏の時代の今、使いの行き来があったり、言葉の通訳が可能なのは三十国程度です。

帯方郡より倭国に行くには、半島の西海岸に沿って航行し、半島の先端まで行き、海を渡ります。千里あまりでツシマ国に着きます。さらに航行千里あまりで、イキ国に着きます。そこからさらに航行千里あまりで九州のマツラ国に着きます。そこから東南に陸路五百里でイト国、さらに東南に百里でナ国、さらに東へ陸路百里でフミ国に着きます。そこから南方向に陸路ひと月でヤマタイ国に着きます。

ヤマタイ国にはヒミコと言う女王が君臨しています。


「ムリテ、どこにいるの?」

イラクサ科の芋麻の繊維を紡いで造った筒袖のワンピース、背中の中ほどまで垂らした黒髪。素足で森の中を歩きながら、大木に巻きついている蔦を引きちぎると、くるくるとまるめ冠のように頭にかぶせた。ハート型の葉があちこち向きながら頭をぐるっと取り巻く。

長い睫毛のくっきりした大きな目。太目の眉が意志の強そうな印象を与える。年の頃は十六、七才だろうか。

「姉さん、先に行くなよ。森の奥は危ないんだから」

追って来たのは、同じぐらいの年に思える男子。似たような服装だが、こちらは下がズボンになっている。顔立ちはよく似ている。

「わかってるわよ。でも、おいしい桃がこの先にあるの。私は前にも来てるから大丈夫よ」

「今このあたりはサルに疫病がはやっているらしい。死体をよく見かけるそうだ。それに、森の奥に行ったムラの子供が高熱を出して死んだ。それも五人も」

「サルからうつったって言うの?」

「わからないが、森の奥に行った子供ばかりが発症している。森の奥に原因があるのは確かだ」

「でも、あの桃の木はまだ私しか知らない。だから、ムラの子供たちもここには来ていない。ということは、ここは安全ってことよ」

「姉さん得意の屁理屈だ。この奥にはサルがいるかもしれないよ」

姉は弟の言葉を無視した。

「行きましょう。ほらあっちよ。平べったい変わった形の桃よ、すごーく甘いの!」

「まったく、桃が好きだな」

しかたない、という顔で弟は姉と並んで歩きだした。

やがて、樹々がまばらになり、司会が開けた場所に出て来た。

「ほら、あそこ!」

姉が指さす方角には、薄桃色の実が葉の合間からのぞく一本の木が。その先は空。

「崖っぷちに生えているのか?」

「そうよ」

そう言うと姉は走りだした。

「待てよ! あの木に登るのか?」

まったく!と言うようにムリテは立ち止ったまま両手を上げた。

その間に姉はもう目指す木のところまで行き、実を一つもぎ取りかじっている。と、桃を手にしたまま木の傍でかがみこんだ。崖の下を見ているようだ。

「なにしてる……」

ムリテはつぶやいた。

姉はかじりかけの桃を置き、向きを変えると崖に片足を降ろした。

驚いたムリテは走り出した。桃の木のところまで来た時には、姉の姿はもうそこになかった。

「姉さん!」

ムリテは崖をのぞいた。

桃の木は根の半分が崖からはみ出るように、本当に崖っぷちに生えていた。その後ろから下をのぞくと、切り立った崖の途中に、木から生え出たキノコのように岩の突起が出ていて、十二、三才の少年が倒れていた。傍らに食べかけの桃の実が転がっている。桃を採っていて落ちたのか。よくあんなところにひっかっかったものだ。

ムリテの姉はそこに降りて行こうと、崖のわずかなでこぼこを足場にしてつたいながら下りていた。大人の背丈二人分ぐらいの距離なのだが、切り立った崖はそう簡単には降りられない。

ムリテは姉が無事に岩の突起にたどり着くまで見守ることにした。姉を見ながらも崖の下の谷に目をやった。丈の高い草の合間に埋もれながら、黒い毛のような塊があちこちに見える。いや、かなりな数だ。

獣が隠れているのか……これは谷に落ちたら襲われてしまうかもしれない。でも、なぜ動かない?

「ムリテ! この子をお願い!」

つい考え込んでしまい、姉から目を離してしまったムリテは谷から目を戻した。

さっき倒れていた少年が下から手を伸ばしている。よく見ると少年は姉に肩車してこっちに手を伸ばしている。ムリテは地面に寝そべって両手を崖下に伸ばした。

少年の手をなんとかつかんだはいいが、どうやって引っ張り上げたらいい?

「そいつの腕を枝だと思って自力で上がるのよ!」

姉が下から叫んだ。少年に向けて。

ああ、さすが姉だ、いつものことながら、とムリテは思う。

 少年は、だんだんにムリテの腕をつかみ替えながら登ってくる。下から姉が押し上げて手伝っている。ついに崖の上にたどり着いた。

 上がって来た少年はペコリと頭を下げた。顔や腕に、落ちた時についたと思われる傷がいくつもあって痛そうだ。汚れてはいるものの上品な顔立ちをしている。

「大丈夫?」

 ムリテは起き上がりながら聞いた。

 少年はうなずいた。見かけない子だとムリテは思った。

「名前は?」

「イロイ」

「どこのムラ?」

 少年は首を振った。このクニの子じゃない?

「ムリテーッ! あたしをほっとく気!」

 いけない!忘れてた! 谷には獣がいる!

 ムリテは崖下に向き直った。崖の途中までよじ登った姉が手を伸ばしている。

「この先、足場が崩れちゃって、ないのよ」

 ムリテはまた寝そべって腕を伸ばした。横にイロイ少年がかがんだ。姉が手を伸ばす。

 その時、

「あっ!」

 っと言う声を残して、姉の体は谷へと転がり落ちた。

「ヒミコ姉さん!」

 ムリテは叫んだ。


 ヒミコは黒い毛皮の上に身を横たえていた。目の前にある自分の右腕からは赤い筋が流れていた。体を起こそうと腕に力を入れると、下がぐにゃっとした。異臭が漂っている。

 上半身を起こして黒い毛皮の周囲の草をかき分けてみた。

 死体だ……

 ヒミコは現状がつかめた。自分はクロザルの死骸の塊の上に落ちたのだ。クロザルの体が衝撃をやわらげてくれ助かったのだ。

 クロザルはこの地域にだけいる大型の黒い被毛のサルである。谷のそこここに見え隠れしている黒い物体はクロザルの死骸。サルの間で疫病が流行っているのは本当だったのだ。

 ムラの子供が死んだと言っていた。それはサルの疫病がうつったということか?

 自分も疫病にかかるのだろうか……

「姉さーん! ヒミコ姉さーん! 生きてるーっ!」

 ムリテが叫んでいる。

「大丈夫!」

 ヒミコは顔を上に向けた。

「今、縄を持ってくるから、そこで待ってて!」

 ムリテが叫んだ。

「わかった!」

 ヒミコは顔を戻すと周りを見た。白骨化した死体はない。どれもまだ死後数日に思える。こんなのはいまだかつて見たこともない。こんな大量のサルの死骸など、それもすべてクロザル……ここから離れなければ!

