第二十九話:地下要塞の罠
北極圏の永久凍土に閉ざされた軍事基地。カイルとクロエは、基地内部の冷たい通路で、警備兵との激しい銃撃戦に突入していた。通路を支配するのは、兵士たちが構えるSteyr AUGの放つ5.56mm口径弾の鋭い銃声だ。「ダダダダダッ!」という轟音が、通路全体に反響し、金属の壁に無数の傷を刻む。
カイルは、通路の柱の陰に身を隠し、愛銃のSIG P226を構えた。彼はP226から非殺傷弾を連射する。「プシュッ!プシュッ!」と、圧縮ガスが弾丸を押し出すような独特の音が鳴り響く。非殺傷弾は、兵士たちの白い強化スーツに命中し、彼らをよろめかせるが、倒すまでには至らない。カイルは、兵士たちが装備している強化スーツが、一般的な被弾に対する防御力だけでなく、衝撃吸収能力も備えていることを悟った。このままでは、弾丸を無駄にするだけだ。
「くそっ!非殺傷弾が通用しない!」
カイルが、苛立ちを隠せないまま叫んだ。その時、クロエが、別のタンクの陰から飛び出した。彼女は、腰を低く構え、両手でグロック17をしっかりと保持する。彼女は、照準器を覗き込むことなく、直感的に標的を捉えた。
「パンッ!パンッ!」
クロエのグロックから、二発の実弾が放たれた。最初の弾丸は、兵士の一人の左足の関節を狙い、強化スーツの弱点である隙間を正確に撃ち抜く。二発目は、彼の右腕に命中し、銃を構える力を奪った。兵士は、バランスを崩し、その場に崩れ落ちた。彼のSteyr AUGは、無力化され、通路の床を滑っていく。
もう一人の兵士は、クロエの行動に一瞬、戸惑った。その隙を突き、カイルは、柱の陰から飛び出し、残りの兵士に飛びかかった。彼は、兵士を床に押し倒し、手際よく拘束する。兵士は、苦悶の声を上げるが、カイルの力にはかなわない。
「…クロエ、お前…」
カイルが、クロエを見た。その瞳には、彼女への深い戸惑いが宿っていた。彼女は、躊躇なく、敵の急所を狙って撃った。それは、彼の知るクロエの行動とは、かけ離れていた。クロエは、カイルの視線に気づかないふりをした。彼女は、何も言わず、ただ無言で、カイルに背を向け、通路の奥へと進んでいった。その背中は、まるで、過去の自分と決別しようとするかのように、冷たく、そして強固に見えた。
通路を進むカイルとクロエの前に、複数の十字路が現れた。この基地は、まるで迷路のようだ。カイルは、警戒しながら、P226を構え、左右を注意深く見渡す。クロエもまた、グロックを構え、通路の奥に注意を払っている。その時、無線からノヴァの声が聞こえてきた。
「…カイルさん!その先の通路、右側に、敵がいます!」
ノヴァは、基地の監視カメラの映像をハッキングし、二人の位置と敵の位置を正確に把握していた。カイルは、ノヴァの警告に頷き、クロエに手で合図を送った。二人は、右側の通路へと向かった。通路の奥には、数人の兵士が、Steyr AUGを構えて、彼らを待ち伏せしていた。彼らは、強化スーツのヘルメットに内蔵された通信機で、互いの位置を共有しているようだ。
「…くそっ!」
カイルは、舌打ちをした。彼は、とっさに通路の壁に身を隠し、P226を構える。兵士たちは、彼らの姿を捉え、一斉に発砲した。Steyr AUGのストックと一体化したフォアグリップが、彼らの銃を安定させ、正確な射撃を可能にしていた。
ダダダダダダダダ!
5.56mm弾が、通路の壁に、火花を散らす。カイルは、身を隠したまま、敵の位置を把握しようと試みる。その時、クロエが、通路の反対側から、グロックを構え、兵士たちに接近していた。彼女は、グロックのコンパクトなボディを活かし、素早く移動していく。グロック17は、その軽さと、シンプルな操作性から、接近戦に適した銃だ。
「パンッ!パンッ!パンッ!」
クロエは、兵士たちの背後から、グロックを連射した。最初の二発は、兵士の一人の背中のアーマーに命中し、衝撃で彼をひるませる。三発目は、彼のヘルメットの通信機を狙い、粉々に破壊した。兵士は、突然の攻撃に混乱し、他の兵士たちに、自分の位置を知らせることができなくなった。
カイルは、その隙を見逃さなかった。彼は、壁から飛び出し、兵士たちに、P226を連射する。
プシュ!プシュ!プシュ!
