第二十四話:ファントムの告白
ディーヴァのアジトで、カイルとジェットは、死んだはずのファントムと再会した。彼は、全身を漆黒の強化スーツで固め、手に巨大なアサルトライフルを構えていた。その銃は、カイルが以前戦ったものとは異なり、さらに重厚なシルエットを持つ、H&K G36Cだった。G36Cは、ドイツ製の小型アサルトライフルであり、そのコンパクトさと、高い命中精度は、近接戦闘に特化している。その銃口からは、ただならぬ殺気が放たれていた。
「…ファントム…なぜ、ここに…」
カイルが、驚きを隠せないまま、そう呟いた。ファントムは、無言でカイルを見つめている。彼の瞳は、ブラッド・ダンスの影響で、狂気に満ちていた。
「…彼は、私の最高の作品よ。私の『ブラッド・ドッグ』の中でも、最も優れた護衛犬だわ」
ディーヴァは、王座のような椅子に座り、挑発的な笑みを浮かべた。カイルは、ディーヴァの言葉に、ファントムが、ブラッド・ダンスの被験者であるという事実を悟った。彼は、ディーヴァによって、人間性を奪われ、まるで操り人形のように操られているのだ。
「…彼は、生きていたのか…」
ジェットが、静かに呟いた。カイルは、ジェットの顔を見た。彼の瞳には、怒りと、そして深い悲しみが宿っていた。
「…残念だけど、彼はもう、あなたの知っているファントムじゃないわ」
ディーヴァは、そう言って、ファントムに命じた。
「…やれ、私の可愛い護衛犬。あの賞金稼ぎを、八つ裂きにしてやりなさい」
ファントムは、ディーヴァの言葉に、無言でG36Cを構えた。その銃口は、カイルに向けられている。カイルは、P226を構え、非殺傷弾のマガジンを再確認した。彼の心は、揺らいでいなかった。彼は、ファントムを救うという、新たな使命を胸に、戦いに臨んだ。
ファントムは、G36Cから弾丸を放ち始めた。**「ダダダダダッ!」**と、銃声が、部屋全体に響き渡る。5.56mm口径の弾丸が、カイルの頭上をかすめ、壁を砕き、火花を散らす。
カイルは、即座に近くの柱の陰に身を隠した。ジェットもまた、別のタンクの陰に身を隠す。カイルは、P226から非殺傷弾を撃ち込んだ。「プシュッ!」。非殺傷弾は、ファントムの強化スーツに命中するが、彼はびくともしない。
「…無駄だ!非殺傷弾は、彼には効かない!」
ディーヴァが、嘲るように叫んだ。カイルは、冷静に状況を分析した。ファントムは、ブラッド・ダンスの影響で、痛覚が麻痺している。そして、彼の強化スーツは、カイルの非殺傷弾を弾き返してしまう。このままでは、勝ち目はない。
「…ジェット!ノヴァ!援護を頼む!」
カイルは、叫んだ。ジェットは、端末を操作し、ノヴァに指示を出す。
「…ノヴァ、この部屋のシステムをハッキングしろ!何か、ファントムの動きを止める方法はないか!」
「…了解!…待って、ジェット!彼の強化スーツのシステムに、何か、外部から介入できるポイントがあるわ!」
ノヴァの声が、イヤホンを通して届く。その言葉に、カイルは、わずかな希望を見出した。
カイルは、柱の陰から飛び出し、ファントムに接近しようとした。ファントムは、カイルの動きに反応し、G36Cの銃口が火を噴く。カイルは、ジグザグに走りながら、銃弾を避けていく。
「…そこか!」
ファントムは、カイルの動きを予測し、G36Cを連射した。しかし、カイルは、その動きを逆手に取り、ファントムの懐に飛び込んだ。ファントムは、銃を構える間もなく、カイルに組み伏せられた。カイルは、合気道でファントムの体勢を崩し、彼の背後にある、強化スーツのケーブルを狙った。
「…ノヴァ!ここだ!」
カイルは、叫んだ。その言葉に、ノヴァは、即座に反応した。
「…了解!システムに介入するわ!」
ノヴァが、そう言って、キーボードを叩いた。その瞬間、ファントムの強化スーツから、火花が散り、システムが停止した。ファントムは、動きを止め、その場に崩れ落ちた。カイルは、安堵の息を吐き、ファントムの顔を見つめた。彼の瞳から、ブラッド・ダンスの狂気の色が消え、わずかに、人間性が戻っていた。
「…カイル…」
ファントムは、苦しそうに、そう呟いた。
「…ファントム…!」
カイルは、ファントムの言葉に、わずかな希望を見出した。彼は、まだ、完全に人間性を失ったわけではなかった。
カイルは、ファントムを拘束し、ディーヴァに向き直った。ディーヴァは、信じられないという表情で、カイルを見つめている。彼女の計画は、すべて、カイルによって阻止された。
「…なぜ、非殺傷弾で…!」
ディーヴァは、怒りに満ちた声で叫んだ。
「…俺は、お前たちと違って、人間を殺さない」
カイルは、そう言って、P226の銃口をディーヴァに向けた。
「…さあ、ディーヴァ。お前が、何を企んでいるのか、すべて話してもらう」
ディーヴァは、カイルの瞳に、深い絶望の色を見た。彼女は、もはや抵抗することを諦め、静かに、真実を語り始めた。彼女は、組織の幹部の一人であり、組織の資金源を管理していた。彼女の覚せい剤は、組織の資金源であり、そして、組織が、ブラッド・ドッグを量産するための、重要な鍵だった。
「…ブラッド・ドッグは、組織の最終兵器。彼らは、人間性を失い、ただ、命令に従うだけの、完璧な兵士になる…」
ディーヴァは、そう言って、不気味な笑みを浮かべた。その言葉に、カイルとジェットは、背筋が凍るような思いをした。組織は、ブラッド・ドッグを使い、世界を支配しようとしていたのだ。