 ヒミコは直感的に思った。

 ヒミコは黒い毛の上から草の上に降り、立ち上がると死骸の合間を縫って崖に近づいた。崖に背中を押し付けるようにして立った。このまま待つことにしよう。

 しばらく待っている間に、異臭は感じなくなってしまった。鼻が慣れてしまったのだろう。と、上から声がした。

「今から縄を降ろす! 体に巻き付けてっ! 引っ張り上げるから!」

 ほどなくしてヒミコの目の前に縄が下りて来た。腹に巻き付けて結ぶと縄を握った。

「いいわ!」

 縄はスルスルと引き上げられた。


 崖の上に上がった途端、ムリテが鼻をつまんだ。

「臭い!」

「クロザルの死骸だらけだったの。谷が」

 ヒミコは自分の衣服をつまんで鼻を近づけるとヒィ!と言って顔を背けた。

「あの黒いの、死体だったのか……つまり、疫病ってことか」

 ムリテが言いながら崖の下に目をやった。その間にイロイが縄をほどこうとヒミコの腹の結び目に指を入れた。

「私に触ってはだめ!」

 ヒミコはイロイの腕をつかんで縄の結び目から指を出すと、崖の反対側に後退った。

「私も疫病にかかるかもしれない。そばに寄ってはだめ!」

 イロイとムリテから離れながらヒミコは言った。

「大丈夫だよ。まだサルからうつったなんてわからないんだから。森の奥に原因があるらしいってだけだよ」

 ムリテが言った。

「そうかしら。でも、あれは異常よ。谷中クロザルの死骸だらけなんて」

「とにかく、ムラに帰ろう。姉さんもイロイも傷の手当てをしないと」

「この子、イロイって言うの?」

 ヒミコはイロイに顔を向けた。

「ああ、そうなんだ」

「どこのムラの子?」

 ヒミコはイロイに聞いた。

「違うんだって」

 ムリテが言った。ヒミコはムリテに一旦顔を向けるとまたイロイの方に向き直った。

「どこから来たの?」

「クナ国」

「南の?」

「うん」

「どうしてこのクニに」

「居場所がなくなったから」

「居場所がないって?」

「父さんも母さんも死んで、あのクニにいると危ない」

 どういう意味だろう?とヒミコは思った。

 とにかく、どんな理由であれ、自分のクニにいられなくなったということだ。

「それじゃあ、うちに来るといい。ね、ムリテ」

 ヒミコはムリテの肩を叩いた。

「え? ま、まあ、いいけどね」

 ムリテは困惑したような顔で、イロイを眺めた。

「それじゃあ、帰ろうね。あ、桃採っていこう」

 抜け目なくヒミコは言った。


 しかし、ムラに帰って二日後、ヒミコは発熱した。加えて全身の痛みに苦しめられた。まったく物が食べれなくなり、体はどんどん衰弱していった。

 ヒミコはサルの疫病がうつったに違いないと思った。森の奥へ行ったムラの子たちが死んだということが、頭から離れなかった。自分も死ぬのではないか……

 自分のそばには誰も近づけてはいけない。サルの死骸の上に落ちて触ったからうつったのだ。だから、どんなに苦しくても自分の身の回りのことは自分でやった。

 イロイは責任を感じ、食事や水を運んだり、常にヒミコの寝所のすぐ外で待機し、いつでも要望があれば答えられるようにした。昼夜をとはず待機する姿を見かねてムリテが言った。

「もう七日になる。夜も寝ずにここで待つとは……今日は寝なさい。私が代わるから」

「いえ、もとはと言えば、僕を助けて、谷に落ちてしまったのが原因。僕のせいです。もしも亡くなるようなことがあったら、僕も生きてはいられません」

 イロイはうつむいた。

「なにを言う! 人はそれぞれに天命というものがある。それはだれにも変えることはできない。もし、ここで亡くなるなら、それは姉の天命だ」

「だめです! 亡くなるなどということがあってはなりません!」

 顔を上げたイロイの目からは涙が流れていた。

「イロイ……わかった。気のすむまで世話をしてくれ」

「はい!」

 イロイの思いが通じたのか、その翌日から症状が少しずつおさまってきた。するとヒミコは猛烈な空腹を覚えた。がつがつと猪肉入りの粥を食べても一向におさまらない。とこしえに空腹感を覚える。

 違う、食べたいのはこれじゃない。でも、なにが食べたいのか、わからない……

 こけた頬にかさついた肌、うつろな目をしてヒミコはそのことばかり考えていた。

 イロイを呼び、うつろな目を向けた。

「食べ物を……」

 くぐもった声で言う。

「はい、ただいま用意をいたします」

 イロイは少し前に食べ終えた器を下げようとヒミコの傍らへ行った。その時、突然ヒミコが起き上り、イロイを突き飛ばした。どこにそんな力が残っていたのだろう。

「私の側に寄ってはいけない!」

 突き飛ばされたイロイの体と板張りの床との間に器が挟まれて割れた。尖った破片がイロイの腕に刺さり、赤い血が滴り落ちた。割れた器の窪みに腕からの赤い流れが貯まっていく。

 ヒミコの目に急に生気が宿り、イロイの腕に注がれた。イロイもその視線を追ったが、体は硬直し、動けなかった。

 ヒミコは腹這いになってイロイに近づき、割れた器に顔を近づけると、窪みに溜まった血を貪るようにすすった。

 なめるように器に溜まった血を平らげると、ふと我に返ったのか、飛びのくようにイロイから離れた。

「なんてことをしたのかしら。あさましい!」

 ヒミコは両手で顔を覆った。

「大丈夫です。僕とヒミコ様だけの秘密にしますから」

 イロイはにっこり笑った。

「ほかにお望みの食べ物はありますか?」

「桃を……」

 ヒミコはゆっくりと顔を覆っていた手を離した。

「イロイ、いつの間にそんなに大人びたの? あなたとろくに話もしないうちに具合が悪くなってしまって」

「これから話せます、ヒミコ様。今、桃を持って来ますね」

 イロイを見ながら、ヒミコはうなずいた。


 翌日からヒミコは急速に元気になって行った。こけていた頬はふっくらとし、かさついていた肌はしっとりとみずみずしくなっていた。

 イロイの血をすすってから体調が劇的に回復したのはあきらかだ。これはどういうことだろう?

