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第三十話:最後の選択


広大な地下室に、張り詰めた空気が満ちていた。カイルとクロエは、白い強化スーツを身につけた複数の兵士に囲まれていた。彼らが構えるSteyr AUGの銃口は、迷いなく二人を捉えている。部屋の中央には、椅子に座ったタイラントが、不敵な笑みを浮かべていた。彼の横には、自爆システムの起動を告げる赤いランプが点滅し、無慈悲なデジタル表示が「00:00:58」とカウントダウンを開始していた。


「…どうする、カウボーイ?俺を捕まえるか?それとも、この基地ごと、爆死するか?」


タイラントは、手に持ったリモコンを弄びながら挑発した。カイルの無線には、ノヴァの焦った声がまだ残響している。「基地のシステムが、タイラントによって、自爆モードに切り替えられました!」という叫びが、彼の脳裏を駆け巡る。カイルは、タイラントの言葉に何も答えなかった。彼は、愛銃SIG P226を構え、静かに、そしてゆっくりと、兵士たちに銃口を向けた。クロエもまた、彼の隣に立ち、グロック17を構える。二人の瞳には、強い意志が宿っていた。彼らは、もう、後戻りはできない。彼らの選択は、ただ一つだった。


「…行くぞ、クロエ」


カイルが、静かに呟いた。クロエは、無言で頷いた。


彼らは、静かに、そして同時に、引き金を引いた。


パン!パン!パン!


カイルが放った非殺傷弾が、兵士の一人のヘルメットに命中し、彼をひるませる。P226から放たれた弾丸は、強化スーツのアーマープレートを弾き、ヘルメットの顔面シールドに命中。ガラス繊維がひび割れ、兵士は視界を奪われてよろめいた。P226のショートリコイルとダブルアクションのトリガーが、確実な作動と初弾の精密な射撃を可能にした。一方、クロエが放った実弾は、もう一人の兵士の肩の関節を正確に撃ち抜き、彼のSteyr AUGを無力化した。グロック17の9mm弾は、強化スーツのわずかな継ぎ目を貫通し、内部の関節部分にダメージを与えたのだ。兵士は、激痛に苦悶の声を上げ、銃を落とした。


兵士たちは、二人の連携に一瞬、対応することができない。彼らは、訓練されたプロではあったが、カイルとクロエの連携は、それを上回るものだった。


ダダダダダダダダ!


しかし、残りの兵士たちは、すぐに反撃に出た。Steyr AUGの銃口が火を噴き、5.56mm口径弾が、部屋中に降り注ぐ。カイルとクロエは、とっさに近くの機械の陰に身を隠した。弾丸は、彼らが隠れている機械の表面に、無数の傷を刻んでいく。Steyr AUGは、ブルパップ方式(弾倉がグリップより後方にある)のため、全長が短く、取り回しがしやすい。閉所での戦闘において、彼らはその優位性を最大限に活用していた。


「…くそっ、キリがない!」


カイルは、舌打ちをした。兵士たちは、遮蔽物を巧みに利用し、彼らに近づいてくる。このままでは、ジリ貧だ。カイルは、ノヴァの言葉を思い出した。自爆モード。この基地は、もう長くない。「00:00:45」。デジタル表示の残り時間が、彼らの焦りを増幅させた。


「…クロエ!俺が囮になる!その隙に、タイラントを狙え!」


カイルは、そう叫んだ。クロエは、彼の言葉に頷き、グロック17のグリップを握りしめた。彼女の瞳は、すでに、タイラントを捉えていた。


カイルは、機械の陰から飛び出し、兵士たちに、P226を連射する。彼は、あえて、自分の存在をアピールし、兵士たちの注意を自分に引きつけた。P226の重いスライドが前後に動き、次々と非殺傷弾を排出していく。兵士たちは、カイルの行動に、一斉に、銃口を向けた。


ダダダダダダダダ!


Steyr AUGの銃声が、部屋全体に響き渡る。カイルは、弾丸を避けながら、兵士たちに接近していく。彼は、彼らの動きを予測し、非殺傷弾を放ち、彼らを混乱させた。弾丸は、彼らのヘルメットや胸部に命中し、衝撃で彼らはバランスを崩した。


その隙に、クロエは、機械の陰から、静かに、そして素早く、タイラントに接近していく。彼女は、グロック17を構え、その銃口は、迷いなくタイラントの眉間を捉えていた。彼女は、グロックのトリガープル(引き金を引くのに必要な力)が比較的重いことを利用し、慎重に、そして正確に、引き金に指をかけた。


「…タイラント、あんたは、終わりよ」


クロエは、そう言って、引き金を引いた。


パン!


