ジュリアとノア 過去4 姉の裏切り
俺とジュリアが組んだことで、最強の魔力、最強の知力が集まった。
もちろん、協会は放っておかなかった。
その強大な力は危険だから人間界へ降りろと言ってきた。
ふざけんな、という話だ。もちろん断った。
だが。
ジュリアと俺は、最終的に了承した。ジュリアの・・・、姉が、人質に取られたのだ。
「おい!どういうことだ!?」
「わしは、知らんの。」
「ざっけんな!お前らが・・・っ!」
俺が協会本部に乗り込み、狸爺たちをシメていると、
「ノア、もういいわ。人界へいけばいいんでしょう。」
「お前まで・・っ!」
協会の何千人もの奴らから、姉を奪い返すのは無理だった。
第一、下手に動けばジュリアの姉に何をされるか分かったものではない。
・・・、今考えれば、助け出せたわけがないと分かる。
本人にその意思がなかったのだから。
人間界へ行くという内容の契約書にサインしたジュリアの素へ現れたのは、ジュリアの姉だった。
姉妹の感動の再開、になるはずだったのだ。ジュリアは姉のために自分を犠牲にしたのだから。
だが。
「ジュリア、ありがとう。自慢の妹を持って、わたくしはとてもうれしいですわ。」
言葉だけ聞けば不自然なところなどない。
ただ、顔が、不自然すぎた。
「姉、様・・・?」
その顔は、笑顔。邪気の一つも見つからない、聖女のような。
だが、瞳の中にこの世の憎悪をすべて詰め込んだような、そんな笑顔だった。
矛盾に歪むその美貌は、ジュリアを見下していた。それなのに、少し混ざるのは羨望。
ジュリアに対して、申し訳なさなんて感じてもいない。
(本当に、これがジュリアの慕っている、姉・・・?)
「まだわからない?あなたは純真だから無理ないかしら・・・?あなたたちはねぇ、ハメられたのよ。協会と、私に。私は、自ら進んで人質になったの。ジュリア、あなたを人界に降ろすために。」
「そんなっ、そんなことっ、あるわけ・・ねぇだろ!実の妹だろ!?」
「そちらのあなたは使い魔さん?ずいぶん青臭いのね。かわいらしいわ。・・気に入らない。」
「なんだと!」
純真無垢、穢れの一つもないような顔でにっこり笑う。
「消えて?」
これで、ジュリアの、何かが壊れた。
ちなみに、姉は嫌味なんて言いません。文句いうときは直球です。でも強いものとかには損得でついていくタイプ。