 ヒミコは自分の体が不可解でならなかった。なにかが変わってしまった。

 血をすすった日から三日後には、ムラの有力者たちの集会にヒミコとムリテは母と共に出席していた。

 ヒミコとムリテの母親はこのクニで一番大きなムラの長をしている。ヒミコはムリテから姉さんと呼ばれてはいるが、ヒミコとムリテは双子である。

「今日は皆に承認をしてもらいたいと思い、集まってもらった。皆も知っての通り、私は年老いてからこの子たちを授かった。この子たちの父親は二人の顔を見ずに死んだ。この子たちももう十七、私は長の役目をヒミコに引き継がせようと思う。ムリテにはその片腕となってヒミコを助けてもらう。もちろんすぐにではない。まずは私の助手として仕事を手伝わせていく。その働きぶりを見て、皆が認めてくれるなら、ということだが」

 ヒミコとムリテは顔を見合わせた。二人は昨日母から知らされたところだった。二人でじっくり一晩話し合い覚悟を決めた。

「ヒミコはムラのだれよりも賢い。魏の言葉も解すし、決断力もある。それに重い病にも打ち勝った。強い運を持っているのだろう。今というわけではない。今後の仕事ぶりを見てからの判断だ。わしはいいと思う。皆はどうかな?」

 今はムラの若者の教育係をしている長老が言った。

「良いと思う。若い長は我らにも新しい風を入れてくれると思うぞ」

 賛同者が次々に了承をしていった。こうしてヒミコとムリテはムラ長候補生になった。


 そして、三年が過ぎ、ヒミコとムリテはムラ人の信頼厚い長になっていた。イロイもまた二人の忠実な助手として欠かせない存在となっていた。

 ヒミコはイト国を通じて帯方郡から魏の書物や器具などを取り寄せ、進んだ技術や知識を得た。井戸を掘り、耕地に等分に水が分配されるよう用水路を造り、新しい作物を導入し、ムラの生活を向上させるために奮闘した。桃もあの崖に生えていた桃の枝を採って来て、何本も挿し木をした。もちろん、根付いたのはそのうちのほんの僅かだが、やっと実をつけるまでになった。そして、鉄器を生産する工房も造り始めていた。

 ヒミコの働きは他のムラムラを束ねるクニの王にも知れ渡り、王は自分の後継者としてヒミコを指名した。王の死後、ヒミコはこのクニ、ヤマタイ国の女王に就任した。

 しかし、女王になったとて喜んでなどいられない。仕事は今までの数十倍になった。それまでは一つのムラのことだけでよかったのが、今は数十のムラのことを考えなければならない。

 二年をかけてヒミコはヤマタイ国を強力な一つのクニとして機能するよう、より結束を固めた。そのころ、鉄は重要度を増してきていた。

 そして、この鉄も要因の一つとなり、クニとクニとの争いが勃発するようになった。

 いまやヤマタイの周辺諸国は争いを繰り返すようになっていた。ヒミコが治めるヤマタイ国も、望みもしない戦いに巻き込まれていった。


「ヒミコ様! シマ国が攻めて来ました! 南の砦がもう落とされそうです!」

 シマ国はヤマタイ国の北側に隣接するクニである。

「わかった。兵を広場に集めよ。すぐに行く」

 ヒミコは髪を後ろで括ると工房で作らせた鉄の鎧を着こんだ。鉄の鎧と言っても、胸の前後面だけ鉄を使い、側面は硬い革の小片を鱗のようにつなぎ合わせてヒミコの体のラインに合わせてある。首近くまであると苦しくて動きにくいので、胸元はほどほどに開けてある。首近くまであると苦しくて動きにくいので、胸元はほどほどに開けてある。実用性と安全性とどちらを取るか悩んだ結果だ。

「姉上、本当に行く気ですか! 命を落としたらどうされるのです。あなたの代わりはいないのですよ!」

「心配しなくてよい。私は死なぬ」

「そんなこと……人は皆死にます。いつしぬか、です。今は死ぬ時ではありません! 今こそ姉上が必要とされている時です!」

「ムリテ、だから行くのだ。私が行かねば。皆の先頭に立たねばならない」

「それはわかっています。でも、先頭に立てば、死にます」

「言い争っている時間はない。イロイ行くぞ!」

「はい、ヒミコ様! ムリテ様、私がヒミコ様をお守りいたします!」

 自分で考案して作らせた槍の様な剣を持ち、ヒミコは広場に向かった。鎧を着たイロイが後に続く。

「ムリテ! あとは頼んだ」

「姉上!」

 ムリテを残し、ヒミコはイロイを連れて広場に出た。兵士たちはもう集まっている。

「皆、恐れるな! 我が先頭に立つ! このヒミコが矢面に立とう! さあ、我に続け!」

 ヒミコはイロイと兵たちを連れ南の砦ㇸと急いだ。


 砦の周辺はシマ国の兵士たちと砦を守っていたヤマタイ国の兵士たちとの間で激しい戦闘が行われていた。砦の柱には無数の矢が突き刺さり、倒れている兵士の体にも矢が刺さっている。シマ国から矢を射かけられて戦闘が始まったようだ。

「我に続けーっ!」

 ヒミコは剣を持って先陣を切った。

 ヒミコに触発され、続く兵士たちの士気は高かった。たちまちヤマタイ側が優位になり、ついに砦を奪還した。

 ヒミコは砦に上がり兵士たちの戦いぶりを称えた。と、その時、一本の矢が兵士たちの頭上を通過し、ヒミコの鎧の上縁をかすって胸に突き刺さった。実用性をとって、大き目に開けた胸元が仇になった。

