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第九話:冷たい鋼鉄、熱い信念


レガシー号の医務室は、生命維持装置の規則的なビープ音と、消毒液の冷たい匂いに満ちていた。ジェットは、医療用ポッドの中で静かに眠っている。彼の胸には、ライナスの銃弾が掠めた傷跡が生々しく残っていた。幸いにも、致命傷ではなかったが、意識はまだ戻っていない。


カイルは、ポッドの横に立ち、ジェットの顔を見つめていた。彼の表情は、深い後悔と怒りに満ちていた。ジェットが危険を顧みずに自分を庇ったこと、そして、そのきっかけを作ったライナスに対する激しい怒りが、彼の心を支配していた。


「…俺が、お前を信じなければ…」


カイルは、そう呟いた。ジェットは、ライナスの言葉を信じ、カイルを罠にかけた。だが、それは、カイルがライナスを捕らえるための、ジェットなりの作戦だった。その結果、ジェットは傷つき、カイルは、自分の行動が間違っていたのではないかと、自問自答を繰り返していた。


その時、隔離室の扉が開いた。中には、ライナス・リードが、厳重に拘束され、椅子に座らされていた。ライナスの顔は、非殺傷弾の衝撃で蒼白になっていたが、その瞳には、嘲笑と挑発の色が宿っている。


「…よう、カウボーイ。相棒は、無事か?」


ライナスは、不敵な笑みを浮かべ、そう言った。カイルは、ライナスの言葉に、激しい怒りを覚えた。彼は、ライナスに近づくと、その首を掴み、壁に押し付けた。


「貴様…!」


カイルの声は、怒りで震えていた。


「…どうした?俺を殺すか?お前は、非殺傷弾しか使えない。俺を殺せない」


ライナスは、カイルの言葉に、さらに不気味な笑みを浮かべた。


「俺は、お前を殺さない。だが、お前が持っている情報を、すべて吐かせる」


カイルは、そう言って、ライナスの首をさらに締め付けた。ライナスは、苦しそうに顔を歪めた。


「…はっ…俺は、何も知らない。俺は、ただの賞金稼ぎだ」


ライナスは、そう言って、カイルの言葉を否定した。


「嘘だ。お前は、軍事複合企業『アークエンジェル』の元幹部だ。お前が持っている情報は、裏社会のパワーバランスをひっくり返すほどのものだ。その情報を、俺たちに渡せ」


カイルは、そう言って、ライナスを脅した。


「…ははは!面白い冗談だ。俺は、お前を信じない。それに、俺は、お前に何も話さない」


ライナスは、そう言って、カイルの言葉を嘲笑った。カイルは、ライナスの態度に、さらに怒りを募らせた。


その時、レガシー号のメインシステムに、警報が鳴り響いた。


「警告、警告。不明な機体が、本船に接近中。コード:アークエンジェル。コード:アークエンジェル」


システムの声が、ブリッジに響き渡る。カイルは、ライナスを壁から離し、ブリッジへと駆けつけた。


ブリッジのディスプレイには、レガシー号に向かってくる複数の高速艇の姿が映し出されていた。その高速艇は、軍事複合企業『アークエンジェル』の紋章を掲げている。


「…くそっ、奴ら、もう来たのか…!」


ジェットの意識が戻った。彼は、医療用ポッドから立ち上がり、ディスプレイに映し出された高速艇の姿を見て、そう呟いた。


「ジェット!大丈夫か!」


カイルは、ジェットの無事を確認し、安堵の表情を浮かべた。


「ああ、大丈夫だ。それよりも、奴らをどうする?」


ジェットは、そう言って、カイルに問いかけた。


「…迎え撃つしかない」


カイルは、そう言って、愛銃SIG P226を構えた。


レガシー号のデッキに、無数の傭兵たちが、次々と乗り込んできた。彼らは、最新鋭の銃器を手に、レガシー号の乗員を無力化していく。


ダダダダダダ!


