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第三十五話:最後の門


南極の氷に閉ざされた要塞の最深部。カイルの静止を振り切り、クロエは一人、タイラント・システムの「核」へと続く通路を走り出した。彼女の肩の傷が、走るたびに激しい痛みを訴える。しかし、彼女の瞳には、もう迷いはなかった。彼女の愛銃グロック17のグリップを握る手に、力が込められる。グロックのポリマーフレームは、彼女の手のひらにしっかりと馴染み、その重みが、彼女の決意を物語っていた。


「…クロエ!待て!一人で行くな!」


カイルの声が、背後から聞こえてくる。しかし、クロエは、振り返らなかった。彼女は、ただ、前だけを見て、走り続けた。彼女の使命は、タイラント・システムを無力化すること。そのために、この「鍵」を手に入れる必要がある。そして、その鍵を手に入れるためには、この要塞全体を、自爆させるしかない。それは、死を意味していた。しかし、彼女は、その運命を受け入れていた。


「…ノヴァ、カイルを、止めて…」


クロエは、無線にそう囁くと、通信を切った。彼女は、カイルを、この死地に、引きずり込むわけにはいかなかった。


通路は、氷と金属が入り混じった、無機質な空間だった。通路の壁には、青白い光を放つケーブルが、蜘蛛の巣のように張り巡らされている。その光景は、まるで、生きているかのような、不気味な存在感を放っていた。


クロエは、慎重に、そして素早く、通路を進んでいく。彼女の足音は、静寂に包まれた通路に、小さく響く。彼女は、グロック17を構え、いつでも、引き金を引けるように、準備をしていた。


その時、通路の奥から、複数の足音が、聞こえてきた。クロエは、とっさに、通路の陰に身を隠し、グロック17を構える。彼女の心臓が、激しく鼓動を打つ。


通路の奥から、数人の兵士が、姿を現した。彼らは、白い強化スーツを身につけ、今まで彼女たちが戦ってきた兵士たちとは、明らかに雰囲気が違っていた。彼らが構えているのは、Heckler & Koch MP7。PDW(個人防御火器)に分類されるこの銃は、小型ながらも高い貫通力を誇り、強化スーツを容易く貫通できる恐るべき銃だ。その銃口からは、ただならぬ殺気が放たれている。


「…まさか、MP7…!」


クロエは、息をのんだ。彼女のグロック17では、太刀打ちできない。彼女は、このままでは、ジリ貧だと判断し、ある一つの決断を下した。


「…ノヴァ、カイル。聞こえる?」


クロエは、無線に、静かに、そして低い声で囁いた。彼女は、通信を切ったはずだったが、微かに残る電波に、最後の希望を託した。


「…クロエ!大丈夫か!?」


カイルの声が、無線から聞こえてきた。その声は、安堵と焦りが入り混じっていた。


「…カイル、聞いて。この通路の奥に、敵がいる。MP7を持っている。私のグロックでは、分が悪い…」


クロエは、そう言って、敵の位置と人数を、カイルに伝えた。


「…わかった。クロエ、俺が、囮になる。その隙に、要塞の奥へ行け!」


カイルの声は、決意に満ちていた。クロエは、カイルの言葉に、わずかに口角を上げた。


「…ありがとう、カイル。…でも、今回は、違うわ…」


クロエは、そう言って、グロック17のグリップを、さらに強く握りしめた。彼女は、カイルと、共に、この戦いを、終わらせるつもりだった。


ダダダダダダダダ!


MP7の銃声が、通路に反響する。4.6×30mm口径の高速弾が、クロエが隠れている通路の陰に、無数の穴を開けていった。強化スーツの兵士たちは、彼女の位置を正確に把握している。彼らは、サブマシンガンの高い連射性能と、MP7の貫通力を活かし、弾幕を張りながら、クロエに近づいてくる。


「…くそっ、キリがない…!」


クロエは、舌打ちをした。彼女は、とっさに、通路の奥へと、走り出した。


パン!パン!パン!