しかし、弾丸は、タイラントを撃ち抜くことはなかった。タイラントは、クロエの行動を予測していたかのように、椅子を後ろに倒し、弾丸を避けたのだ。


「…残念だったな、レディ…」


タイラントは、そう言って、椅子から立ち上がった。彼の右手には、隠し持っていた小型の拳銃が握られている。それは、ワルサーPPKだった。007シリーズのジェームズ・ボンドが愛用するこの銃は、小型ながら高い信頼性と威力を誇る。その銃口は、クロエに向けられていた。


「…くそっ!」


カイルは、タイラントの行動に、舌打ちをした。彼は、クロエを助けるために、タイラントに、飛びかかろうとした。しかし、兵士たちが、彼の進路を塞いだ。


ダダダダダダダダ!


Steyr AUGの銃声が、再び、鳴り響く。カイルは、身を隠し、弾丸を避ける。彼は、クロエを救うために、何としてでも、この状況を打開する必要があった。


その時、カイルの無線に、ノヴァの声が聞こえてきた。


「…カイルさん!基地のシステムが、臨界点に達しました!あと、1分で、爆発します!」


ノヴァの声は、焦っていた。カイルは、タイラントを睨みつけた。タイラントは、ニヤリと笑う。


「…どうする、カウボーイ?俺を捕まえるか?それとも、この基地ごと、爆死するか?」


タイラントの言葉に、カイルは、ある一つの決断を下した。彼は、P226の銃口を、タイラントの隣にある、巨大なコンピュータのコンソールに向けた。


「…残念だが、あんたの計画は、ここで終わりだ」


カイルは、そう言って、引き金を引いた。


パン!


弾丸は、コンピュータのコンソールに命中し、火花を散らす。すると、コンソールは、音を立てて、崩壊した。タイラントは、その光景を見て、顔を歪めた。


「…貴様…!」


タイラントは、叫んだ。彼は、自分の計画が、カイルによって、打ち砕かれたことに、深い怒りを感じていた。


その隙に、クロエは、タイラントに、飛びかかった。彼女は、タイラントの腕を掴み、彼の持っていたワルサーPPKを、地面に叩き落とした。タイラントは、クロエの行動に、驚愕した。彼は、クロエの強さを、過小評価していたのだ。


カイルは、兵士たちに、P226を連射する。彼は、兵士たちのアーマーの隙間を狙い、非殺傷弾を放った。P226は、高い信頼性を誇り、寒冷地でも動作が安定している。カイルは、その信頼性を信じ、次々と弾丸を放ち、兵士たちを無力化していった。兵士たちは、次々と、その場に崩れ落ちていく。彼らは、カイルの正確な射撃に、対応することができなかった。


「…クロエ!今よ!」


カイルは、叫んだ。クロエは、カイルの言葉に頷き、タイラントの首元に、腕を回した。彼女は、タイラントを、床へと押し倒した。タイラントは、抵抗しようとするが、クロエの鍛え上げられた肉体には、かなわなかった。


「…くっ…!」


タイラントは、苦悶の声を上げる。クロエは、その声を無視し、彼の両腕を、背中に回し、拘束した。


「…タイラント、あんたは、終わりだ」


クロエは、そう言って、タイラントに、冷たい視線を向けた。タイラントは、クロエの視線に、わずかに、怯えたような表情を見せた。


その時、部屋の天井が、崩れ落ちた。そして、そこから、ジェットとノヴァが、姿を現した。彼らは、天井に穴を開け、二人を救出しに来たのだ。


「…カイル!クロエ!大丈夫か!?」


ジェットが、叫んだ。カイルは、タイラントを拘束したまま、ジェットに頷いた。


「…ああ、何とか、な。タイラントを、捕らえたぞ」


カイルの言葉に、ジェットは、安堵の表情を浮かべた。ノヴァは、タイラントを見て、わずかに顔を歪めた。彼女は、タイラントが、どれだけ危険な存在であるかを、よく知っていた。


「…早く、ここから、脱出しましょう!この基地は、もう、持ちません!」


ノヴァは、焦った声で、叫んだ。カイルは、ノヴァの言葉に頷き、タイラントを抱え、ジェットとノヴァと共に、外へと出た。


外には、レガシー号が、彼らを待っていた。彼らは、レガシー号に乗り込み、北極圏を後にした。


「…みんな、無事でよかった…」


ノヴァは、そう言って、安堵の息をついた。カイルは、ノヴァの言葉に、微笑んだ。


「…ああ、クロエのおかげだ」


カイルは、そう言って、クロエの肩に手を置いた。クロエは、カイルの言葉に、わずかに、照れたような表情を見せた。


彼らは、レガシー号に乗り込み、北極圏を後にした。彼らの旅は、タイラントを捕らえたことで、一つの区切りを迎えた。しかし、組織の残党が、まだ、世界中に潜伏している。彼らの戦いは、まだ、終わっていなかった。


「…次なる、標的は…」


ジェットが、そう呟いた。

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