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第10話 森に潜む悪趣味魔人

 依頼されていた魔物をすべて排除し、ギルドに報告に向かう。


「すごいですね。数日で全部やっつけちゃうなんて」


「急ぎの仕事なので。それより」


 わたしは、疑問に思ったことを受付に伝えた。


「あー。あなたもそう思いますか? 実はですね」


 なんでもここ最近、ポーションの値段がつり上がっているという。薬草生息地に強力な魔物が棲み着いたせいだ。


 ゼム将軍の統治するディーパレスク以外、ポーションの値段は上がる一方らしい。


「あからさまに怪しいと思いませんか、フォトンさん? もっと自由化が進んでもいいはずなのに」



「ゼム将軍は、薬草の統治も?」


 受付嬢は、首をふる。


「ウワサなんですが、とある業者が麻薬密売に関わっているとか。その原料が、近くの森にある素材だそうで」


 なるほど。それはいいことを聞いた。これはゼム将軍の手引だろう。


「しかも密売組織は、恐ろしい魔人を雇っていると聞きますね」


「魔人?」


「スラッシャー、って言えばいいんですかねえ。魔物や魔族と契約して、恐ろしい力を得た人間のことです」


「人間をやめた者という感じですか?」


「はい」


 多くは犯罪者か、冒険者の成れの果てだという。


「その魔人は美しい女性をさらって、切り刻んでしまうのだとか。森に迷い込んだ女性なら、冒険者だろうが構わず殺害してしまうそうです」


 この間も、森を調査しに向かった冒険者が、無惨な姿で発見されたらしい。その中に、女性は含まれていなかった。


「特徴はわかりますか?」


「声が甲高いから、居場所はすぐに特定できるそうです。けれど、その声を追ったものはみんな」


 受付嬢が、大げさに手をブラーンとさせる。


「魔人騒動に便乗して、薬草類を独占しているというわけですね?」


「かもしれません。あなたのランクなら、ちょうどギリギリ調査に乗り出せますよ」


 ゼム将軍の財源を少しでも、削り落とせるかも知れない。といっても、ゼム将軍は白を切ってとかげの尻尾切りをするだろうが。


「殺害のターゲットは、いずれも若い女性の薬草摘みだそうです」


「薬草摘みの仕事も引き受けましょう。これで、邪魔なモンスター共も壊滅させられます」


 たまたま薬草を取っていたら魔物に襲われたので、撃退した。その体で行く。わたしは知らず知らずのうちに、麻薬製造業者を潰していた、と。


「危険ですよ?」


「だから行くのです」


「あなたはダークプリーストですよね? どちらかというと犯罪者側で、正義の味方、という印象を受けませんが?」


「たしかに私は、正義の味方ではありません。悪の敵です」


 悪には悪をぶつけるのが、最も効果的だ。


 

「おう、戻ったか」


 鍛冶屋にて、頼んでいた品物を出してもらう。


「できてるぞ。そら」


 装備品一式を、手に入れた。

 昆虫型魔物の外殻を利用した胸当て、魔力のこもった小さい琥珀をはめた手甲と具足。スカートもウルフの皮を使った腰巻きに着替えた。


「染料まで使ってくださるなんて」


 腰巻きには、民族衣装のような装飾が周囲にほどこされている。


「うちのカカアがよお、『冒険者っつっても女の子なんだから、身だしなみは気にしなきゃダメよ』っていうんだよ」


 たしかに、鮮やかなブルーは、ちらりと見えるハムストリングスを彩ってくれる。薬草を潰して着色したものだ。


「ありがとうございます。奥様によろしくお伝え下さい」


「おう。気をつけてな。あと、昆虫とやり合うんだろ? こいつをおまけに持っていきな」


 鍛冶屋から、弓矢を受け取る。おまけプレゼントの割には、やたら頑強に作られていた。メイン武器にさえ扱えそうである。



「これは?」


「クモの糸や昆虫の触角が余ったんでな。作ってみた。扱えるかどうかは、お前さん次第だ」


「ここまでしてくださって、ありがとうございます」


「いやな、実は娘が染料用の薬草摘みなんだ。アンタのスカートにも、その子が色付けを提案したんだよ」


「ではお嬢さんに、なにかあったのですね?」


「何もなかったらいいが、ちと心配でな。今日も帰りが遅い……そいつを報酬代わりに、娘を探してもらえないか?」


 それは、急がなければいけないかも。


「必ず生きて、連れ戻します」


「よろしく頼む。娘の名前はリカだ」

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