彼女が放った弾丸は、兵士たちの強化スーツに命中し、火花を散らす。しかし、MP7の弾丸は、彼女の体を、容赦なく、貫いていく。激痛が、クロエの全身を駆け巡る。彼女は、その場に崩れ落ちた。彼女の手から、グロック17が滑り落ちる。


「…クロエ!」


カイルの声が、無線から聞こえてきた。しかし、クロエは、もう、答えることができなかった。彼女の視界が、ぼやけていく。


兵士たちは、クロエの前に立ち、MP7の銃口を、彼女の頭に向けた。


「…終わりだ、賞金稼ぎ…」


兵士は、そう言って、引き金に指をかけた。その時、通路の向こうから、一人の男が、姿を現した。彼は、SIG P226を構え、兵士たちに、銃口を向けた。


「…やめろ!」


カイルは、叫んだ。彼は、クロエを救うために、ここに来たのだ。彼は、P226のトリガーに、指をかけた。P226のショートリコイルとダブルアクションのトリガーは、確実な作動と初弾の精密な射撃を可能にする。


パン!パン!パン!


カイルが放った非殺傷弾が、兵士の一人のヘルメットに命中し、彼をひるませる。しかし、MP7を持つ兵士たちは、カイルの存在に気づき、一斉に、彼に銃口を向けた。


ダダダダダダダダ!


MP7の銃声が、再び、鳴り響く。高速弾が、カイルが隠れている壁に、無数の穴を開けていく。カイルは、とっさに身を隠し、P226を構え直す。彼の心中には、クロエを助けるという、ただ一つの目的しかなかった。


その時、地面に落ちていたグロック17が、わずかに動いた。クロエは、かすかに残る意識の中で、左手で、グロック17を、拾い上げた。彼女は、震える手で、グロック17を構え、兵士に、銃口を向けた。


パン!


弾丸は、兵士の右足の関節を正確に撃ち抜いた。兵士は、激痛に苦悶の声を上げ、その場に崩れ落ちた。


「…くそっ…!」


兵士は、そう言って、MP7を落とした。カイルは、その隙を見逃さなかった。彼は、P226の銃口を、残りの兵士に向け、連射する。


パン!パン!パン!パン!


P226から放たれた非殺傷弾が、兵士たちの強化スーツに命中し、彼らをひるませる。P226の重いスライドが前後に動き、次々と弾丸を排出していく。カイルは、素早くマガジンを交換し、残りの兵士たちに、とどめを刺した。彼の正確な射撃と、クロエの援護により、兵士たちは、次々と、その場に崩れ落ちていく。


彼らは、互いを信じ、互いの背中を預け、この絶望的な状況を、打開したのだ。


カイルは、クロエの元に駆け寄り、彼女を抱きかかえた。


「…クロエ!大丈夫か!?」


カイルの声は、震えていた。クロエは、カイルの言葉に、かすかに微笑んだ。


「…大丈夫…」


クロエは、そう言って、意識を失った。カイルは、クロエを抱きかかえ、要塞の奥へと、進んでいく。彼の瞳には、深い決意が宿っていた。


その時、通路の奥から、一人の男が、姿を現した。彼は、白い強化スーツを身につけ、顔には、不気味な仮面をかぶっている。彼の右手には、彼らが探していた、**“鍵”**が、握られていた。それは、まるで、小さな槍のような形をしていた。男は、カイルとクロエを見て、ニヤリと笑った。


「…よく来たな、カウボーイ。だが、お前たちは、もう、ここまでだ…」


男は、そう言って、左手で、背中に背負った、巨大なライフルを構えた。それは、Barrett M82A1。対物ライフルに分類されるこの銃は、12.7x99mm口径弾を使用し、戦車や装甲車を破壊できる、恐るべき銃だ。その銃口は、迷いなく、カイルとクロエを捉えていた。


「…くそっ!」


カイルは、舌打ちをした。彼は、クロエを抱きかかえながら、P226を構え、男に、銃口を向けた。彼の瞳には、深い怒りが宿っていた。彼の旅は、今、最後の、そして最も困難な局面を迎えようとしていた。彼は、クロエを抱きかかえ、Barrett M82A1を持つ男に、立ち向かう。

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