 ヒミコはうつむいて自分の胸に刺さった矢を見た。奇妙な笑みを浮かべ、ヒミコは倒れた。

「ヒミコ様!」

 イロイはヒミコを抱き起した。

「早く、館へ……」

 ヒミコは途切れ途切れ言った。

 イロイはヒミコを抱き抱えたまま砦を下り、館へと連れ帰った。


「姉さん! だから言わんこっちゃない。死んだらだめです!」

 ムリテが駆け寄って言った。

「私は死なない。イロイと、二人だけに、させてほしい。誰も、入らぬように、見張っていてくれ」

 血の気の引いた白い顔を、ヒミコはムリテに向けた。

「どういう意味です? イロイになにができるというのです?」

 ヒミコとイロイの顔を交互に見て、ムリテは続けた。」

「イロイと、その、関係があるのか?」

「ムリテ様! どういう意味です?」

 イロイが咬みつくように言った。

「理由は、あとで、教える。早く! 私を殺したいのか?」

 ヒミコは苦しそうに言い、目を閉じた。

「いえ……」

 ムリテはヒミコトイロイを残して部屋から出ると、扉を閉めた。

 扉が閉められるとイロイは素早く行動を開始した。まずはヒミコの胸に刺さった矢を引き抜いた。ヒミコは低く呻いただけだった。見る間にヒミコの鎧は赤く染まっていく。

 次にイロイは自分の左手の袖をめくった。剣を引き抜き、その腕に当てた。スッと赤い筋が走り、血が滴り落ちて来た。その腕をヒミコの顔の上に持っていった。

 赤い滴がヒミコの顔に落ちて行く。唇に滴が乗ると、うっすらと唇が開き、舌先が滴を捕えた。滴は次々にヒミコの唇の隙間に吸い込まれていく。

 ヒミコの鎧を染めていた赤い流れはみるみる減って行く。それに反比例してヒミコの顔色には赤味がさしていく。

 やがて、ヒミコの瞼がゆっくりと上がった。そして、手が伸びイロイの腕をつかむと顔の上からどけた。

「ありがとう」

「もうよろしいですか?」

「おまえのほうこそ。早く何か食べなければ」

「私は大丈夫です」 

 イロイはめくった袖をおろした。

「ムリテを呼ぶか」

 ヒミコが言った。

「はい」

 イロイは立ち上がり部屋の扉を開けた。扉の向こうで背を向けて立っていたムリテは顔を向けた。

「お入りください」

 イロイの肩越しに、ムリテの視線は部屋の奥に向けられた。ヒミコは座っている。

「ど、どういうことだ……」

 ムリテは呆然とヒミコを見つめた。

「お入りください。説明いたします」

 イロイはムリテを中に入れると、外を確かめてから扉を閉めた。

「座りなさい」

 ヒミコが言った。

 ムリテはヒミコに視線を向けたまま座った。その斜め後ろにイロイも座った。

「姉さん、若くなりました?」

「そうか?」

「……傷は? どうなったんです?」

「傷は、もう治った」

「そんな! だって、矢が刺さってましたよ!」

 ムリテの目はヒミコの傍らに転がっている矢に向けられた。

「ムリテ、覚えているだろう? イロイに初めて会った日を」

「え、ええ、もちろん。姉さん、谷に落ちて」

「あの時私は疫病で死んだクロザルの死骸の上に落ちた。落ちて行く時にあちこちに傷もできていた。そして、二日後、高熱が出た」

「そうだ。死ぬのかと思った。心配したよ」

「あの時、私は死は免れたがひどくやつれた。それは知っているな?」

「ああ、でも、回復と同時にすぐに元通りに、戻ったじゃないか」

「おかしいと思わなかったのか? あんなひどいやつれが一日二日で治ると思うか?」

「ま、まあ、たしかに、速いなぁとは思ったけど」

「あれは、イロイの血を吸ったからなのだ」

 なにを言ったんだ?という顔で、ムリテはしばしヒミコを見つめた。

「イロイの血をすすったのだ」

 もう一度ヒミコは言った。

「血を? 血を吸ったぁ!」

 ムリテは目を見開いてのけぞった。

「体が変わったのだ。あの病気の後、血を吸うと体調がよくなる」

「体調がよくなる……傷、まで、治ると?」

「そうなのだ」

「で、若返ると?」

「そう」

「そんな、え? まさか、信じられない……」

「目の前の状況を見ても?」

 ムリテは目を伏せると、フゥ吐息を吐いた。

「信じない、わけにはいかないな。でもなぜ?」

「わからない。魏には華佗と言う死人をも生き返らすと言われる名医がいるそうだ。書いた書物が手に入ればなにかわかると思うのだが。なかなか手に入らない」

「そうですか……ああ、つまり、イロイとの関係とは、こういうことか」

 イロイに顔を向けてムリテは言った。

「はい。ヒミコ様と私だけの秘密にしておりました」

 イロイが答える。

「わかった。ともかく、これからは三人の秘密ということに」

「承知しました」

 イロイは頭を上げた。


 次の朝、ヒミコは広場に出てヤマタイの民に元気な姿を見せた。

 女王ヒミコが矢で射られたと言う情報はもうすでに広まっていたので、ヒミコが死んだと思っていたシマ国の密偵も驚いた。ただちに王に報告した。この情報はクニからクニへと波紋が広がるように知れ渡っていった。


『ヒミコは鬼人、鬼道を習得して生死さえも操る』


 死ぬということを鬼籍に入るとも言う。鬼とは死を意味する。つまり、ヒミコは一度死んで再び生き返った人、という意味だ。それは鬼道という生死を操る術を習得したからだというのだ。ヒミコが魏から書物を取り寄せていることは周知のことであった。

 死から蘇ったというヒミコは周辺国の王たちの興味の的となった。王たちはヒミコの治めるヤマタイ国に密偵を送り内情を調べさせた。するとヒミコの優れた行政手腕が各国の王の知るところとなった。王たちは密かに集まりながら意見をまとめていった。そして、代表者をヒミコのもとに送った。

「ヒミコ様、私は二十八か国の王たちを代表してまいりました。我々はヒミコ様の傘下に入る所存でございます。ヒミコ様には連合国家の女王になっていただきたく、お願いにあがりました」

「連合国家……つまり、ヤマタイ連邦の代表者ということですか?」

 後ろに控えていたムリテが言った。

「は、はい。ヤマタイ連邦の女王陛下に就任していただきたく、お願いにあがりました」

「私が女王になれば、クニ同士での争いはなくなるのだな?」

「我らはヒミコ様のもとに一つになりますゆえ」

「ならば、受けよう」

 この日より、ヒミコは周辺諸国を束ねた連合国家ヤマタイ連邦の女王となった。二十八国が女王の支配下に入った。紀元一九九年、ヒミコ二十二才の冬のことであった。

 宮殿は、周囲を塀で囲まれ、要所要所には衛兵が立ち、警備を固めていた。もちろん、見張り台もある。塀の外側には宮殿を守る兵士たちや宮殿で働く者たちの住居があり、いろいろな工房も建てられている。このまま発展していけば、宮殿を取り囲んで街ができる。

 宮殿は東西南北の四つの棟に分かれていた。

 東棟にはムリテが常勤し、役人たちに会って直接指示を出し、連邦外から来る使節とも会い、外交もこなした。もちろん、指示を与えているのは西棟に住まうヒミコだ。東棟には離れのような棟があり、そこは外国から来た使者の宿泊所となっていた。

 西棟にはヒミコの住いと書斎兼研究室と書庫があり、北棟には厨房が、さらに南棟には侍女たちの部屋があった。そこには常時百人程の侍女たちが居住していた。基本ヒミコの身の回りの世話係なのだが、彼女たちには、知られてはいけないもう一つの重要な任務があった。

 それはヒミコに供血するための要員である。しかし、これは供血する侍女たちにも知られてはならないので、血を採取する際には眠らせた。ヒミコは念願の華佗の書を手に入れることができたので、それを手引きに薬草を探し回り、チョウセンアサガオを始めとして、数種の薬草を合わせ、半日ほど眠り続ける薬を作った。侍女たちは何も知らない間に採血されることとなった。唯一、手首につけられた小さな傷だけが残りはしたが。この傷はいつのまにか、ヒミコの元で働くと鬼人ヒミコによって、知らない間に浸けられる聖痕として、若い女子のステイタスシンボルとなってしまった。

 これにより、ヒミコは年月が経ってもいつまでも若々しい姿でいられることとなった。

 ただ、イロイの血に比べて効力はかなり弱いように思われた。それでも、十日に一度飲み続けることによって、若さを保つことはできた。以前から桃は好きだったが、血を飲んだ臭いを消そうとするかのように、ヒミコはよく桃を食べた。あの崖に生えていた桃である。

 イロイの血は特別なのだろう。と、ヒミコには思われた。だが、なにがどう違うのかはわからなかった。

 ともかく、一人の侍女からは一回しか採取しないので、侍女の雇用期間は数年に限られていた。つまり、常に若い女子が侍女として仕えていたわけだ。

しかし、ヒミコは直接人々と接することはほとんどなかった。それは鬼人ヒミコはあまり姿をさらすべきではないと考えたからだ。秘密のベールで覆っておいたほうがいいこともある。傘下のクニは皆男王である。秘密のベールで覆って、ヒミコが偉大な力を持っている、という妄想を抱かせておいたほうがいい。

