第三十七話:新しい旅立ち
南極の永久凍土を、レガシー号が、ゆっくりと上昇していく。カイル、クロエ、ジェット、ノヴァは、コックピットの窓から、崩壊した氷の要塞を、静かに見つめていた。彼らの顔には、安堵の色と、そして、深い疲労が浮かんでいる。
「…やった…終わったんだ…」
ノヴァが、震える声で呟いた。彼女の声には、安堵と、そして、どこか、信じられないという、感情が混じっていた。
「…ああ…終わった…」
カイルが、静かに、そして力強く、頷いた。彼の瞳は、崩壊した要塞の跡を、じっと見つめている。彼の隣には、クロエが、肩の傷を押さえながら、静かに立っている。彼女の瞳にも、深い疲労が宿っていた。
ジェットは、操縦桿を握りしめ、レガシー号を、さらに上昇させた。彼の表情は、硬く、そして、どこか、悲しげだった。
「…ジェット…」
カイルが、ジェットの名前を呼んだ。ジェットは、カイルの言葉に、何も答えなかった。彼は、ただ、前だけを見て、操縦桿を握りしめている。彼の心の中には、ライナスを失った悲しみと、そして、クロエへの、複雑な感情が渦巻いていた。
「…ジェット…」
クロエが、ジェットに、そう囁いた。ジェットは、クロエの言葉に、わずかに、顔を歪めた。
「…何も、言うな…」
ジェットの声は、冷たかった。クロエは、ジェットの言葉に、何も言えなかった。彼女は、ジェットの感情を、理解していた。しかし、彼女は、自分の行動が、間違っていたとは思っていなかった。
その時、レガシー号の内部に、緊急事態を告げるアラートが鳴り響いた。
ビーッ!ビーッ!ビーッ!
「…なんだ!?」
カイルが、叫んだ。ノヴァは、キーボードを叩きながら、焦った声で、答えた。
「…レガシー号の、メインエンジンに、異常が発生しました!このままじゃ、航行不能になります!」
ノヴァの声は、絶望に満ちていた。カイルは、ノヴァの言葉に、顔を歪めた。彼は、このままでは、彼らが、この南極大陸で、遭難してしまうことを悟った。
「…くそっ!」
カイルは、舌打ちをした。その時、ジェットが、操縦桿を、力強く、握りしめた。
「…まだ、だ…」
ジェットは、そう呟くと、レガシー号の機体を、急降下させた。カイル、クロエ、ノヴァは、ジェットの行動に、驚愕した。
「…ジェット!何を考えてるんだ!?」
カイルが、叫んだ。ジェットは、カイルの言葉を無視し、レガシー号を、氷河の谷へと、突っ込ませていく。
「…レガシー号の、メインエンジンを、緊急停止させる!このままじゃ、爆発する!」
ジェットは、そう叫んだ。カイルは、ジェットの言葉に、顔を歪めた。彼は、ジェットが、レガシー号を、この南極大陸に、不時着させようとしていることを、理解したのだ。
「…くそっ、わかった!ノヴァ!ジェットの指示通りにしろ!」
カイルは、ノヴァに、そう指示した。ノヴァは、キーボードを叩きながら、ジェットの指示通りに、レガシー号のメインエンジンを、緊急停止させた。レガシー号は、轟音を立て、氷河の谷に、不時着した。
ガッシャァァァァァァァァン!
レガシー号は、氷の壁に激突し、大きな音を立てて、停止した。カイル、クロエ、ジェット、ノヴァは、激しい衝撃に、体が揺れた。彼らは、互いに顔を見合わせ、安堵の息をついた。彼らは、何とか、生き延びたのだ。
「…くそっ…」
ジェットは、操縦席から立ち上がり、床に座り込んだ。彼の顔には、疲労と、そして、悔しさが浮かんでいる。
「…大丈夫か、ジェット?」
カイルが、ジェットに声をかけた。ジェットは、カイルの言葉に、わずかに頷いた。
「…ああ…何とか、な…」
ジェットの声は、かすれていた。カイルは、ジェットの肩に、手を置いた。
「…ありがとう、ジェット。お前のおかげで、助かった…」
カイルは、そう言って、ジェットに、微笑んだ。ジェットは、カイルの言葉に、何も言わなかった。ただ、カイルの手を、力強く、握り返した。
その時、レガシー号の内部に、またしても、緊急事態を告げるアラートが鳴り響いた。
ビーッ!ビーッ!ビーッ!