カイルが放った非殺傷弾は、兵士たちの頭部や胸部を狙い、彼らを次々と無力化していく。彼は、一人ずつ、正確に、そして素早く、ターゲットを撃ち抜いていった。兵士たちは、クロエの奇襲と、カイルの正確な射撃に、対応することができなかった。彼らは、次々と倒れていく。通路に響く銃声は、徐々に、収まっていった。
「…カイル、大丈夫?」
クロエが、カイルに声をかけた。彼女の頬には、小さな傷がついており、そこから血が流れていた。彼女は、ブリザードの中で、おとりとなり、敵を牽制し続け、この最終決戦の場までたどり着いたのだ。
「ああ、何とか、な…」
カイルは、そう言って、クロエに頷いた。彼は、彼女の頬の傷を見て、眉をひそめた。
「…無理をするな」
カイルは、そう言って、クロエに、手を差し伸べた。クロエは、その手を取り、カイルに、かすかに微笑んだ。その表情は、以前のような冷たさはなく、そこには、仲間を信じ、支え合う、強い意志が宿っていた。
通路の奥には、タイラントが待つであろう、最後の扉があった。扉は、頑丈な金属でできており、銃弾を弾く。カイルは、扉に手をかけ、力を込める。しかし、扉は、びくともしない。その時、カイルの無線に、ジェットの声が聞こえてきた。
「…カイル!その扉の、左下にある、パネルを、撃ち抜け!」
ジェットの声だった。彼は、ノヴァが送ってきた基地の設計図を見て、その扉の弱点を見つけ出したのだ。カイルは、言われた通り、扉の左下にあるパネルを、SIG P226で撃ち抜いた。彼は、正確に照準を合わせ、たった一発の弾丸で、ターゲットを破壊した。SIG P226のダブルアクション/シングルアクションのトリガーは、一発目の慎重な射撃を可能にし、彼の狙撃を成功させた。
「パン!」
パネルは、火花を散らし、崩れ落ちる。すると、扉は、音を立てて、ゆっくりと開いた。
扉の先には、広大な部屋があった。部屋の中央には、一人の男が、椅子に座っている。その男こそ、組織の元幹部、“タイラント”だった。彼の隣には、いくつかの機械が置かれており、その機械の中には、カイルが探している、組織のデータが入っているであろう、ハードディスクがあった。
「…よく来たな、カウボーイ…」
タイラントは、そう言って、カイルに微笑みかけた。彼の隣には、いくつかの機械が置かれており、その機械の中には、カイルが探している、組織のデータが入っているであろう、ハードディスクがあった。
「…俺は、あんたを、捕まえに来た」
カイルは、そう言って、SIG P226をタイラントに向けた。しかし、タイラントは、カイルの言葉に、わずかに口角を上げた。
「…残念だが、もう、遅い…」
タイラントは、そう言って、手に持ったリモコンのボタンを押した。すると、部屋の奥から、数人の兵士が、姿を現した。彼らは、白い強化スーツを身につけ、Steyr AUGを構えていた。その銃口は、迷いなくカイルに向けられている。
「…くそっ!」
カイルは、舌打ちをした。彼は、このままでは、タイラントを捕らえることはできないと判断し、ある一つの決断を下した。彼は、タイラントの隣にある、ハードディスクを、SIG P226で撃ち抜いた。
「パン!」
ハードディスクは、火花を散らし、壊れた。タイラントは、その光景を見て、顔を歪めた。
「…貴様…!」
「…あんたが、持ってる情報なんて、どうでもいい。俺が欲しいのは、あんたの身柄だ!」
カイルは、そう言って、タイラントに、一歩近づいた。しかし、兵士たちは、一斉に、カイルに、アサルトライフルを向けた。その時、部屋の天井が、激しく揺れた。そして、カイルの無線に、ノヴァの声が聞こえてきた。
「…カイルさん!基地のシステムが、タイラントによって、自爆モードに切り替えられました!このままでは、基地全体が、爆破されます!」
ノヴァの声は、焦っていた。カイルは、タイラントを睨みつけた。タイラントは、ニヤリと笑う。
「…どうする、カウボーイ?俺を捕まえるか?それとも、この基地ごと、爆死するか?」
カイルは、タイラントの言葉に、何も答えない。彼は、P226を構え、静かに、そしてゆっくりと、兵士たちに銃口を向けた。クロエもまた、彼の隣に立ち、グロック17を構える。二人の瞳には、強い意志が宿っていた。彼らは、もう、後戻りはできない。彼らの選択は、ただ一つだった。
彼らは、静かに、そして同時に、引き金を引いた。