 だから、たいていのことはイロイが間に入り、ヒミコの言葉を伝えた。

 世間ではヒミコは全く宮殿から出ず、一人の男だけが宮殿に入ることを許されていて、外界との仲介を果たしていると思われていた。

 実際は各棟は屋根付きの廊下でつながれていて、重要な使節にはヒミコが直接出向いて会うこともしていた。

 ヒミコは海外の外交にも力を入れ、魏にも再々使節を送った。

 

 ヒミコがヤマタイ連邦の女王になって早や二十年がたった。争いはなくなり、その分、農作物の収穫は増え、生活道具も洗練され、文化度も向上してきていた。

 しかし、ここに新たな問題が起こった。

 事の発端はクナ国から使いが来たことだった。

 クナ国はイロイの出身地である。ムリテが応対した。

 その日の夜、ムリテは西棟に赴き、ヒミコを探して書斎に行った。

 いつものごとくヒミコは細長い座卓に向かって魏から取り寄せた書物を読んでいた。卓の上には巻かれた竹簡や紙の書が置かれていた。

「なにか用か? 竹簡はかさ張ってしょうがない。早く紙が普及するといいのだが」

 書から目を離さずに言った。ヒミコは四十二才になっているはずだが、見かけはどう見ても二十代だった。ムリテは落ち着きのある年相応の風格を備え、もはや双子とは思えなかった。

「イロイはどこです?」

「自分の部屋にいなかったか?」

 ヒミコの目は相変わらず書に向けられたままだ。

 イロイの部屋はちょうど西棟と東棟の間にある。ムリテが来た通り道にあたる。

「いなかったが」

「ではもうすぐ来るのではないか?」

 ヒミコが言ったとおり、そこにイロイが入って来た。イロイは三十七才、侍女たちの熱い視線を浴びる颯爽とした大人の男になっていた。

 改めてイロイを見てムリテは思った。確かに王の風格がある。

「イロイ、大事な話がある。ここへ」

「はい」

 イロイは長い卓の端の後方に控えた。

「そんなところに座らずにこっちへ。今日は家族として話をしよう。姉さん、イロイは弟みたいなものだものな」

「そうよ。イロイ、隣へ」

 ヒミコとイロイは並んで座り、向かいにムリテが座った。

「今日、クナ国から使いがきた。なんの話だったと思う?」

 イロイの顔色が変わった。

「知っていたのか?」

「すいません。黙っていて」

「姉さんは知ってた?」

「ああ、だいたいは。イロイはクナ国王の兄の息子だろ?」

「まったく……知らなかったのは私だけか。では、どうする?」

「私はクニに戻る気はありません。ここでヒミコ様、ムリテ様に今まで通り仕えます」

「それでいいのか?」

 ムリテが聞く。

「あのクニ、クナ国は私の家族を皆殺しにしたのです。私も殺されるところでした。あなた方に救われなければ、あの崖で死んでいました。そんなクニにだれが戻ります?」

「だが事情は変わったぞ。今、クナ国王は瀕死の状態だ。側近たちは、後継者を探している。今なら次期王として迎えられる」

「クナ国王は、自分が王になる為に実の兄である私の父を家族もろとも殺したのですよ。帰ったらまた命を狙われます。私のクニはもはやここなのです。私はあなたたちと一緒にいたいのです!」

 どうしたものかとムリテは思う。

 クナ国からの使者はイロイにクナ国に戻って王になってほしいと言ってきたのだ。殺されたイロイの父は、当時、最も王にふさわしいとして人気が高かった。そのため王位を狙う弟に殺された。だから、いまだに兄の血筋を王にと願う声は高い。なおかつ、その次男であったイロイは最も父から期待されていた息子だったという。現王の兄、つまりイロイの父、を王にと押していた信望者は息子であるイロイを王にと切望している。

 クナ国はヤマタイの傘下のクニではない。だから、あまり交流があるわけではない。イロイは家族と共に殺されたと思われていた。それが、現王の死期が近いとなって、王の兄であるイロイの父の信望者たちが二十四年前の事件を再調査したのだ。それは死体が一つ見つかっていなかったからなのだが。その結果、次男が唯一生き残っており、ヒミコの寵臣となっているということがわかってしまったのだ。

 返さなければクナ国に恨みを買う。でも、もはや家族のようなイロイを無下に返すなんてことはできない。本人がいやがっているのだから。

 姉、ヒミコもイロイを返すはずがない、とムリテは思う。ヒミコとイロイはもはや切り離せぬ絆で結ばれている。愛とかそういうものでもない。もはや二人で一人のような。

「姉さんの思いも一緒?」

「そうよ」

「わかった。しかし、クナ国ともめるかもしれない」

「もしも最悪の事態になった時は、策がある」

 ヒミコは二人の顔を見ながら言った。

 姉さんなにを考えている?

「どんな策?」

「それはその時になったら言う」

 全くこの姉は底知れないとムリテは思った。


 ムリテが思ったように、その後、クナ国とヤマタイ連邦との間はぎくしゃくしだした。

 特にヤマタイ連邦とクナ国の国境でいさかいが絶えなかった。ただ、それほど大きな戦いに発展しないまま収束した。大きな戦いにはならないものの決して友好的になることはなかった。祖国を裏切ったイロイとそれをそそのかしたヒミコ、という図式がクナ国ではいきわたっていた。上層部は民がイロイとヒミコを嫌うよう仕向けていたのである。

 そんなことを繰り返しながらさらに二十数年が経過した。クナ国との関係はこんな状態で維持されて行くのかと思われていた頃、変化が起こった。

 イロイがクナ国に誘拐されたのである。

 その日、イロイは数日前に起こった国境での争い後の現地視察に出向いていた。現状をヒミコに報告して、今後の対策を練る為である。この地は争いを防ぐために土塁とその上に木柵を施し、かつ見張りを置き、敵の侵入に備えていた。なのに敵に侵入された。その原因究明にイロイが訪れたのだ。イロイはすでに六十半ばになっていた。つまり、ムリテは七十を過ぎていた。むろん、ヒミコも同様であるが、見かけ、いや、中身も体力知力も二十代を保っていた。クニの民からは、年をとらない鬼人と言われていた。もちろん、尊敬を込めてである。

