ジュリアとノア 過去1
零点五秒で熟睡はすごいですよね。
魔女だから?
ガチャン。
ドアが開き、ジュリアが帰ってきた。
「おかえり。」
「ただいま。・・・、で?」
すぐに汐莉のことを聞いているのだと理解した。
「あー、実はなぁ、・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・とゆーことだった。」
ジュリアはしばらく思案したようだったが、顔をしかめていった。
「面倒くさい・・・、とてつもなく面倒なことをしないといけなくなるわ。やる気がでない・・・、はぁ、寝たい・・・、働いたのに・・・」
ジュリアは部屋へ行き、零点五秒で熟睡した。
そう、ジュリアは魔界の魔術師協会に行っていたのだ。魔界・・・、俺たちはそこから逃げてきた。
逃げたんだ、ジュリアと二人で。
俺はもう気の遠くなるほどの年月を生きてきた。
それだけ長く生きていれば、問題の一つや二つ、おこるものだ。
俺は、そのころ、魔界を揺るがす大悪魔ノアールとして、好き放題やっていた。
まぁ、若気の至りというヤツだ。
いい気になっていたわけじゃない。いろいろ・・・あった。
あるとき、仲間に裏切られた。
あるとき、本気で死にかけた。
ほんとうにいろいろあったが、逃げた理由は、一つだけだ。そう、ひとつ。
・・・、ジュリアは、魔力が極端に少ない魔女だった。
そんなことは、魔女として致命的だった。だがジュリアは、気にしていないようだった。
そしてジュリアは、数年のうちにどんどん名をあげていった。魔力ではなく、その知性を使って。
それにあせったのは、魔術師協会である。
ジュリアのことを無能とあざけり、見下していた奴らが、手のひらを返したようにジュリアにとりへつらい、ご機嫌伺いをはじめた。
ジュリアは魔術師協会に入っておらず、むしろ敵対していていたからだ。
だがジュリアはガン無視。使い魔1匹すらいない天才は、孤独をつらぬいた。
それに対しあきらめの悪い協会の申し出は
「なんでも願いをかなえるから、協会には入れ」というものだった。
いい加減面倒くさくなったジュリアの出した条件が、とんでもないものだったのは、いまでも笑える。
「あなたたちが私に大悪魔ノアールを使い魔としてくれるなら入る。それなりにいうこともきくわ。ただ・・・、できなかったら金輪際、必要最低限の時以外呼び出しには応じないわ。これ以上付きまとわないでくれる?。私に関わらないで。鬱陶しいのよ、あなたたち。」
まぁ、そういうことでしばらく俺に敵がたえなかったが、退屈していた俺にはちょうど良かった。
あんまりひとが減っていくからか、協会もあきらめたらしい。
あるとき、ぱったりと途絶えた。
そこで気づくべきだったんだ、おかしいことに。
そうして次の日現れたのは、本人だった。
あの日のことはなぜだか鮮明に思い出せる。