第八話:裏切りの過去
レガシー号のブリッジは、重苦しい空気に満ちていた。リラ・ヴァレンタインのヘリコプターが空に消えていくのを、カイルとジェットはただ見送ることしかできなかった。
「ちっ、非殺傷弾じゃヘリは落とせないか」
カイルが苛立たしげに吐き捨て、ソファーに深く腰掛けた。彼の顔には、獲物を取り逃がした悔しさがにじみ出ている。
「そういうことだ。だが、この街は奴のホームグラウンドだ。簡単に手は出せなかった」
ジェットは端末を操作しながら冷静に答えた。彼の指が、新たな情報を探して軽快にキーボードを叩く。カイルとジェットのコンビは、お互いの弱点を補完し合うように機能していた。カイルが現場で力と技術を駆使する「銃の腕」であるならば、ジェットは情報と戦略で戦う「頭脳」だ。
「次の仕事だ。こんな不毛な時間、一秒たりとも無駄にはできない」
カイルは立ち上がり、格納庫へ向かおうとした。その時、ジェットの端末に新たな情報が届いたことを示す通知音が鳴った。
「待て、カイル。今、大物賞金首の情報が入った。これは、無視できない」
ジェットが振り向き、真剣な眼差しでカイルを見た。カイルは足を止め、ディスプレイに表示された男の顔を見る。その顔は、以前ドッグ・ノイズとの戦闘現場で出会った、謎の男だった。
「…コイツは…」
「ライナス・リード。元賞金稼ぎだ。数年前に姿を消していたが、最近再び裏社会に現れた。今回の賞金は、大企業からの依頼で、その額は破格だ」
ジェットはそう言って、ライナスの詳細な情報を表示した。その経歴はカイルと驚くほど似通っていた。元警察官のジェットが追っていたのは、ドッグ・ノイズのような武器密売人。そしてカイルが追うのは、ライナス・リードのような元賞金稼ぎだった。
「よし、行くぞ」
カイルの表情が、一瞬で戦闘モードに切り替わった。今回の獲物は、これまでの獲物とは違う。同じ獲物を狙う者、そしてかつて同じ道を歩んだ者。カイルの心は、静かに燃え上がっていた。
「待て、カイル。今回は俺も行く。この男は、俺が警察官時代に追っていた男だ。奴は、俺の因縁の相手だ」
ジェットはそう言って、愛銃HK P7を点検していた。
「了解だ。行ってくる」
カイルは、スティングレイのコックピットに乗り込み、ジェットはレガシー号の操舵席へと向かった。
目的地である廃墟都市に到着したカイルとジェットは、スティングレイを廃墟都市から少し離れた海面に着水させた。カイルは、コックピットのハッチを開け、油田の内部へと向かって歩き出した。
油田の内部は、錆びついた鉄骨とパイプが入り組み、まるで巨大な迷路のようだ。カイルは、SIG P226を構え、慎重に進んでいく。
その時、カイルの耳に、聞き覚えのある銃声が聞こえてきた。
パン!パン!パン!
カイルは、銃声のする方に駆け寄った。そこには、大勢の男たちが倒れ込んでいる。そして、彼らの前に立つ、見慣れない男の姿があった。その男は、以前油田で出会った、謎の男だった。
「てめえ、何者だ!」
男は、カイルに鋭い視線を向けた。彼の右手には、最新式のレーザー銃が握られている。
「俺は、カウボーイだ。ライナス・リードを追っている」
カイルはそう答えた。
「残念だったな。ライナス・リードは、俺の獲物だ」
男はそう言って、カイルに銃を向けた。
「おいおい、冗談だろ」
カイルは、苦笑いを浮かべた。
「冗談じゃない。俺は、ライナス・リードを追っている。邪魔はさせない」
男はそう言って、レーザー銃の引き金を引こうとした。
その時、カイルの背後から、銃声が響いた。
ダダダダダダ!
機関銃の連射音が、油田内に響き渡る。カイルと男は、咄嗟に身をかがめた。
「くそっ、ライナスか!」
カイルはそう呟くと、物陰に隠れた。
男も、カイルの隣に隠れた。彼の顔には、苛立ちの色が浮かんでいる。
「ライナスの部下よ。まさか、こんなに数がいるなんて…」
男はそう言った。
「俺たちが喧嘩している場合じゃないな。ここは協力しよう」
カイルは、男にそう提案した。
「協力?馬鹿言わないで。私は、一人で十分だ」
男はそう言って、カイルを睨みつけた。
「まあ、そう言うなって」
カイルはそう言って、SIG P226を構え、物陰から顔を出した。
パン!パン!パン!
カイルは、次々と敵を無力化していく。彼の射撃は、正確で無駄がない。
「…すごい」
男は、カイルの射撃の正確さに驚いていた。
「当たり前だろ。俺は、プロさ」
カイルはそう言って、微笑んだ。
二人の銃撃は、まるでシンクロしたかのように、正確に敵を無力化していく。敵は、二人の連携の前に、次々と倒れていった。
しかし、敵はまだいる。二人は、さらに奥へと進んでいく。
その時、二人の前に、一人の男が現れた。男は、ライナス・リード。彼の両手には、二丁の特殊な拳銃が握られていた。
「まさか、こんな場所で二人のカウボーイに会うとはな」
ライナス・リードは、不気味な笑みを浮かべた。
「ライナス・リード、観念しろ」
カイルはそう言って、SIG P226を向けた。
「観念?冗談じゃない。俺を捕まえられると思うなよ」
ライナス・リードはそう言って、二丁の特殊な拳銃を向けた。
「その銃は、一体なんだ?」
男は、ライナス・リードに質問した。
「これは、俺が作った特別製の銃だ。この銃から放たれる弾丸は、お前たちの非殺傷弾を無効化する」
ライナス・リードは、そう言って、カイルと男に向かって発砲した。
パン!パン!パン!
カイルと男は、銃弾をかわし、反撃しようとした。しかし、彼らの非殺傷弾は、ライナス・リードの特殊な銃によって無効化され、その体に命中しても、何の効果も発揮しなかった。
「くそっ、本当に効かないのか!」
カイルは、驚きの声を上げた。
「無駄だ、カウボーイ。俺の銃は、お前たちの非殺傷弾を無効化する。お前たちに、俺を捕まえることはできない」
ライナス・リードは、そう言って、再び発砲した。
カイルと男は、絶体絶命の危機に陥った。彼らは、ライナス・リードの銃撃をかわすことしかできなかった。
「どうする、カイル」
男は、カイルにそう尋ねた。
カイルは、ライナス・リードの銃をじっと見つめていた。彼の頭の中では、ある一つのアイデアが閃いていた。
「…お前に任せる」
カイルは、そう言って、男にそう告げた。
「何を考えているの?」
男は、カイルにそう尋ねた。
「俺は、時代遅れのカウボーイさ。だからこそ、使える技がある」
カイルは、そう言って、ライナス・リードに向かって一歩踏み出した。