「イロイの安否はわかっているの?」

 ヒミコはいらいらとしながら言った。

「はい、姉上、生きていることは確認できています」

「どこに?」

「おそらく、クナ国の王宮の中です」

「拷問を受けているとかではないのだな?」

「たぶん」

 歯切れ悪くムリテは言う。

「はっきりせぬのか!」

「こちらもできるかぎりしているのです。姉上」

 ムリテは皺が増えた顔を曇らせて言った。

「イロイももう年なのだ。体力も落ちている。いつまでもちこたえられるか」

「それは……」

 ムリテは言葉が続かなかった。

「私が行こう」

 ヒミコが言った。

「姉上! なにを言います!」

「私は顔を知られていない。これまで、できるだけ人前に出ないようにしていたのが役立つ。私が若く見えるという噂は広まっていても、顔はわからない」

「危険です! 姉上がいなくなったら、この連邦は!」

「私は簡単には死なない。知っているだろう?」

「いや、しかし、それは……」

 ムリテの言葉の語尾が消えていく。

「ぐずぐずしては射られない。行くぞ」

 ヒミコは壁際の棚から、黒地に赤い線で模様が描かれた漆塗りの丸い入れ物を取り出し、蓋を開けた。銅の鏡を取り出すと、鏡台に立てかけた。櫛を取り出して髪を取り分け、鏡を見ながら結っていく。髪を二つに分け左右対称に結い上げると、衣裳も変えた。青い地色で襟元に豪華な模様が入っている。右肩には月のヒキガエル、左肩には太陽の三本足のカラスが刺繍されている。袖を通すと体に巻き付けるようにして、細い帯で縛った。ヒミコの細身の体によくなじみ、動きやすそうだ。

「これで、倭人には見えないだろう?」

「お見事です。姉上」

「今、大陸は騒乱の最中だからな、亡命してきて、イロイの妻となったのだ」

「なるほど」

 ムリテはヒミコを眺めながら言う。

「もはやヒミコではありませんな」

「そうだな……では行ってくる」

「一人で、ですか?」

「ああ、だが、馬で行く」

 数年前からヒミコは帯方郡を通して魏から馬を輸入していた。今では牧場で数十頭を飼育している。本当は魏の西の果てで産するという大型の馬を買い入れたいのだが、魏が内乱状態で混乱していて、それができないのが現状だ。

「まいったな……そうですね、姉上は鬼人でしたね。二十代半ばの体力充分の女子です。馬を出して、門まで私が付き添います。誰だと思われますからね」

「お願いね」

 ヒミコは可愛く言った。完全に別人になっている。

 ムリテは鞍を乗せた馬を引いて来させた。ヒミコに付き添って、見張り台横の門まで行き、馬にまたがって走り去るヒミコを見送った。

「ムリテ様、あの方はどなたですか?」

 門を守る衛兵が聞いた。

「私の大事な客人だ。戻って来たら、すみやかに開門して中に入れるように」

「承知いたしました!」

 衛兵はびしっと姿勢を正して言った。

 姉上、成功を祈ってます。ムリテは走り去る馬上のヒミコに向けて心の中で言った。


 ヒミコは馬に乗り、森の中を駆けて行く。

 半日駆けてクナ国へと入った。ヒミコは用心しながら進んだ。

 王宮へと近づくと見張りの兵が多くなってくる。ヒミコは馬から降り、木の陰に隠れながら暗くなるのを待った。

 周囲が薄暗くなると馬を木立の中に残し、王宮に向かった。

 ヒミコはわざとふらつきながら王宮の門に向かって歩いて行った。すると、それに気づいた守衛が近づいて来た。ヒミコは守衛に駆け寄ると言った。

「イロイ、どこ?」

「だれだ?」

「イロイ、ここにいる?」

 わざとカタコトの言葉でヒミコは言った。

「会わせて……」

 ヒミコは守衛にすがりついた。

「お願い!」

「だれなんだ?」

「妻、です。イロイ、の」

「妻……ちょっと待て」

 そう言うと、他の兵を呼び、ヒミコを見張るように言うと、門の中へと消えた。

 しばらくすると、明らかに見張りの兵たちとは違う服装の背の高い男が現れた。位は上なのだろうが、品がない。年の頃は三十代後半。鋭い目つきでヒミコを見た。

「イロイの妻なのか?」

 ヒミコはうなずいた。

「ヤマタイの者ではないのか?」

「海、を、こえて」

 ヒミコは言った。

「大陸からきたのか……」

 男はヒミコの体を上から下へと目で追った。

「わかった。会わせよう。ついて来い」

 ニヤリと笑みを浮かべて男は言う。

 ヒミコは男について王宮に入って行った。王宮にはいくつかの建物があり、そのうちの一つにヒミコは連れて行かれた。ヒミコの宮殿のように廊下で建物同士が繋がっているわけではなく、それぞれが独立している。屋根が垂れ下がるように大きい。