自動小銃の連射音が、レガシー号内に響き渡る。カイルとジェットは、物陰に身を隠し、傭兵たちの動きを観察していた。


「ジェット、奴らの武装は?」


カイルは、ジェットにそう尋ねた。


「H&K G36だ。5.56mm口径の自動小銃。精度が高く、軽量で扱いやすい。それに、FN SCAR-Hもいる。非殺傷弾は効かない」


ジェットは、そう言って、傭兵たちの武装を分析した。


「非殺傷弾が効かない…か」


カイルは、そう呟くと、愛銃SIG P226を構えた。非殺傷弾は、傭兵たちの体を貫通し、倒していくが、その数はあまりにも多い。


「ジェット、どうする?」


カイルは、ジェットにそう尋ねた。


「俺は、AIを操作し、奴らを攪乱する。お前は、俺が作った『罠』に誘導しろ」


ジェットは、そう言って、端末を操作し始めた。


カイルは、ジェットの言葉に頷き、傭兵たちに向かって走り出した。


パン!パン!パン!


カイルの放った非殺傷弾は、傭兵たちの腕や脚に正確に命中し、傭兵たちは次々とその場に倒れていく。だが、その数は減らない。


「くそっ、キリがない!」


カイルはそう呟いた。彼は、傭兵たちの懐に飛び込み、合気道で彼らを無力化していく。


その時、カイルの耳に、ジェットの声が聞こえてきた。


「カイル、今だ!奴らを、船の格納庫に誘導しろ!」


ジェットの声に、カイルは頷いた。彼は、傭兵たちの注意を引きつけながら、船の格納庫へと向かった。


傭兵たちは、カイルの行動を予測し、格納庫の入り口を塞ごうとした。しかし、ジェットのハッキングにより、格納庫の扉は、自動的に閉まり、傭兵たちは、その中に閉じ込められた。


「…よし、やったぞ!」


カイルは、そう言って、安堵の表情を浮かべた。


だが、その時、カイルの背後から、一人の男が現れた。


「…カウボーイ、お前、俺を忘れていないか?」


それは、ライナス・リードだった。彼は、ジェットのHK P7を手に、カイルに向かって、銃口を向けた。


「どうして…!」


カイルは、驚きに目を見開いた。


「…簡単なことさ。俺は、お前が俺を憎んでいることを知っていた。だから、お前は、俺を尋問するだろうと思った。そして、俺は、お前が来るのを待っていた」


ライナスは、そう言って、ニヤリと笑った。


カイルは、ライナスの言葉に、絶望的な表情を浮かべた。彼は、ライナスが、すべてを予測し、彼を罠にかけていたことを悟った。


「…ジェット…!」


カイルは、ジェットに助けを求めた。しかし、ジェットの声は、聞こえてこない。ジェットは、まだ意識を失っている。


「諦めろ、カウボーイ。お前は、俺に勝てない」


ライナスはそう言って、引き金を引こうとした。


その時、ライナスの背後から、一人の男が現れた。


「…ライナス、貴様…!」


それは、ジェットだった。彼は、血を流しながら、ライナスに向かって、HK P7を構えていた。


「ジェット、貴様、まだ生きていたのか!」


ライナスは、ジェットの姿を見て、驚きに目を見開いた。


パン!


ジェットが発砲した。非殺傷弾が、ライナスの頭部に命中した。ライナスは、その場に倒れ込んだ。


「くそっ…!」


ライナスは、悔しそうにそう呟くと、その場で意識を失った。


ジェットは、その場で膝をついた。カイルは、ジェットに駆け寄り、彼の体を支えた。


「大丈夫か、ジェット!しっかりしろ!」


カイルの声は、焦りに満ちていた。


「ああ…大丈夫だ…」


ジェットは、そう言って、苦笑いを浮かべた。


「俺は、お前を信じている。だが、俺は、お前を信じない」


ジェットは、そう言って、カイルの腕の中で、意識を失った。


「…ジェット…!」


カイルは、ジェットの体を抱きかかえ、そう呟いた。彼の目には、悔しさと、そして深い悲しみが宿っていた。

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