「…今度は、なんだ!?」
ノヴァが、叫んだ。彼女は、再び、キーボードを叩き始める。
「…レガシー号の、サブエンジンに、異常が発生しました!このままじゃ、爆発します!」
ノヴァの声は、絶望に満ちていた。カイルは、ノヴァの言葉に、顔を歪めた。彼は、このままでは、レガシー号が、爆発してしまうことを悟った。
「…くそっ!どうすればいい!?」
カイルが、叫んだ。その時、クロエが、カイルに、静かに、そして低い声で囁いた。
「…カイル。私に、任せて…」
クロエの言葉に、カイルは、顔を歪めた。
「…何を言ってるんだ!お前は、怪我をしているんだぞ!」
カイルが、叫んだ。クロエは、カイルの言葉を無視し、レガシー号の、サブエンジンへと、向かって走り出した。
「…クロエ!やめろ!」
カイルは、叫んだ。しかし、クロエは、もう、彼の言葉を聞いていなかった。彼女は、サブエンジンの扉を開け、内部へと、飛び込んでいった。
「…くそっ…!」
カイルは、舌打ちをした。彼は、クロエを、一人で、行かせるわけにはいかなかった。彼は、P226を構え、クロエの後に、続こうとする。
しかし、その時、ジェットが、カイルの肩に、手を置いた。
「…カイル。任せて、やれ…」
ジェットの声は、静かだった。カイルは、ジェットの言葉に、戸惑った。
「…何を言ってるんだ!あいつは、怪我をしているんだぞ!」
カイルが、叫んだ。ジェットは、カイルの言葉に、首を横に振った。
「…大丈夫だ。…あいつは、強い…」
ジェットは、そう言って、カイルに、かすかに微笑んだ。カイルは、ジェットの言葉に、何も言えなかった。彼は、クロエの言葉を、信じるしかなかった。
レガシー号のサブエンジン内部。クロエは、サブエンジンの制御盤の前に立ち、グロック17を構えた。彼女は、グロック17の銃口を、制御盤に向けた。
パン!パン!パン!
彼女が放った弾丸は、制御盤の回路を、正確に破壊した。グロック17から放たれた弾丸は、精密な射撃と、彼女の熟練した技術により、制御盤の機能を、完全に停止させた。制御盤は、火花を散らし、音を立てて、機能を停止していく。
「…よし…」
クロエは、そう呟くと、再び、グロック17を構え、制御盤の隣にある、巨大な燃料タンクに、銃口を向けた。
パン!
弾丸は、燃料タンクに命中し、火花を散らす。そして、燃料タンクは、音を立てて、爆発した。
ドォォォォォォォォン!
レガシー号の内部に、激しい爆発音が鳴り響く。クロエは、爆発の衝撃から身を守るために、サブエンジンの扉に、身を寄せた。彼女の体は、爆発の衝撃に、大きく揺れる。
数秒後、爆発音が収まった。クロエは、サブエンジンの扉から、顔を出し、レガシー号の内部へと、戻ってきた。彼女の顔には、安堵の表情が浮かんでいた。
「…やったわ…」
クロエは、そう呟くと、その場に、へたり込んだ。彼女の肩の傷が、激しい痛みを訴えていた。その時、カイルが、クロエの元に、駆け寄ってきた。
「…クロエ!大丈夫か!?」
カイルの声は、安堵と焦りが入り混じっていた。クロエは、カイルの言葉に、わずかに頷いた。
「…大丈夫。…何とか、なったわ…」
クロエは、そう言って、カイルに、微笑んだ。カイルは、クロエの言葉に、安堵の表情を浮かべた。彼は、クロエを、力強く、抱きしめた。
「…ありがとう…ありがとう、クロエ…」
カイルの声は、震えていた。クロエは、カイルの言葉に、何も言わなかった。ただ、カイルの腕の中で、静かに、目を閉じていた。
その時、レガシー号の内部に、ジェットとノヴァが、姿を現した。彼らは、カイルとクロエを見て、安堵の表情を浮かべた。
「…やったな…」
ジェットは、そう言って、カイルに、拳を差し出した。カイルは、ジェットの言葉に、頷き、ジェットの拳に、自分の拳を、ぶつけた。
「…ああ…」
カイルの声は、震えていた。
「…レガシー号は、どうなったんだ?」
カイルが、ノヴァに問いかけた。ノヴァは、キーボードを叩きながら、答えた。
「…メインエンジンは、完全に、使用不能になりました。サブエンジンも、修理が必要です…」
ノヴァの声は、疲労に満ちていた。カイルは、ノヴァの言葉に、頷いた。
「…わかった。…ノヴァ、この場所から、一番近い、町は、どこだ?」
カイルが、ノヴァに問いかけた。ノヴァは、キーボードを叩きながら、答えた。
「…この場所から、一番近い、町は…“ニュー・バベル”。南極大陸にある、唯一の、居住区です…」
ノヴァの言葉に、カイルは、頷いた。彼の瞳は、もう、迷いはなかった。彼の旅は、これからも、続いていく。