 古い形式だな、とヒミコは周囲を見ながら思った。

「ここで待て」

 ヒミコを部屋に入れると男は扉を閉めた。ヒミコはすぐに扉を開けたが槍を突き付けられた。扉の外には逃げられないよう見張りが立っていた。

 しばらく待つとあの男がやって来た。

「イロイはどこ!」

 ヒミコは男の胸元をつかんで言った。

「イロイか。そうだな、私と一晩ともにすれば会だわせてやろう」

 その直後、ヒミコは男の頬を平手打ちした。

「ばかにするでない!」

 ヒミコは後ずさりすると男を睨みつけた。

「ほぅ、威勢のいいことだ。それにしても、まあずいぶんと若い妻を娶ったものだ」

 男はヒミコの姿を眺めながら言う。

 ヒミコは男を睨みつけたまま黙っている。

「わかった、会わせよう。本当の妻か確かめる必要もあるしな」


 男はヒミコを王宮のはずれに立つ建物に連れて行った。建物の前には守衛が立っている。木の段を上がり、扉を開けた。

 イロイは部屋の奥の壁にもたれて、うなだれて座っていた。

「イロイ!」

 ヒミコは叫び、うなだれて座っていたイロイは顔を上げた。驚いた表情をしたが、声は出さなかった。

 ヒミコはイロイと目が合うと合図をした。状況を読め、と言う意味だ。

 イロイは目を見開くと言った。

「ロウ! なぜこんなところへ……」

 ロウという名前にしたのか、とヒミコは察した。

「あなた、会いたくて!」

 ロウ、つまりヒミコはイロイに抱きついた。

「なるほど、若い妻を娶って幸せいっぱいだったってことか」

 へっ!と言う顔をして男は言った。

「私たちをどうするつもりだ? いや、それより、今まで穏便にやってきたのに、なぜ今こんなことをするのだ?」

 イロイが言う。

「穏便? そうだな、いままで腰抜けどもがこのクニを動かしていたからだ。裏切り者のあんたを生き延びさせ、ヒミコを野放しにしてきた。やつらはすべて粛清した!」

 語気荒く男は言った。

 クーデターが起きたのだ、と、イロイとヒミコは理解した。

「おまえとヒミコの首を取り、クニのやつらに見せつけてやる! その後はヤマタイに宣戦布告だ!」

「勝ち目はないぞ」

 イロイは言い聞かせるように言った。

「ヤマタイはバケモノヒミコでもっている。あいつがいなくなれば、ガタガタだ」

 ある意味当たっているとヒミコは思った。

「ヒミコが、死ねばいいのか?」

 ロウに扮しているヒミコが言った。

「ヒミコが、死ねば、イロイを、助けてくれるか?」

「まあ、考えてもいい」

 男は抱き合う二人を眺めながら言う。

「ならば、我が殺そう」

 ロウに扮したヒミコはイロイから体を離しながら言う。

「な、なにを言う!」

 イロイが叫ぶ。

「そんなことできるのか? おまえが殺されるかもしれないぞ」

 男も驚いた顔で言う。

「我は戦乱の中を逃げ延びて来た。生き延びるために人を殺めたこともある。宮殿の中で殺めることなどたやすい。みな我を信用しているからな」

 ロウに扮したヒミコは男を見据えながら、落ち着いた声で言った。

「な、なにを言うのだ!」

 イロイはうろたえたように言う。

「おもしろい。だが、どうやってそれを確かめる?」

 男は腕組みをして頭を傾けた。

「我と一緒に兵を率いてヒミコの宮殿まで行き、宮殿の塀の周囲を兵で囲んで見ていればいい。ヒミコが死ねば宮殿は大騒ぎになる」

「もし、失敗したら、こいつを使ってヒミコを引きずり出す」

 男は腕を伸ばすとイロイを指さした。

「失敗などしない!」

 ロウ、つまり、ヒミコは言い切った。

「ヒミコはこいつがずいぶんと大事なようだからな。おまえがヒミコを殺そうという気持ちもそこからか?」

 嫉妬がらみと思ってくれるならより都合がいい。と、ロウに扮したヒミコは思ったが、悟られないよう、表面上は男を無視した。


 翌日、ロウつまりヒミコとイロイ、それと兵団を率いて男はヤマタイのヒミコの宮殿に向かった。着いた時には夜になっていた。

「ここで、待つがいい。夜明けには戻ってくる」

 ロウつまりヒミコが言う。

 ヒミコの宮殿は南側に広がる水田と畑を見下ろすように丘の中腹に立っている。宮殿の北側の丘はさほど高くはないが傾斜は急で森になっている。木につかまりながらなら、宮殿を見下ろせる。

 傾斜が急で、かつ、樹木が密生しているということで、攻めにくいとみなし、ヒミコは宮殿の立地としてここを選んだのである。

 ロウとなったヒミコは急な斜面を下りて行き、南側に回って門に向かった。松明が焚かれているところどころはボゥッと明るい。

 門の両側は松明が焚かれているので、森の中で見ている者にも様子が少しわかる。門のところまで来たロウはすんなりと門から入って行く。

「ほう、あいつ、中に入ったぜ」

 ロウをじっと目で追っていた男は感心したように言う。

 イロイは座り込みうなだれている。ヒミコの計画は察しているので、それに合わせた演技をしなければならない。

 夜は更けて行く。ロウつまりヒミコは戻って来ない。

「戻って来ない。なんの動きもなさそうだぞ」

 いらついたように男が言う。

「夜明けまでと言ったぞ」

 頭を抱えて下を向いたままイロイは言った。


 やがて、東の空が明るみを帯び暗闇がみるみる退散し始めると、ロウつまりヒミコが門を出てこちらへやって来るのが見えた。

「戻って来た!」

 男が言った。

 しばらくして、ロウが男のもとにやって来た。

「ロウ……」

 イロイは立ち上がるとやってきたロウを抱きしめた。

「なにも変化はないぞ」

 宮殿を見下ろしながら男は言う。

「まだ気づいていない。もうすぐ侍女がヒミコの寝所に行く。そこで気づく」

 たしかにそれからまもなくして、宮殿内の状況が一変した。慌ただしく動きまわる人々、叫んでいるような声も重なっている。重なっているがためになにを言っているかはわからない。

「確認したいなら、偵察を出せばいい」

 と、言いながら、ロウつまりヒミコは懐から短剣を出すと、鞘を抜いて男の顔の前に差し出した。短剣の刃には血糊がついていた。

「わかった」

 男が言った。

「それではイロイを、解放してくれるな!」

 ロウに扮したヒミコは期待するような目を男に向けた。

「ああ」

 と言った直後、男は剣を抜くとイロイの胸を刺した。

 ヒミコは絶句し、一瞬体が固まった。

 男が剣を抜くと、イロイはどさりと倒れ、剣を抜かれた痕からは血液がどくどくと流れ出した。

「なんてこと!」

 ロウつまりヒミコは叫んだ。

「これで解放してやったぞ! 皆の者、帰るぞ!」

 イロイの胸から引き抜いた剣を振り上げ、勝ち誇ったように男は言った。

 男たちが引き返すのは早かった。


「イロイ!」

 ヒミコは倒れているイロイを抱き起そうとした。

「ヒミコ様、私もあの時、熱が出たのです」

 喘ぎながら、イロイが言った。

 一瞬、なんのことだかヒミコはわからなかった。頭をめぐらせた。

 次の瞬間、ヒミコはイロイを抱き起すのはやめ、懐にしまった短剣を出した。鞘から抜き、血糊を自分の袖でふき取った。

 袖をまくり上げ腕を出すと、短剣で一筋傷をつけた。傷は見る間に赤い筋になり、次々に血が滴り落ちて来る。

 ヒミコはその腕をイロイの顔に近づけた。滴る血をイロイの唇に落としていった。

 しばらくすると、イロイの胸から流れ出る血液は明らかに減り、やがて、止まった。そればかりではない、イロイの顔から皺が消え、皮膚が張りを取り戻した。白髪がはらはらと抜け、黒い髪が生えてきた。

「これでおまえも鬼人だ」

 笑みを浮かべてヒミコは言った。

「おまえもクロザルから病をうつされていたのだな。だから、おまえの血は他の者の血と違っていたのだな」

「そうではないかと思っていましたが、黙っていました。あの時、私の血を飲んだので鬼人になったのかもしれません。他の者の血であったなら、一時的なもので、時間がたてばふつうの人に戻っていたのかもしれません」

 若々しい声でイロイは言った。

「それでは、おまえにさらに感謝をしないとな」

「いえ、そんな」

「しかし、これからはおまえも鬼人だ。また共に歩めるな」

「はい!」

「さてこれで、私もおまえも死んだ。新局面を迎えたわけだ。ムリテを入れて策を練ろう」

 イロイの若々しい声が響いた。


 宮殿に戻ると、守衛が怪訝そうな顔で二人を見た。

「ムリテを呼んでほしい。あの方が我らをだれか知っている」

 守衛は塀の中に消え、しばらくしてムリテが現れた。二人を見ると驚きはしたが、すぐに理解をしたようだ。

「部屋で話そう」

 ムリテはヒミコとイロイを宮殿の書斎へ連れて行った。ヒミコのお気に入りの部屋である。

「イロイも鬼人になったというわけか。そうだな、あの時、イロイは傷だらけの手でサルの死骸と接触した姉上の衣服に触ったからな」

「いや、たぶん、私がイロイの手を体から離そうと、つかんでしまったからだと思う」

 昔を思い出したかのようにヒミコが言う。

「ああ、そうだったな」

 ムリテは二人を見ながら言った。

「話を勧めよう。それでだ、しばらくはムリテが私の代理として治めてほしい」

「いや、私は姉上ほどの技量はない。無理だ。また争いが起こる」

「それでいい」

「え?」

「私がまた女王として立つ」

「だが、生き返ったなどと言ったら……それはマズイですよ」

「ヒミコではない。親族の娘としてだ。もっと若くてヒミコの面影を残しているとなったら、民は受け入れる」

「なるほど」

 ムリテはふんふんと頷きながら言った。

「で、イロイは?」

 ムリテはイロイに顔を向ける。

「イロイは若い女王の護衛として、ついて来た。そうだな、名はトウマ。トウマ国出身だ」

「安易な名前です」

 イロイが言う。

「気に入らないのか?」

「いえ、名などなんでもいいです」

「これで年寄りは私一人だ」

 ムリテが二人を見ながらおかしそうに言う。

「そう、おまえだけがマトモな人間だ」

 ヒミコが言った。

「そうだ、魏に使いを出してほしい。クナ国との争いがあり、その最中にヒミコが死亡したと。これでヒミコの死は公然の事実となる」

「いかにも姉上らしい」

 ムリテはつぶやいた。


 ひと月後、日食が起こった。

 これはたんなる天体現象の一つであることをもちろんヒミコは知っている。だが、一般の民はそうではない。世の中になにかが起きる前触れなのではないか、と思われたりする。

 ヒミコはこれを変化の契機として利用することにした。

 その翌日、新女王の就任をムリテに告げさせた。

 新女王の名はイヨ、設定は十三才とした。もちろん、血を吸い十三才の設定にふさわしい体にした。イロイ改めトウマは十八才。二人は連邦の民にすんなりと受け入れられた。

 こうしてイヨは前女王ヒミコに負けない治世をした。当然のことだが。


 やがて、十五年の月日が経過した。ムリテは老衰のため九十才でこの世を去った。亡くなる三年前には政治から退き、それ以後執筆に専念していた。

 イヨとなったヒミコはそのまま年を重ねた。二十八才になっていた。トウマとなったイロイは三十三才。二人ともこのまま人として寿命を全うしようと思っていた。


 その日、ヒミコつまりイヨは農場の畑を見回っていた。自身が研究している新作作物の実験農場である。新しく改良した芋を調べようと、葉をかき分け、根本近くの茎をつかんだ。その時、手の甲に鋭い痛みを覚えた。手を抜いた瞬間、草の間から縄目模様の細長い物体が滑るように去るのが見えた。手の甲には小さな穴が四つ。側にいた侍女が悲鳴を上げた。

「毒蛇です!」

「騒がなくてよい!」

 イヨつまりヒミコは言い、自分の書斎に戻り、トウマとなったイロイを呼んだ。

 毒蛇に咬まれようと平気だとヒミコは思っていた。自分は鬼人である。血さえ吸えば毒など消える。それもイロイの血なら。

「どうされました?」

「毒蛇に咬まれた。すまないが、おまえの血をもらいたい」

「承知しました」

 こうしていつものように血を飲み、いつものように傷は塞がり、傷周辺の腫れと内出血はなくなった。だが、そのままヒミコは倒れ込み意識を失った。

 イロイは動揺した。まさかヒミコが死ぬなんてことが……

 しかし、ヒミコの意識が戻ることはなかった。肉体はそのままだ。腐ることもなく、頬にわずか赤味さえさしている。ただしそれだけだ。他に生きている証はない。胸に耳を押し当てても鼓動は聞こえない。呼吸もしていない。

 毒蛇の毒が鬼人となったヒミコの体になにか作用をしたのだろう、とイロイは思った。

 これは死なのだろうか?

 いつか生き返ることがあるのだろうか?

 ……わからない。それでも、生き返る可能性が少しでもあるなら、見守り続けよう。

 ヒミコの体は石棺に納められ地中の石室に収められた。

 そして、イロイは姿を消した。


 月日は流れ、二十一世紀。

「先生! ありました! 入口が!」

「あったかやはり」

 ジーンズにブルゾンを羽織った若い教授が丘を下りて学生の傍らに来た。

 長い睫毛の大きな目が顔を若く見せているが、三十才はいっているだろう。

「この中にあるのか……」

「きっとありますよ! 三馬須先生どうぞ」

 学生は掘られてできた通路の壁に背中を寄せ、若い教授に場所をゆずった。

 三馬須はライトを持ち、入口に続く狭い通路を進んで行った。通路に自分の心臓の音が響いているようだ。

 あの男の言ったとおりだ。本当にあった。どう考えたらいいのだろう?

 ……いやそれどころか、あの古文書に書かれていたことが本当か証明される。いや、ここは地下だ。そんなことはありえない。しかし……知るのが恐ろしい気持ちもある。

 三馬須は通路を抜け、地下の石室へと入った。

 ライトで石室の中を照らす。

 石室の中央に白い石でできた棺があった。

 三馬須の心臓はもう飛び出さんばかりだ。行きたいのに足が動かない。

 突然、後ろから光を当てられた。「わぁ!」と言って三馬須は振り向いた。

「間に合った……」

 三十代後半のテラコッタ色のスーツ姿のスリムな男性が現れた。

「投馬さん!」

 三馬須は持っていたライトを落としそうになった。

「この時を待っていた」

 投馬は棺に近づくとライトを床に置いた。棺の蓋に手をかけ押していく。ズズズズと音をたてながら、蓋がずれていく。中が見えるくらいに斜めに蓋がずれた。

 三馬須が棺の中をライトで照らした。

「あぁぁぁ……」

 三馬須はうめくような声を上げた。

「こ、これは、どう理解したらいいか……」

「変わっていない。やはりな」

 投馬がつぶやくように言った。

「えっ? なんですって? あなた、なにか知っているんですね? この発掘のスポンサーになった理由って……」

 三馬須の言葉の語尾が消える。

「もちろん、彼女を再生させるためだ」

「はっ?」

 三馬須は呆然と投馬を見つめた。

 そんなことはおかまいなく、投馬は蓋をずらしていく。

「ボーッとしてないで手伝ってくれ!」

「は、はい!」

 投馬の勢いに三馬須はライトを床に放り出し、一緒に蓋を押した。やがて、ズズズズッシーン!と石室に音を響かせて蓋が落ちた。床に転がったライトは石棺と二人を照らしている。

 投馬は上着を脱ぎ、シャツの袖をまくった。

 腕を出すと、ポケットから小さな折り畳みナイフを出し、自分の腕に当てた。スッと赤い筋が走った。

「なにをするんです!」

「見てろ」

 投馬は傷をつけた腕を棺の中に入れた。三馬須はライトを拾い石棺の中を照らす。

 滴る赤い滴はヒミコの唇に落ちて行く、唇がわずかに開いた。赤い滴は吸い込まれるように中に入って行く。

「な、なんですかこれ……」

 三馬須の声は震える。

「彼女の双子の弟がきみの祖先だ。あの古文書を書いたのもな」

 投馬は三馬須に顔を向けた。

「えっ!」

 三馬須はライトを持ったまま、ふらふらとよろめくように後退ると石室の壁にぶつかった。そのまま、へなへなと座り込んだ。

 やがて、棺の中のヒミコの目がゆっくりと開いた。

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